令和の販売員心得 黒川想介 (35)

2020年11月25日

コミュニケーションを武器に
相互の感情で得る情報探索力

寡兵をもって大軍を破った例は数々ある。クラウゼヴィッツの『戦争論』では、敵より兵が少数である場合は「敵の重心を攻めよ」と言う。重心とは作戦本部のような所である。桶狭間の戦いのように、織田信長が今川義元の本陣を少数の兵力で攻めて勝利した例である。

孫子兵法では、大軍の敵を分散させて、少ない兵力で戦わざるを得ない寡戦から、同等の兵で戦う対戦へ持っていく。そして自軍の方が多くなる衆戦という戦場をつくり出す事と記されている。源義経は奇襲戦法で平家の大軍を破り、海に強い平家に、海戦においても奇襲戦法で勝利した。

クラウゼヴィッツの言う敵の重心を見つけ出すのも、孫子の兵法が言う敵を分散させて自軍の兵が多くなる戦場をつくる事も、義経のやった奇襲を考案するのも、敵をよく見て的確な情報をつかまなければ成せない事である。

つまり戦は、通常でいけば人数や装備する武器の多い方が勝つものだが、情報格差や情報探索のうまさがあれば、状況に応じた戦術を取り入れて勝ち戦ができるという事を先人たちは教えている。

 

営業の世界でも情報の重要性は当然分かっているはずだ。だから日常の会話の中で情報という言葉は頻繁に使われる。商品情報、情報交換会議、あるいは販売員が外出する時のセリフに「情報取りに行ってきます」などの類いのように、特に中小販売店にとって、情報は命綱といえるものだ。

しかし情報を軽く考えている。というのも、一般的に情報と言えば売り上げに直結するテーマ情報を指しているからだ。情報とは何なのかをもっと深く考えなければならない。

情報を英語でインフォメーションと言う。これと響きが似ている言葉にコミュニケーションがある。インフォメーションは、一方的に伝達して判断は相手に任せる。また一方的にひそかに入手することができる。

 

コミュニケーションは、一方的ではなく双方向性である。だから相手が自分をどのように理解しているかでコミュニケーションが成り立つ。このようにインフォメーションとコミュニケーションは違うものである。しかしこの両者は相互に依存し合って相乗効果を発揮する。

機器部品の販売員は久しく、商品情報の提供による商談情報の入手という営業活動を行ってきた。それがうまく行っていたために、それほどコミュニケーションに依存する事なく成果を得てきた。

しかしその一方で、新規見込み客開拓活動において、商品情報提供ではあまりうまくいかない事を経験してきた。それでも何か良い商品はないかと探し続けている。実戦では、人数や武器の優秀な方が勝つという原則がある。

 

この原則通りに、営業でも万能薬的新商品があれば新規見込み客開拓も楽であろうが、販売員が嘆くようにそのような商品はいくつも見つかるものではない。そこで先人たちが教えているように、戦うための武器に頼る事でなく、その武器が通用するような相手情報の探索をしなければならない。そこで、情報探索力の育成が課題となる。

情報探索力となると、インフォメーションの領域というよりはコミュニケーションの領域である。情報とは人の感情を入れない事実の事であるが、コミュニケーションは相互の感情が入る。

人は理詰めより感情で動きやすいから、コミュニケーションのうまさで情報入手ができる。発信された情報には正誤が混ざっているから、優れたコミュニケーション力でその真相を見抜く事ができる。だから新しい見込み客がなぜ無関心を装ったり、ノーと言ったりするのか、その理由をつかめる。理由がわかれば陣の立て直しができるというものだ。コミュニケーションは販売員の最も強力な武器なのだ。