中小ものづくり企業 IoT等活用事例(2)飯山精器(長野県中野市)

三色灯の光を読み取り工作機械の稼働可視化

■事例のポイント
生産管理の煩雑さを解消するため、製造業が自らIoTシステムを開発。古い工作機械でも、配線など複雑な作業なしで使えるなど、ものづくり企業ならではの視点の簡単ツールを開発・販売。

■企業概要
飯山精器は、創業から70年余りの会社。旋削や研磨を強みとし、NC旋盤、センタレス研磨機等を用いて、丸物部品の加工を専業で行う。近年は、建設機械用部品製造や難削材加工に注力している。顧客は、長野県内の大手から中堅企業までさまざま。また、ベトナムに工場を設置するなど、海外展開にも積極的。

 

■解決を目指した課題
量産品の生産が多かった時代には、ひと月に1000ロット単位で発注を行う顧客が多かった。現在では100ロット程度での発注を複数回にわたって行う顧客が主となっている。さらに、近年、顧客から見積回答の迅速化、短納期対応が強く求められている。このような環境変化もあり、社内の生産管理が煩雑になり、管理作業の負担が高まっていた。

 

■課題への対応

〈きっかけ・経緯〉
従来、同社では大手IT企業の生産管理システムをパッケージで導入していたが、自社の生産工程には合わない仕組みであったこともあり、十分に使いこなせていなかった。その中で、他により良いシステムがないか探したものの、同社でうまく使えそうな仕組みが見つからなかった。

そこで、地域のIT企業に所属する知人に相談しつつ、また「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」を活用して、必要なシステムは自社で作ろうと考えた。

〈具体的な解決手段〉
前記の背景のもと、同社では2011年頃、生産管理の負荷の解消を目指した独自生産管理システム「i-PRO」を開発した。これにより、現場作業員がタブレット端末を使って作業の着手・完了状況を入力することで、工程進捗状況が可視化され、事務作業員が管理用PCから工程進捗を簡単に確認できる環境を構築した。

さらに、工程進捗状況に加えて、工作機械等の稼働状況を可視化したいという現場ニーズを踏まえ、16年にIoTシステム「i-LooK」を開発した。「i-LooK」は、三色灯の光をセンサで読み取り、工作機械等の稼働状況を取得し、管理PC上に稼働中の工作機械は緑色、電源が入っているが止まっている場合は黄色、アラームが出ている場合は赤色等と可視化する仕組みである。

さらに、前記のIoTシステム「i-LooK」は、製造業においては十分に活用メリットのある仕組みであると考え、自社内で活用する他に外販を開始した。そして、すでにいくつかの企業での導入実績等がある。

 

■メリット・効果
多品種少量生産・短納期業務の場合、頻繁に顧客から、電話での進捗状況の問い合わせがある。従来は、事務職員が進捗確認のために作業現場まで確認に行く必要があり、その対応に相応の負荷がかかっていた。しかし、生産管理システム「i-PRO」を活用することで、顧客から作業状況の問い合わせがあった際には、管理用PCの画面を見て、どこまで進捗しているかを簡単に説明できるため、電話対応の負荷が大幅に削減した。また、「i-PRO」ではリアルタイムに工程の状況(遅延等)が可視化されるため、作業遅延への早期の対応が行えることや、在庫管理も適切に行うことができ、無駄な材料等の購入を抑えることができるなど効果があった。

設備の稼働状況の確認についても、従来は作業現場まで行って確認する必要があった。「i-LooK」により、工作機械の稼働状況を簡単にPCで確認できるようになり、確認作業の効率化につながった。特に、海外工場の設備の稼働状況の確認作業には効率的である。さらに、「i-LooK」を活用することで、例えば、1カ月当たの設備ごとの稼働率も可視化でき、稼働率を向上させるための具体的な検討や取り組みも行えるようになった。

同社は、前記のように「i-PRO」や「i-LooK」を活用することで、多品種少量生産のために煩雑化した生産管理や、設備の稼働状況の確認作業等を効率化している。今後はさらに、迅速に日次での利益確認が可能な仕組みを目指して取り組みを進めようとしている。

 

出典:経済産業省関東経済産業局「中小ものづくり企業IoT等活用事例集2017」

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