令和の販売員心得 黒川想介 (33)

2020年10月21日

現場技術者の期待に応えて
にじみ出し市場を捕捉せよ

販売員にとってコミュニケーション力はとても大事である。特に、従来の成熟市場からにじみ出してくる市場の見込み客と関係を構築していくためには、コミュニケーションなしでは成功しない。にじみ出しの市場は、令和時代の経過とともにますます盛況になっていく。

したがって、新たな見込み客はにじみ出し市場の中で増えていく。だからにじみ出し市場の見込み客を、令和の見込み客と位置付けて積極的に開拓していかなければ後れを取ってしまう。にじみ出し市場は従来の市場と接点を持っているが、違った市場である。だから従来市場での新規開拓とは違ったアプローチにしなければならない。

では令和の見込み客を開拓する際に、販売員はどのように接していけば良いのか。まず第一に忘れてはならないことは、主導権を持っているのは令和の見込み客であることだ。「そのようなことは当然分かっている」と販売員は言うだろう。

 

しかし従来やってきた見込み客開拓では、名刺交換および多少のあいさつ言葉の後に商品の良さや低コスト性などを強くアピールしてきた。従来市場の見込み客は日常会っている販売員をよく見ているから、何をしに来たのかをよく知っている。

だから販売員は、当初から主導権を取って積極的にアピールしても許されたのだ。しかし令和の見込み客は従来の顧客とは接点を持っているが、赤の他人同様と思った方がいい。その赤の他人と接触するのに、多少のあいさつの後でいきなり得意としている扱い商品をアピールされても、赤の他人は困る。だから攻めていくのは販売員でも、当初の主導権は令和の見込み客にあることを忘れてはならないのである。

そこで、令和の見込み客の立場になってみると、販売員はビジネス関係で会いに来たと思う以外は、一体何をしに来たのかはわからない。そこにいきなり商品アピールを仕掛けられれば「やっぱり」と思う。そして聞いておく程度か、悪くすれば「関係ない」という断りを即刻入れるだろう。

 

一般的に赤の他人同士が仲良くなっていくには、コミュニケーションを媒体として少しずつお互いの理解を深めていくのが常套である。販売員と見込み客というビジネス上の関係でも同様であって、それが新規の見込み客に接近していく営業の基本動作である。

しかし従来の市場では慣れた間柄であるから、販売員と新規見込み客の間でも基本動作を省くことには何の違和感もなくやってきた。そこで経験の浅い販売員に尋ねてみた。「名刺交換し、扱い商品に関して話した後に相手からこれといった話がなかったらどうするのか」と。少し考えてから、「どうすればいいんですか」と逆に質問された。

成熟した市場で長いこと営業してきたため、基本動作のことはいつしか忘れ去られているのだ。これでは成熟市場からにじみ出してくる新たな令和の見込み客の開拓はできない。まず主導権を持っている令和の見込み客は「会いに来た販売員に一体何を期待するのか」ということを考えておかなければコミュニケーションを仕掛けられない。

 

実は販売員に期待することは、従来の見込み客もにじみ出し市場の見込み客もそれほど変わらない。ただこれまでそのことを意識して営業をしてこなかったために、その方のスキルが育成されなかっただけである。

現場の技術者が販売員に期待していることは、例えば、㈰他の業者のことや他の現場のことを聞きたい㈪ニッチであっても面白い商材があれば聞きたい㈫新しい事例情報が聞きたい㈬仕事に関して話せる販売員だったらいい。市場が変わっても見込み客はいい仕事をするために販売員に期待することは同じだ。その期待にうまく乗ってコミュニケーションを進めることがにじみ出し市場を捕捉することなのだ。