令和の販売員心得 黒川想介 (97)

機器部品の販売員は顧客を訪問する時に主としてどんな営業活動をしているのか。その内容をおおまかに聞いてみると販売員からすぐ出てくる回答は見積提出打合せ、納期打合せ、進行している件名の状況確認、商品の紹介、案件の相談や打合せである。少し間を置いて案件さぐりや課題解決営業がある。課題解決といっても様々である。これこれの商品はないかという商品探しのレベルから、こんな事はできないかという省力化等のレベルまであるようだ。中堅の販売員になると顧客の状況を把握して置くために現場関係の人事や予算や設備関連の情報などを定期的に入手すると言う。この他にもこまごました顧客サービスはあるようだ。こうして見ると販売員からすぐに出てくる営業活動の大半や商品探しのような簡単な課題解決営業は何もわざわざ訪問するまでもない活動である。現在でもそれらの活動はメールや電話で済んでいるが時間に余裕ができるか、あるいは様子伺うための口実としてわざわざ訪問しているようだ。今後、DX時代が進んでくれば顧客側の様々なシステムは変わり、リモートで済む事に対しては販売員のわざわざの訪問を基本的に受けつけなくなることが多くなるだろう。さすれば現在わりと気軽にアポイントを取って訪問している仕事の内容では今後のアポ取りには狭き門になる。それでも営業にとって訪問活動の重要性は変わらない。営業には受注決定前と受注後の活動がある。効率重視となれば受注後や一部の受注前の活動は全てリモートになる。然すれば売上に対する販売員の人数は少なくていいことになる。かつて資材課の人数は購入額に対して何名必要と計算された。それがパソコン等のデジタル機器を用いたソフトが発達した結果、資材課の人数は極端に少なくても済むようになった。それと同様のことが営業にも起ることになる。現在販売員一人当りの売上額のうち極端に言えば販売員とはほぼ関係なく、かってに飛び込んでくる売上が大半である。つまりそれまでの努力によって販売店が信頼を築いてきたマーケットからの受注である。受注後の処理や対応が訪問営業からリモート営業に変ったら営業経験者や商品知識のある数名をバックヤードに布陣させておけばいいことになる。受注前の販売員の仕事には、案件の相談打合せや課題の解決がある。これらの相談や打合せも顧客の要請で動く活動であるから、これらもDX時代になればリモート営業に変る。リモート営業は移動時間の短縮になり、少なくともその短縮された時間に相当する分の販売員数は少なくなる。したがって現在の販売員の訪問営業の内容ではリモート時代が本格化すれば半減することになる。かつて営業は訪問して幾らだと言われた。つまり顧客を訪問しなければ売上は上らないという意味である。DX時代には当てはまらない言葉であろうか。その様なことはない。この言葉は生きている。リモートでできる営業の特色は販売員員対顧客ではなく、販売店対顧客の色合いが強い。なぜなら販売店が信頼されているマーケットの範囲内で販売が営業活動を実施しているからである。販売員の役割はこれまでのマーケットへの信用維持することだったが販売員の本来の役割である攻めの営業、つまり販売店が信頼されているマーケットという枠を飛び越えて売上を上げる営業はリモート営業ではむずかしい。ここは対面する訪問営業までなければならない。訪問して幾らなのである。大半の販売員がやっている営業ではアポイントは取れない。せめて現在の販売員がやっているコンサルタント型営業ではなく、カウンセラー型の営業の育成を目指す必要がある。

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