【提言】『探すの時短』に秘策あり デジタル化の1丁目1番地『情報の5S化』〜日本の製造業再起動に向けて(29)

日本の『労働生産性の低さ』が話題になっている。『日本はOECD加盟35カ国中22位、先進国では最下位』との結果に、不甲斐なさを感じている人は多い。この結果だけで『日本の労働者は、質が悪い』と断じるのは正しくないが、労働生産性低下の真犯人を探し、対策を検討しなければならない。

一般論として、日本の『ものづくり世界一』は、自他共に認める事実である。熟練工のレベルも設備力も世界を圧倒し、日本列島津々浦々に歴史的な『ものづくり遺伝子』が定着し、名実ともに日本が『世界一の製造集積国家』と言っても決して過言ではない。特にトヨタ自動車から普及した5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)は、中小製造業・町工場に至るまで徹底され、QCD競争の底力となり、高い生産性を実現している。

しかしその半面、残念ながら『事務職やエンジニアリング職』の生産性が低いのも事実である。当社の調査結果よると、一人あたり『一日一時間以上のムダな作業』が発生していることが判明している。この無駄な作業とは、書類や図面を『探す』時間であり、生産性を著しく低下させている真犯人である。コンピュータ化が進んだことで、かえって『探すムダ』が増大してしまった企業も少なくない。欧米企業に比べ、顕著なほど『探すムダ』が多いのが日本の特徴であり、その原因は欧米と比べ、日本の企業慣習が大いに関係している。

日本では、歴史的に終身雇用制を背景に、社員を信頼して仕事をすることが一般的である。社員全員が一丸となってことに当たる『団結と協調』は日本での組織運営の美徳でもあった。この美徳の副作用が、『会社データの担当者任せ』という特異な現象となり、会社の情報管理の重大な危機となっているが、経営者がこの危機に気がついていない場合も多い。『担当者任せ』となっているバラバラな情報を『社有化』し、誰でも探せる環境の構築により『探すムダ』の排除は可能であり、即刻対応すべき課題である。このままの状況を続けることはBCP(事業継続計画)の観点からも非常にヤバイ状況である。

災害からの防衛もさることながら、万が一信頼していた社員が悪意の攻撃に転じ、瞬間に会社の貴重データが消失するリスク防衛も当然考えなければならない。特に中小製造業・町工場では、Word/Excelなどの電子データに加え、CAD/CAMや生産管理など異なる種類のファイルが存在し、会社として一元管理されているのは稀(まれ)である。会社内の情報を『社有化』し、『情報の5S化』の実現はデジタル化の『1丁目1番地』であり、これをスキップして、インダストリー4.0やスマート工場の構築は不可能である。

大手製造業では、『情報の5S化』の切り札として、PDM/PLMやERPが導入され、世界的には独SAPのシステムが一般的となっている。しかし、日本の中小製造業においては大規模な『SAPシステム』は、実際の業務との乖離(かいり)が大きく、導入は難しいと判断され、全く普及していない。一般の中小製造業では、図面は紙図面に始まり、スキャナーで電子化された図面に加え、2D-CADや3D-CADのデータが、個々のエンジニアによって個別に管理されているのが実態である。

また、NC機械の普及に伴い、各種CAMシステムや自動プロなども複数導入され、機械とのネットワークも行われているが、機械メーカ任せで、独立したクローズドなシステムとなっている。生産管理システムも普及しているが、生産管理データは孤立し、依然としてFAXが活躍しているのも現実である。

このようなバラバラな状況に、漠然たる問題意識を持つ企業では、社内ルールを決めて会社全体の共通フォルダーでの一元管理を試みているが、正直言って理想的運用がなされている企業にお目にかかったことがない。今日まで『情報の5S化』をやりたくても、なかなか現実的には難しい事が多かったのも事実である。

ここに救世主というべき最先端技術『第3のプラットフォーム』が誕生した。人類のIT化は、メインフレームの誕生で幕を開けたが、端末との接続が『第1のプラットフォーム』である。これに続き、クライアント・サーバーシステムがIT化の主流となり、PCとWindowsが現在の企業に満ち溢れている。これが『第2のプラットフォーム』である。

『第3のプラットフォーム』とは、インターネットの誕生により人類が手にしたスマホなどに代表される最新プラットフォームのことであり、モバイル・ソーシャル・ビッグデータ・クラウドの4種の神器を呼ぶ。この4種の神器の活用で、今まで不可能であった『情報の5S化』を実現し、『探す時短』効果が即効的に生まれる秘策がここにある。

第3のプラットフォームの活用による『情報の5S化』こそ、中小製造業の『デジタル変革・IoTの1丁目1番地』であることは明白である。当社(アルファTKG)では、具体的実現の手段として、alfaDOCK『ものづくりDX』を製造業向けに販売している。ご関心のある方は、ホームページ(https://a-tkg.com/)をご参考いただければ幸いである。

◆高木俊郎(たかぎ・としお)

株式会社アルファTKG社長。1953年長野市生まれ。2014年3月までアマダ専務取締役。電気通信大学時代からアジアを中心に海外を訪問して見聞を広め、77年にアマダ入社後も海外販売本部長や欧米の海外子会社の社長を務めながら、グローバルな観点から日本および世界の製造業を見てきた。

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