重要性増す防爆機器 熟練者減少と設備の老朽化で危険拡大 開発進むイーサネットAPL対応品 防爆認証取得期間が短縮化

爆発危険領域での安全を確保する防爆関連機器は、熟練技術者の不足や設備の老朽化などもあり重要性を増している。製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化への取り組みが進む中で、産業用イーサネットを活用する動きも加速しているほか、ワイヤレス化やネットワークカメラなどの利用も増えている。

石油化学や鉄鋼、食品・薬品・化粧品などの製造現場での爆発事故は依然多い。設備の老朽化に加え、設備の現状を熟知しているベテラン技術者の不足などもあり、予知保全力の弱体なども指摘されている。最近はこうした管理・保守を外部に委託する工場が増加していることもあり、社員が自社の工場を詳しく把握していないことで、事故が起こることも多くなっている。

 こうした危険領域での爆発火災などを防ぐ防爆関連機器は、制御機器、モーター、照明器具、計測機器など多岐にわたる。コントロールボックス、バリアリレー、プログラマブル表示器、リミットスイッチ、各種センサ、回転灯、バーコードリーダ、グリップスイッチ、避雷器、ソケット、パソコン、ケーブルグランドなどがあげられる。

 また、防爆エリアにおける通信インフラを確保する「防爆ネットワークソリューション」の構築も進んでいる。防爆IP機器には、無線LANアクセスポイント、コントロールボックス、プログラマブル表示器、タッチパネル/モニタ、Webカメラ、コンセント、ブザーなども使用されている。

石油化学や鉄鋼など大掛かりなプラントでなくても、食品・医薬・化粧品の3品分野、半導体製造関連分野や有機溶剤を取り扱う自動車塗装関連分野、衣料クリーニング関連などでも爆発の危険性は高く、本質安全防爆機器の採用が広がっている。

 爆発危険場所は、危険性の度合いおよび防爆電気設備の経済性などを考慮して分類されており、適正な選定が必要だ。

分類内容は、可燃性ガス、蒸気の放出・漏洩の頻度、爆発性雰囲気の存在時間により、次の3つに分類される。

 0種場所=爆発性雰囲気が連続して存在するか、長時間存在する場所。1種場所=爆発性雰囲気が正常状態で存在する場所。2種場所=爆発性雰囲気が正常状態で存在することはないが、そのほかの状態で存在しても短時間しか存在しない場所。

 防爆構造の種類については、「耐圧防爆」「内圧防爆」「油入防爆」「安全増防爆」「本質安全防爆」「粉体充填防爆」「樹脂充填防爆」「特殊防爆」などがある。

 「耐圧防爆構造」は、防爆性能を備えた容器の中に着火源となる電気機器を入れることで、容器内部で爆発が生じても容器の外部に爆発が及ばないようにした構造。内部爆発に十分耐える強度を持ち、容器の接合面の隙間から通じて火炎が外部へ着火しないことが要求される。容器が性能を満たすものであれば、内蔵する電気機器には制約はない。照明器具などの場合は、容器の一部にガラスなどを使用する。

 「内圧防爆構造」は、容器の内部に空気、窒素などの不燃性ガスを加圧して満たし、容器外部の可燃性ガス・蒸気を着火源から隔離する方法。保護ガスの内部圧力に耐えること、保護ガスの漏洩が少ないこと、内圧低下時の保護装置を備えていることが要求される。内蔵する電気機器に制約はないが、保護ガスの供給設備、保護装置が必要で、小型の電気機器には経済的に適していない。

 「油入防爆構造」は、着火源となりうる部分を絶縁油に浸すことで、着火源を可燃性ガス・蒸気から隔離する方法。絶縁油が外部からの塵埃、湿気などにより汚損されないように全閉構造であることが要求される。油を使用していることから、メンテナンスが難しく変圧器などの用途以外はあまり使用されない。

 「安全増防爆構造」は、正常時の運転・動作時は、着火源として作用しない電気機器のみに適用する防爆構造。通常は着火源として作用しない電気機器でも、種々の環境で使用し続けると絶縁不良などで、電気火花などの着火源となりうるので、そうした着火源を生じにくいように安全度を増したものをいう。適用対象となる電気機器には制限がある。

 「本質安全防爆構造」は、計測・制御・通信・警報などの低圧電気機器にのみ適用され、これらの電気回路で発生する電気火花には着火源として作用しないか、あるいはある限度内で作用しないように抑制される。

 「粉体充填防爆構造」は、正常動作時に着火源を有しない電気機器に対し、着火源となりうる部分を石英粉やガラスの粒子などの充填物で完全に覆うことで着火を防止するもの。日本では法規上認められておらず、特殊防爆構造として扱われる。

 「樹脂充填防爆構造」は、着火源となりうる部分を絶縁性のコンパウンドで包み込み、ガス・蒸気と隔離したもの。この防爆構造も日本では法規上認められておらず、特殊防爆構造として扱われる。

 「特殊防爆構造」は、特定の防爆構造によらず、可燃性ガス・蒸気に対して防爆性能を有することが試験などで確認された構造。

 「バリアリレー」は本質安全防爆構造の一種のリレー中継装置。爆発危険箇所にあるリミットスイッチや押しボタンスイッチなどのON/OFF信号を、非危険場所へ中継させる。爆発性ガス雰囲気の中で、汎用のリミットスイッチや押しボタンスイッチが使えるとともに、危険場所に配線する本質安全回路の断線・短絡・地絡や、非本質安全防爆回路のトラブルの波及など、あらゆるトラブルが生じても安全性を確保する。光電スイッチやブザー、ランプが使えるバリアもある。

こうした中で産業用イーサネット技術を使った防爆制御ソリュ―ションが提案されている。PA(プロセスオートメーション)領域での産業用イーサネットの活用は、爆破の可能性がある危険領域への考慮、屋外など広大のエリアでの使用によるケーブルの長さへの対応などが求められる。産業用イーサネットにつなぐ本質安全防爆に対応したフィールド機器を「Zoon 0」の特別危険領域設置するために必要な物理層として、新たに「イーサネットAPL(Advanced Physical Layer)」の実用化が進んでいる。イーサネットAPLは、IEEE 802・3cg 10SPEに準拠した全2重、2線式伝送で、1㌔㍍の長さのイーサネット用の物理層についての標準化し、フィールド機器の本質安全防爆を低消費電力で実現している。すでに、FieldComm Group、プロフィバス・プロフィネットインターナショナル、ODVA(EtherNet/IP)、OPCファンデーションなどが参画し推進している。

一方、防爆構造の電気機械器具を日本国内で使用する場合には、日本で再度防爆認定を受ける必要がある。この認定は従来、産業安全技術協会(TIIS)が国内唯一の登録検定機関として業務を行っていたが、2015年6月の制度変更で、海外の機関でも登録業務が可能になった。すでに海外からは、イギリス・CML、カナダ・CSA UK、オランダ・DEKRAの3社が外国登録型式検定機関として業務を開始している。

防爆構造の機器需要が増加傾向の中で、従来は型式認定を受けるまでの期間が長いことで申請者からの不満が多かったが、型式認定にかかる時間が大幅に短縮されて、販売機会を逃さない製品の市場投入が可能になるとして、申請者からは好評だ。費用負担の軽減にもつながるとして期待する声も高まっている。

最近はタブレッド端末やデジタルカメラ、スマートフォンなどといったデジタル機器が増えてきているが、これらを爆発危険領域で使用するためには防爆に対応していることが求められるが、実際は疎かにされていることも多い。安全に精通したベテランが減少しつつあるなかで、防爆対策機器の果たす役割はますます高まっている。

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