製造業・世界と戦う担い手づくり エキスパート待望 (38)

2020年4月8日

若手技術者から想定した時間軸でアウトプットが出てこない

計画を立案、修正させ承認する

 

「若手技術者から想定した時間軸でアウトプットが出てこない」という時には、「実験や評価計画の立案をさせ、必要に応じた修正をさせた後、承認する」という業務をルーチンにしてください。

「〇月〇日までに、この技術評価を進め、結果を報告してほしい。」ごく一般的な若手技術者に対する業務指示の一例です。時間軸も指示の中に入っており、何をやるべきなのか、というゴール(今回でいうと結果を報告する)も示されています。もちろん、マネジメントサイドからの指示事項に不足がある場合、そこの改善は必須ですが、上記のレベルの要素が含まれていれば指示事項としては妥当です。欲を言えば口頭だけでなく、活字を基本に指示ができればより良いでしょう。

マネジメントとしては指示をした。後は、アウトプットを待ちながら、他の管理業務などに奔走するでしょう。適宜進捗を確認しますが、「進めています」の一言。そして、納期近くになってから「すいません、まだ終わっていないので、あと1週間ください」との話。様子がおかしいと思いいろいろと話を聞いてみたところ、全く計画性がなく、進め方の手順もむちゃくちゃだった。詳細はいろいろありますが、概要でいうと上記な状況の発生には枚挙に暇がありません。

 

マネジメントは指示をした段階で、「進め方の計画表」「欲しいアウトプット」という2点のイメージが出来上がっています。指示する側は当然ながらほしいものと、それをどのような手順でやればいいかはわかっているのです。しかし、マネジメントと実際に指示を受けた若手技術者は別の人間。違う人間であるマネジメントの頭の中まで理解できるのは、透視のできる特殊能力者を除き不可能でしょう。マネジメントはそもそも自分のイメージはなかなか相手に伝わらない、ということを理解することが第一歩です。

その中で特に注意しなくてはいけないのが、「時間軸とそのステップ」です。つまり具体的な計画です。いつまでが納期、というのは明確ですが、そこに行くまでにどのようなステップを、どの順番で踏んでいくのか、という計画の詳細を若手技術者に理解させるのが最重要です。

これを一つ一つ指示するのも一案ですが、技術者人材育成において、「自ら考えるという自主性」を鍛錬するためには手取り足取り教えるわけにはいきません。受け身になってしまうからです。そのため、「実験や評価計画の立案をさせ、必要に応じた修正をさせた後、承認する」という工程が必要なのです。

 

まずは若手技術者に立案させる、つまり考えさせることが重要です。その上で、「ここはこうした方が良い」という助言や指摘をしながら、考えさせます。これを何回か繰り返した後、マネジメントからみて問題なければ、承認すればいいのです。

本業務をルーチンにすれば、自らが主体的に計画を作成するので、「若手技術者は自らが進むべきステップとその時間軸」を理解でき、業務推進中の迷いが圧倒的に減ります。同時にマネジメントも若手技術者が現在どこにいる計画なのか、ということを理解しているので、進捗確認をしたときに計画とのずれが生じているのか否か、また生じているとするとどの程度なのか、といったことを把握できるようになります。

業務指示を行う際に、「実験や評価計画の立案をさせ、必要に応じた修正をさせた後、承認する」という業務をルーチンにすることで、若手技術者から想定した時間軸でアウトプットが出てこない、という状態を打破することを目指してください。

 

◆吉田州一郎(よしだしゅういちろう)
FRP Consultant 株式会社 代表取締役社長、福井大学非常勤講師。FRP(繊維強化プラスチック)を用いた製品の技術的課題解決、該関連業界への参入を検討、ならびに該業界での事業拡大を検討する企業をサポートする技術コンサルティング企業代表。現在も国内外の研究開発最前線で先導、指示するなど、評論家ではない実践力を重視。複数の海外ジャーナルにFull paperを掲載させた高い専門性に裏付けられた技術サポートには定評がある。