情報化、インフラ投資が後押し ボックス・ラック市場 堅調に拡大 

2018年8月22日

エッジコンピュータ、AIも好材料

ボックス・キャビネット・ラックなどの筐体需要は、情報化投資やインフラ投資の堅調拡大を背景に安定した市場を形成している。特に情報化社会の進展に伴うデータセンター建設や5Gなどの次世代通信網構築に向けた投資が大きく進展しており、しばらく繁忙状態が見込まれている。IoT化への対応やエッジコンピュータとAIを活用した新しいラック開発なども志向されており、今後の動向が注目される。

東京五輪、5G構築にも期待

ボックス・キャビネット・ラックは、電気・電子機器の収納を目的とし、屋内や屋外において、外部の環境から内部機器を保護するとともに、内部機器への直接接触に対する保護を行っている。エンクロージャー、筐体など、さまざまな呼び方をされることもある。

特にプラスチック製のプラボックスは、金属製キャビネット・ボックスと違い、電波透過性に優れているため、ブロードバンド用通信機器・無線LANアクセスポイントや、再生可能エネルギー発電設備、商業施設などを防犯・監視する監視カメラシステムなどの収納が可能で需要が増えている。

ラックの中でもシステムラックは、情報通信機器、FA制御機器、計測機器などの収納に使用するキャビネットで、ネットワークインフラ、サーバールーム、データセンター、工場などで使用されている。JIS規格やEIA規格に準じた19インチラックなどがある。

 

こうしたボックス・キャビネット・ラック重要は、情報化社会に対応した社会インフラの整備、大都市を中心とした再開発、老朽化した工場・ビルのリニューアルや省エネ化対応、さらには、2020年の東京オリンピック・パラリンピックへ向けたスポーツ施設・商業施設・ホテルの建設、新駅・新線建設などの交通インフラの整備などの関連投資が活発化し盛り上がっている。

ボックス・キャビネットの機能のうち、危険な部分への接近、外来固形物の侵入、および水の浸入に対する保護の等級を記号で示したものがIPで、一つ目の数字が第一特性数字を示す。0は無保護、1は直径50ミリメートル以上の外来固形物の侵入に対して保護する。2は直径12.5ミリメートル以上の外来固形物の侵入に対して保護、3は直径2.5ミリメートル以上の外来固形物の侵入に対して保護、4は直径1.0ミリメートル以上の外来固形物の侵入に対して保護する。5は防塵形で粉塵の内部侵入を防止、若干の粉塵の侵入があっても正常運転ができる。6は耐塵形で、粉塵が内部に侵入しない。

二つ目の数字は第二特性数字を示す。0は無保護、1は鉛直に落ちてくる水滴によって有害な影響を受けない。2は15度以内で傾斜しても垂直に落ちてくる水滴によって有害な影響を受けない。3は鉛直から60度の範囲の散水によって有害な影響を受けない。4はあらゆる方向からの水の飛沫を受けても有害な影響を受けない。5はあらゆる方向からの水の直接噴流を受けても有害な影響を受けない。6はあらゆる方向からの水の暴噴流を受けても有害な影響を受けない。7は定められた圧力時間で水中に没しても有害な影響を受ける水の浸入がない。8は指定圧力の水中に常時没して使用できる。

 

ボックス・キャビネットの材質としては、鋼板、プラスチック、亜鉛合金がある。

主な鋼板としては、JIS規格のSPCC、SPHC、亜鉛メッキ鋼板、SUS304があり、SPCCは冷間圧延機で製造された鋼板で一般用、SPHCは熱間圧延機で製造された鋼板で一般用。亜鉛メッキ鋼板は原板材のSPCC、SPHCなどを電気亜鉛メッキしたもので耐食性、塗装性が優れている。SUS304はクロムとニッケルの合金で耐腐食性に優れる。

プラスチックにはABS、PS、FRPがある。ABSはスチレンの電気的性質、成形性、安定性などの長所と、アクリロニトリルの耐薬品性、耐熱性の長所に、耐衝撃性を向上させるブタジエンを加えている。低温から高温にいたる広範囲の温度において、衝撃強さに急激な変化がみられず、寸法安定性が非常に優れている。

 

PS(ポリスチレン)は、剛性、成形性、安定性などの長所を持ったプラスチックで、低温から高温にいたる広範囲の温度において、衝撃強さに急激な変化がみられず、寸法安定性が非常に優れる。

FRPは、繊維強化プラスチックのことで、鉄鋼やアルミニウムより比重が小さいため、金属より軽くて強い製品を作ることができ、水、油、塩類にほとんど侵されない。他のプラスチック材料に比べて耐薬品性、遮熱性に優れている。

亜鉛合金は、亜鉛を主成分とし、アルミニウム、銅、マグネシウム、鉄などを含んだ合金。寸法制度の高い製品ができ、機械的性質に優れ、耐食性の良いメッキができる。

 

また、ボックス・キャビネットの塗装は、美観、防食のために施される。塗膜は、使用場所によっては厳しい腐食環境下にさらされ、その防食性能がボックス・キャビネットの中の配電盤、機器自体の寿命に関わってくる。

塗膜の防食性能は、盤の重要な選択要素にも関わらず、各メーカーの個別基準によっているのが現状であったため、分電盤標準化協議会では、設置環境での塗装仕様を最適に選択できるよう、基準を定めた。

日本の代表的特殊環境である海岸地帯の潮風の当たらないところ(海岸からの距離が300メートルを超え1キロメートル以内)では耐塩仕様、潮風が直接当たるところ(海岸からの距離が300メートル以内)では重耐塩仕様と定めた。

腐食性ガスの雰囲気については、酸性ガスを発生するところは耐酸仕様、アルカリ性ガスを発生するところは耐アルカリ仕様と定めている。

 

ハード、ソフト両面でセキュリティ対策

ボックス・キャビネット・ラックの技術動向としては、熱対策、地震対策、軽量化、省施工、防塵・防水性、セキュリティなどに重点が置かれた製品が開発されている。海外市場の動きに合わせて国際規格への対応なども不可欠になってきている。

熱対策としては、自然換気用にはさまざまなキャビネットに取り付けできるルーバー、フィルターカセットなどが用意されている。盤内を強制的に換気し、効率の良い熱対策を行う強制換気には盤用換気扇、換気扇付きルーバー、換気扇付きフィルターカセットなどが使われる。強制放熱には、天井取付型、側面取付型などの盤用熱交換器が、密閉状態の盤内を低い温度に冷却し、電子装置を熱・埃による障害から守る強制冷却には水冷熱交換器、コンプレッサークーラー、電子クーラーなどが使用される。

ラックの地震対策としては、耐震、免震、制震がある。耐震は容易な地震対策の一つで、地震の揺れに耐え、構造物の倒壊を防ぐ。耐震対策を施したラックは強固で倒壊する心配はないが、地震時の機器への負担が一般的に大きくなり、機能保護には対応していない。免震は構造物と設置面の間にベアリングやすべり材を設置し、構造物に直接揺れを伝えない。制震は、超高層ビル・住宅や橋梁などに実績がある揺れを吸収する最新技術。制震ラックは制震ダンパーが変形することにより、地震エネルギーを吸収し、ラック内の揺れ、および変形を低減し、連続する大地震にも効果を発揮する。

 

国際化に関しては、ボックス・キャビネット・ラックにおいても安全規格の合致、輸出、国内外仕様統一の要求が高まっており、欧州のCEマーク、米国のULマークなどの取得が進む傾向にある。

IoTへの取り組みが各方面で進む中で、筐体市場への波及が見込まれている。

 

進展する過酷環境への対応

IoT関連機器やAI関連機器の収納用、ビッグデータの活用が進む中で重要視されているデータセンターの建設も追い風になっている。

データセンターはクラウド活用に向けた需要で建設が目立ったが、このところは製造業のビッグデータ活用で注目が集まっている。

製造業では、製造関連データのリアルタイム処理を目指したエッジコンピューティング対応が進んでおり、これに対応したエッジデータセンターが志向されている。

 

工場や倉庫、事務所の一角にこうしたエッジデータセンターを短期間で容易に設置が可能になる。ただ、こうした場所は塵や埃が舞い、温度環境も悪いことが多い。物理的セキュリティ性も良いとは言えないことから、筐体にもこうした環境特性への対応が求められる。今後エッジ処理が主流になってくることが予想されるなかで、こうした筐体需要の拡大も期待できる。

さらに、IoTを活用した農業ハウスの作物に最適な環境を維持管理する農業監視システム、離れた場所からセンサーで遠隔監視する橋梁監視システムなども考えられている。

鉄道関連では回生ブレーキによって発電された電力をいったん発電所内の蓄電池に蓄電した後に活用するスマートグリッド運用などの需要が生まれ、発電された高圧な直流(DC)電気の制御や、低消費電力制御のニーズに対応する受配電盤、制御盤などの需要が増えている。

 

公共施設における災害時の通信手段の確保や観光情報の配信を目的として、公衆無線LANシステムの設置が進められているが、これらには熱対策キャビネットが使用されている。

また、燃料電池自動車(FCV)、電気自動車(EV)の普及につれて、EVの充電ステーションや水素充電ステーション設置時におけるボックス・キャビネットの需要が伸びている。

宅配業界における再配達の手間を省く手段として注目されているものとして、事業所、戸建て、集合住宅向けの、宅配ロッカー、宅配ラック、宅配ボックスなどがある。いずれも不在時に荷物を入れておくことで、再配達を解決する手段となり、今後、設置が進みそうだ。

 

HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)と連携して家中のエネルギーの「見える化」を進める通信計測ユニット用のボックス、地震時の防災機能を高めた感震リレー付きホーム分電盤関連のボックスも注目されている。新築住宅や既存の住宅にも設置できるさまざまなタイプが用意され、南海、東南海などの大地震が危惧される中で、一般家庭にも普及が進むと見られる。

ボックス・ラック・キャビネットはこのように分電盤、制御盤、弱電機器収納など使用目的が幅広く、一般家屋、学校、オフィス、工場、病院、屋外の監視カメラ、移動体通信機器収納設備などさまざまな環境に設置されている。今後もIoT、AI、耐震、HEMS、ネットワーク関連などを中心に新規、更新の市場の拡大が見込まれる。