ディーラーヘルプを考える 黒川想介 (56)

MAの考え方を参考に
独自の見込客創出、育成を

現在、制御系の部品やFA機器を販売している関係者の間では「オートメーション」という言葉はあまり聞かれなくなった。この業界の草創期には製造業で購入していた資材は、動力周辺の資材や受配電系の電設資材が主なものであった。その資材に混じって制御系の部品があって、電設資材とは区別されて「オートメーションパーツ」、通称「オートメパーツ」と呼ばれた。

オートメパーツは製造業の発展、業務用製品の増加によって種類は増えていった。半導体や電子部品の品質向上、制御技術の急速な進歩によって、モジュール化された制御商品が多数生まれた。それらの商品は制御コンポーネント、通称「制御コンポ」と呼ばれ、品ぞろえが充実してくるとオートメパーツという用語はいつしか使われなくなっていた。

現在ではそれらの用語に代わって部品系は電子部品とか機構部品と言われ、制御コンポ系は通称「FA機器」と言われるようになっている。現在オートメパーツという言葉は死語になっているし、オートメーションという言葉も、この業界の営業マンの間ではほとんど使われなくなっている。

 

その代わりに他の業務でオートメーションという言葉が使われている。従来人手をかけて繰り返し行っていた定番の業務や、複雑になった大量の業務処理を自動化し、コスト削減や時間短縮をすることをオートメーションと言うようになっている。

その中でもマーケティング用語として、企画等のマーケティング部門で盛んに使われている。ファクトリーオートメーションを「FA」と言っているように、マーケティングオートメーションを通称「MA」と言う。

マーケティングオートメーションとは、マーケティング部門が商談になりそうな見込み客のリストを営業部門に渡すシステムである。ウェブサイトや他のメディアを使って販売する一般消費材のマーケットでは、マーケティングオートメーションを本格的に導入している。

 

マーケティングオートメーションは具体的には4部から成り立っている。①見込客創出②見込客育成③見込客分類④見込客管理である。

一般消費者向け商品は対象となる見込客数が膨大に上るため、MAは有効な手法である。見込客創出のためにウェブサイトへのアクセスや各種イベントの参加者、各種の名刺交換などのあるゆるデータを用いる。その見込客を育成していくためにコンテンツを充実し、配信、各種資料送付を繰り返す。そして配信の結果やアンケート状況、閲覧履歴を検証して見込客を分類する。

購入確度の高い見込客のリストを営業に渡し、分類された個人情報のデータは使いやすいようにデータベース化して管理するというシステムがマーケティングオートメーションなのだ。

 

このMAは不特定多数の見込客を対象としているが、FA機器や部品の業界では見込客はある程度特定されているし、一般消費者ほど膨大な数ではない。そのため、それ程有効ではないと高をくくっていていいものかどうかは一考の余地がある。

昨今では販売店がある程度、見えている市場の新たな見込客を開拓しようとしても、アポイント取りがネックになって思うようにいかない。だからどうしても現状の顧客からの受注拡大を狙って、熾烈な競合切り替え、システム一括受注、商材の追加策に向かってしまう。

しかしこれまでの社会は成長してきたし、成長は変化を伴い新しい市場をつくってきた。だから、新見込客や新市場を開拓することが今後の販売店の成長につながることは間違いない。MAの考え方を参考にして、販売店独自の見込客創出、育成を考えてもいいのではないか。

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