基礎から学ぶ中国工場管理〜実例で学ぶ管理のポイント〜 (44)

2020年5月27日

設備管理-中国人が苦手な予防保全③

「故障させない」重要性の周知を

前回と今回で、中国人が不得手としている設備管理に関する事例を紹介していますので、参考にしていただけたらと思います。

 

②メンテナンス、予防保全

中国人は予防保全の考え方をあまり持っていません。設備が故障すれば対処(修理)しないと生産ができないので対処(修理)します。しかし、故障していない設備に何らかの対処をする、費用をかけることはしません。

予防保全は、故障させないための管理です。この予防という考え方の重要性を理解できている中国人は多くありませんし、苦手な分野と言えます。

 

(1)日常点検・定期点検での出来事

ある日系中国工場で工場の管理状況を調査したときのことです。設備の日常点検記録から点検は実施されているようでした。念のため作業者に点検表を渡して、具体的にどこをどのように点検するのかの説明を求めました。

するとある項目のところで、「これについてはわからない」という回答がありました。どういうことなのかと聞いてみると、「この項目の点検はやっていない」とのことでした。やっていないが記録ではやったことにしていたのです。

これにはまだ続きがありました。どうなっているのかと組長や科長に問いただすと、「実は、この点検項目は作業者ではできない内容になっている。技術部の人間でないとできない。だから作業者がやっていないのは仕方ないことだ」との説明がありました。それでは、どうして記録はやったことにしているのかと聞くと、「ISOの監査で見つかるとまずいのでそうしていた」との回答がありました。

この工場では点検表を作成するのは、技術部の仕事でした。現場の責任者が技術部に連絡して、この項目は技術部が点検するようにしてもらうか、点検のやり方を教えてもらうかすれば解決できた問題です。記録を偽装しなければならないようなことではありません。

これを他人事として済ませてはいけません。これは日系工場であった出来事なのです。

 

(2)予防保全の体制を取った事例

ある日系工場では、工程の作業にある生産設備を約100台使っていました。費用の関係で日本製ではなく中国製の設備を使用していました。

ぱっと工程を見た感じでは問題なく作業が行われているようでしたが、時折組長が設備の調整をしているようなので聞いてみると、設備の調子がよくないものが出たときは、組長が調整をする。組長の手に負えない場合は技術部が調整を行うが、それでもダメなときはメーカーに来てもらうとのことでした。調整を行う技術部のスタッフにしても、この設備の専門家ではなく、見よう見まねで調整をやっているにすぎませんでした。

この調整に気を付けて工程を見ていくと、常に組長の誰かが調整をしていることに気が付きました。気になったので、組長達を集めて設備の調整にどのくらい時間が取られているかを聞いてみました。すると驚いたことに、組長業務の20〜30%をこれに取られていることがわかりました。

組長には、担当工程で出来上がったものの品質確認という大事な仕事があるのですが、設備の調整業務に時間を取られているため、不十分になっていました。

 

工場の中国人責任者に相談をしたところ、設備メーカーに依頼すれば、定期的にメンテナンスに来てくれるサービスがあることがわかりましたので、これを利用することにしました。

毎週一回来てもらい、生産していない昼休み時間にメンテナンスしてもらいます。1回で10台くらい見ることができました。ですから、全部で10回、約3カ月で全100台のメンテナンスが出来ることになります。全台終わったらまた最初からやってもらうので、各設備3カ月に1度メーカーのメンテナンスが入ることになります。

その後、組長に聞くと設備の調整をする回数と時間が大幅に減ったことが確認できました。機械の不調による生産ストップが減ったことで生産性も向上しました。また、本来の業務である品質確認の時間を確保することができるようになり、作業指導も今まで以上に行えるようになり品質もよくなりました。

メーカーの巡回メンテナンスには費用がかかりますが、その費用以上の効果が得られました。

生産効率を高めるためには、設備の予防保全に取り組むことの必要性を中国人スタッフにしっかり説明して理解させることが重要です。

 

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◆根本 隆吉
KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント。電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導および品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走。著書に「こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善〈虎の巻〉」(日刊工業新聞社)など。