令和の販売員心得 黒川想介 (26)

2020年7月8日

気持ちを落ち着かせて第一声
人間性を見せる短時間で勝負

人間社会は太古の昔から、変化を続けて歴史を作ってきた。社会の変化にはモノが伴う。モノそのものやモノの造り方も変化してきた。変化すれば新しい需要は生まれる。機器部品の営業は、モノやモノ造りに関係あるマーケットが戦場である。その戦場で活動している経験の浅い販売員に聞いてみた。

「君たちはどのような営業をしたいのか。いろいろあると思うが、特に重要だと思っている営業活動とは一体何だと思うか」のように問いかけてみると、10人中8、9人は顧客満足に関することである。例えば、顧客の課題解決がしたい、かゆいところに手が届く営業がしたい、商品PRして商談を引き出す営業、のようなことである。新規の見込み客を開拓して、顧客を増やしていく営業、と答える販売員は一人も出てこない。

日頃会っている顧客の人たちが、社会や生産の変化に応じて変わっていくなら、そのような顧客満足営業を強化するだけでいいが、そのような単純なことばかりではない。時代の変わり目には新しい変化が起こる。新しい変化による新需要を形成するのは新しい組織であるし、新しい企業が増えてくる。機器部品販売員にとっては、従来通りにはいかない薄い関係の組織や企業である。

 

元来、営業は人にものを売る行為である。平成ではモノに焦点を当てて営業のスキルを磨いた。新しい商品が発売される度に苦労してマスターし、顧客に提供してきた。そのため「人に」売るという焦点がぼやけてしまった。しかし令和という時代は、平成の延長として捉えられない局面が出てくる。新しい需要に邁進するには、新しい組織や新しい企業の人に会わなければならない。だから売るモノよりも買う人に焦点を当てる営業活動が重要になる。

前回までに、令和時代に合った名刺交換のあり方を述べてきた。交換の終わった後、着席してからの第一声も初回訪問の基本動作に準じて実践し、慣れていかなければならない。第一声は今回の訪問に至った経緯を話し、自分の気持ちを落ち着かせることである。

 

例1「いつもお世話になっている製造技術のAさんから、CSRを担当している方の紹介を頂き、伺いました」。例2「私どもと関係あるお仕事だと思ってアポイントを依頼したところ、快く応じていただきありがとうございました」などの経緯を話す。そしてその後に簡単な自己アピールと簡単なヒアリングをする。あくまでも会社や商材のアピールではないこと。

例1「営業は人に会う仕事なのですが、何年たっても初めての方には緊張してしまいます。技術は日進月歩なので大変なお仕事だと思いますが、現在はどのようなことをされているのですか」。例2「営業を○年やってきましたが、最近の現場は情報系が入ってどんどん変わってきているようなので、一生懸命ついていこうと思っています。現在はどのようなお仕事をされていますか」などのような表現である。

そして多少のやり取りの後に、本日の訪問の目的を告げる。ここからが本題に入る。

 

例1「本日お伺いしましたのは、最近商品カタログは氾濫していますから技術の方はあまり関心を示されません。サンプルなら触れてもらえると思いまして、サンプルを持って各社を訪問しています」。例2「現場では人の作業の効率化が進んでいると聞いていましたので、このカタログを持って伺いました」。例3「令和には一段と現場のIoT化が進むのではと思い、情報等の活用事例を紹介しに参りました」などのことであるが、それに合わせた準備をすることだ。

わずか数分で面談は終わっても、来月また5分位時間をもらいたい旨を告げて終わる。初回は人間性を見せる場である。長居すればボロが出る。短時間で勝負するのがコツだ。