令和の販売員心得 黒川想介 (109)デジタル化で営業環境変化 詳細な情報と現場に精通を

中学・高校時代に学んだ中国の王朝の歴史を殷・周・秦・漢・・と声を出して憶えた人は多いのではないかと思う。

史上最古の殷王朝を滅ぼした周は前代の王朝名を「殷」と称していたため歴史上は殷となっていたが「殷」自身は「商」と称していたことが遺跡の発掘でわかっている。だから「商」王朝とも言う。紀元前Ⅱ世紀に周に滅ぼされた殷王朝の官僚達は各地を流浪じて生計を立てた。古代中国の集落は城郭都市であり、そこに定住する人は衣食住を作って生活を営んだ。殷王朝から流れてきた官僚は農地は無く、物づくりの腕もないために持ち物を売りながら各地を流浪した。城郭都市定住者は物売り流浪する人を「商の人」と呼んだ。それが商人の語源と言われている。定住社会のあぶれ者である商の人は各地を流浪せざるを得なかったが結果的に各地の内情をつぶさに見聞きできた。それが商の人の力になった。だから商人は語源が生まれた当初から情報こそが生きる術だということを身を持って知っていた。

殷を滅ぼした周は前5世紀頃、春秋戦国時代に突入。百花繚乱の思想家達が入り乱れ、国々の争いは絶えずに周は末期へ向う。この時代に儒教の祖である孔子が孝行、忠義や礼節などの論理政治規範を唱えて後の世に大きな影響を及ぼしている。その儒教を徳川幕府は国を修めるための大黒柱とした。

孔子は物を作らない商人を軽んじたから徳川幕府も上下の厳しい儒学に基づき、人々の身分を士農工商と定めて、商人を最下層に置いた。幕府としては土地と密接に関係する米を経済の中心に置いたことで最下層の商人からお金(税)を取ることは武士の誇りにかかわることであったために商人からは税を取らなかった。

商人はその好運を巧みに活かして大きな資本を貯め込んだ。幕末・明治維新の争いにその商人の資本が勝敗の鍵になったのは皮肉なものである。幕末と言えば坂本龍馬が国を豊かにするために貿易立国を目指して海援隊を創設し、七つの海に乗り出そうとした。この時代にはまだ輸出できるような生産品は少なかったから貿易立国とは世界中で産出される物の仲介貿易を意味した。つまり貿易立国とは商人立国になって富を稼ぎ、その富でゆくゆくは産業を育成しようとする夢を描いていたのかもしれない。以降、龍馬につづく者達の活躍により商人の地位は向上した。大戦後日本の製造業が大発展するまでは学卒の就職人気のランキングでは総合商社や商事会社が上位を占めていた。その後の高度成長期に入って日本人気質に合った丁寧な物造りは日本を工業製品立国に押し上げた。プラザ合意後円が強くなり輸出競争力が弱くなると、またまた儒教思想が頭をもたげ出し、売買仲介マージを取る商社は不要であるという不要論がまかり通る冬の時代を迎えた。

実際に貿易の売買仲介で稼いでいた総合商社は大幅な利益減を味わった。雌伏10数年で総合商社は復活した。驚異の回復は売上額による評価をやめて利益一本にしたことによる商社の業態変革だった。それによって稼ぎ方を売買仲介中心から事業投資に変更した。事業投資といっても金融機関とは違い商社が持つ情報力等の機能をフルに活かして事業参加である。例えば海外進出の日本企業のサポートをする時、立ち上げ、運営や現地企業との合弁に詳細な情報を活かして参加する。その企業が利益を出せば持ち分等の利益を計上してゆくやり方等である。FA販売店も商社である。デジタル化に伴う様々な営業環境の変化で、今のままなら冬の時代を味わう公算が高い。総合商社のような転身をするならば、詳細な原地情報と同様に顧客の現場に精通していなければならない。そこが商人の原点なのだから。

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