製造業・世界と戦う担い手づくり エキスパート待望 (39)

2020年4月15日

若手技術者に受けさせた研修が実務に生かされていない

マネジメントの解釈力がキー

 

今日のワンポイントは、「若手技術者に受けさせた研修が実務に生かされていない」という時には、「若手技術者が研修で何を学んできたのかをヒアリングし、それを実務として落とし込める物はないか」ということをマネジメントが検討してください。

今年入社した新人技術者、入社数年経過した若手技術者等、フェーズに応じた研修を受けさせる、というのが大手企業だけでなく、中小企業でも一般的になりつつあります。企業側としてはベーススキルを身に付けさせるという観点で重要と感じていることに加え、規模の大きい企業や複数の事業部を抱える企業では社内交流、外部研修を受けさせる場合は社外交流という、「人脈形成の機会」と捉えてそのような機会を提供するケースが多いです。人脈形成は、対人関係が苦手な場合が総合職に比べて多い技術職の人材にとっては極めて重要です。 

しかし、企業としてはお金と時間をかけて研修を受けさせた以上、それを何かしらの形で実業務に活用してほしいと考えるはずです。多くの場合、それは難しいのではないでしょうか。もしかすると、そもそもそのようなことを期待していないのかもしれません。

 

世の中の人材育成関連の研修のほぼすべては、技術職、総合職に関わらず同じ内容です。そのため、良くも悪くもジェネラリスト向けの内容となります。では、技術者向けに落とし込めないか、というとそういうわけではありません。一般的な人材研修の内容を技術者に落とし込むためには、「若手技術者が研修で何を学んできたのかをヒアリングし、それを実務として落とし込める物はないか」ということを、マネジメントサイドとして考えるが最良のアプローチです。

実は、一般的な研修を活用するにはマネジメントのアクションが最重要なのです。ここに早く気が付けるか否かがポイントとなります。

例えば研修においてチーム分けされ、その中で議論をして結論を導き出す、というよくあるチーム連携に関する研修を受けたとして、どのように落とし込むのか考えてみます。

 

マネジメントが研修を受けた技術者に伝えるべきことは、研修におけるチーム編成と実際のチーム編成が違うということ、そしてその中におけるその技術者の役割です。実際のチームでは人数がより多い、または少ない、さらに社歴の違う人間との複合チームとなります。その中で積極的に議論し、結論を導き出すという研修をそのまま適用するのは難しいのです。

次に伝えるのは自社のチームでその技術者に必要とされている役割の枠組みにおいて、「研修で学んできたことは、自社のチーム内ではこのような行動をしてもらえると良いと思う」と伝えます。

その行動に対し、研修で学んだことと対比しながら、「研修で学んだ中に、話を整理するということがあったようだ。例えばそこで学んだことを自社のチームにてやってもらいたいこととして、議論がある程度進んだ時に、議論の内容を箇条書きに整理し、それを議事録にしてもらえると助かる」といったことを伝えると良いでしょう。

 

そしてもう一つマネジメントが研修を受けた技術者に伝えるべきことは、「自社のチーム内議論で必要なのは技術的な基礎理論に基づくということである」ということでしょう。

技術的議論において一般的な議論と大きく異なるのは、「議論の基本には必ず普遍の技術的理論が存在する」ということです。この技術的共通言語を無視して話を前に進めるのは避けなくてはいけません。このような議論は一般的な研修ではまず出てこないでしょうから、ここはマネジメントとしてきちんと技術者に理解させなくてはいけません。

その上で、「基本となる技術をきちんと理解し、そこからずれた議論があった場合は遠慮なく発言しなさい」といったことを伝えられれば、技術者の受けた研修はその場だけでなく、実務でも役に立つものとなるでしょう。

研修を技術者のための実務スキルとして落とし込むには、マネジメントの解釈力がキーになります。研修という形で投資した時間とお金を無駄にしないためにも、マネジメントが積極的にかかわるということを実践してみてください。

 

◆吉田州一郎(よしだしゅういちろう)
FRP Consultant 株式会社 代表取締役社長、福井大学非常勤講師。FRP(繊維強化プラスチック)を用いた製品の技術的課題解決、該関連業界への参入を検討、ならびに該業界での事業拡大を検討する企業をサポートする技術コンサルティング企業代表。現在も国内外の研究開発最前線で先導、指示するなど、評論家ではない実践力を重視。複数の海外ジャーナルにFull paperを掲載させた高い専門性に裏付けられた技術サポートには定評がある。