令和の販売員心得 黒川想介 (39)

「便利」で生まれた余分な時間
目標持つ活動に挑戦し成長を

歩きスマホは危険だから止めようという呼びかけにも関わらず、歩道や駅のホームで歩きスマホをしている人は多い。電車の中で座っている人の大半はスマホに夢中だ。スマホを常に見ていないと不安になる人はスマホ病と言うらしい。
 
脱工業化社会とかポストインダストリーというタイトルの本が書店で平積みされていたのは、遠い昔話になった。脱工業化と盛んに言われ始めた頃に、それまで戦後社会と言っていた社会を工業化社会と名付けた。工業化社会に生きていた人々は、物が豊富になったという実感を持っていた。その実感も脱工業化と盛んに言われ始めた頃には、物の豊かさはことさら意識されなくなっていた。
 
それに代わって情報の量が多くなったと感じて、情報の氾濫という表現がよく使われるようになった。その頃からポストインダストリー社会は、情報化の社会に入り始めた。今では情報の氾濫という表現は古びたものになり、膨大な情報が飛び交う社会である。その膨大な情報をスマートに使う時代の中にいる。スマホはその申し子のような存在に進化し続けている。

 
 
工業化社会を経験してきた人は、つくづく便利な世の中になったと感じている。現在活躍している若手販売員の活動現場は、取り扱う商品の種類は多いし、取引している顧客口座数も少なくない。その顧客から毎日、商品に関する問い合わせや取引に付随する用件がひっきりなしに入ってくる。調べる必要のあるものはネットで検索し、複雑に絡む緊急な用件も、携帯電話やメールを使って素早く対応している。
 
工業化社会に活躍していた販売員から見たら、ものすごく便利な社会になったと感じる。若手販売員に「パソコン、スマホがあるから営業活動はずいぶん楽になったね」と声をかけると、「普通です、それほど便利と感じてはいません」と返ってくる。便利さの意識はない。
 
実は便利になるということは、便利になった余分の時間ができるということなのだ。その余分な時間で付加価値を上げることができる。だから販売店では、販売員が動きやすくなって営業効果を上げられるように、物流関係や情報機器に多くのお金をかけている。その投資によって便利になった分、販売員一人当たりの付加価値は上がっていかなければならない。

 
 
もし上がっていかないようなら、捻出した余分の時間を無駄に使っていることになる。結構なお金がかかっているので、その余分の時間を無駄に使ってしまえば、経営上、何かを削減しなければならない羽目になる。もし販売員の人数や給与に関わることにでもなれば、持続的成長は無くなってしまう。
 
ところで「無駄に時間を使う」というのは、言い換えれば「楽に時間を使う」ということができる。
 
例えば、電化製品が家庭に入りだした高度成長時代、主婦や主夫がその使い方に慣れた頃、便利になって余った時間をテレビの前で寝そべって過ごした時間のようなことである。販売員の1日を見ると楽をしているようには見えないが、忙しさに紛れて1日の時間が自然に埋まってしまっているようだ。

 
 
そのような時間の過ごし方は実は楽なのだ。本来、便利になってできた余分の時間の使い方はチャレンジの分野である。だから若手販売員にはチャレンジ目標を持つ活動を考えてもらえばいい。
 
便利なネット社会は、あまり考えなくてもいい環境になっている。だから考えることが不得手な販売員が増えているという。そこで顧客の現場と直接接している販売員には、指示や依頼で行動するだけでなく、次の一手を考えてもらうことが販売員の成長を助けることになるのだ。

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