ディーラーヘルプを考える 黒川想介 (39)

営業について深く考える 販売店支援が大きな役割

現在ではセールス活動のことを一般的に営業と言っている。時には販売と言うこともあるが、営業と販売を厳密に区別して使っているわけではない。

1980年代頃までは部品や機器を扱う業界でセールス部門は販売部とか販売事業部と言われていたし、セールスマンも通称は販売員で営業マンとは言われていなかった。

当時の販売員のイメージは商品カタログを持って客先へ売り込み訪問する人であった。一方、営業マンは総合商社で働くビジネスマンのようなイメージであった。

販売員が活躍していた当時では、日々の活動状況の中で「製販開」という言葉が使われていた。製造と販売と開発を詰めた言葉であり、会話の端々によく出てきた。「製販開」という言葉が示しているように、日常的に製造と販売と開発が直接つながっていて、互いにやりとりした市場情報をもとに商品が作られていた。

国内の需要が成長一途から高止まりをして成熟へと移った90年代には、大競争と言われるような激しい競争が始まった。この頃からセールスの通称は販売から営業に変わった。すでに製造側では現場から離れた商品部がこの頃には創設されていた。商品部は工場と営業の間に立って商品戦略・事業戦略を進めていた。営業側では企画部の機能が強化され、営業戦略の骨子をつくって営業部を主導するようになっていた。

現在の販売店の営業マンに「あなたは販売員ですか、営業マンですか」と問うと、ほとんどの人は「営業マンです」と答える。どうも販売という響きは商品を売るだけというイメージがあるようだ。それなら営業はと言えば、単に商品を売るだけでなく、営利を追求するために技術を習得して顧客の課題を解決するというイメージを持っているようだ。

つまり営業は販売より仕事の幅が広いという印象を持っているということだ。しかし現実は、営業と言えば商品を売るプロであり、アプリケーションや商品知識を身につけて競合と勝負する販売員だ。それ以外の営業戦略はほとんど企画部の担当となっている。セリング力一筋に日夜研鑽を重ねて営業戦線の現場にいる人を販売員と言わずに営業と言っているし、かつて「製販開」の一角を占めて市場の意をくむ役割の強かった人を営業マンと言わず販売員と言っていたことになる。まさに逆のような呼称になっている。

「製販開」と言っていた当時は、まさに業界の草創期から成長期の真っただ中であった。セールスをする人が商品を担いて売りまくっていたことがクローズアップされてはいたが、商品づくりに関与することも販売員にとっては当たり前のことであったのだ。

一方、現在は販売店のセールスでも営業マンと言っているのは、営業の仕事は商品売り上げだけでなく、目標管理や商品技術・アプリ技術研修会、メーカーとの情報交換会議や戦略商品拡販会議などがあって、その都度数々のデータが飛び交い、方針や施策に至るプロセスの説明が複雑に見えるからである。

しかしこれらのことは売りまくるための手段である。だから現在のセールスは営業マンと言わず販売員の方があっている。

それはともかくとして、メーカーと販売店の間には売りまくってもらいたいという思いからディーラーヘルプが存在する。特に販売チャネル店体系を取っているメーカーでは、販売店売り上げが全てとなるためディーラーヘルプは重要戦略である。

営業戦略は企画部が主導しているからディーラーヘルプは文字通り販売店支援策となる。リベート、経営相談、営業マン教育カリキュラムなど、これらは重要な支援策であるが、前線にいるメーカー営業は単なる販売店のお手伝いが役目ではないはずである。営業が自らディーラーヘルプについて深く考えて推進してこそ、営業は「販売ではなく営業」と言うことができるのである。

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