ディーラーヘルプを考える(13) 黒川想介

連合艦隊的行動で成果を
DHの概念超える概念持つ

「天気晴朗なれども浪高し」。ロシア・バルチック艦隊との日本海海戦で、作戦参謀秋山真之が東京の大本営に打電した一文である。バルチック艦隊は日本海を通ってウラジオストックに入るのか、太平洋を通り津軽海峡か宗谷海峡を通ってウラジオストックに入るのか、それによって待ち受ける場所が変わる。当時最強と言われたバルチック艦隊をウラジオストックに逃がしてしまえば制海権が取れず、満州にいる軍への兵・武器の輸送ができなくなり孤立する。だから、対馬沖で待ち受けていた日本艦隊の緊張は極限に達していたろう。

「敵艦見ゆとの警報に接し連合艦隊は直ちに出動、これを撃滅せんとす。本日天気晴朗なれども云々」という電文は、的確な情報収集により待ち受け場所は間違っていなかった。これで一戦交えられる、という安堵が秋山参謀の中に広がったのだろうか。だから冷静に次の作戦をやる決心ができた。それが「天気晴朗なれども浪高し」という戦時には似合わない文学的表現になったのであろう。

この時の作戦は幾つかあったようだが、丁字戦法を取るという決心をした。丁字戦法とは戦国期の村上水軍が相手の船を逃さず捕捉する戦法のようである。伊予松山出身の秋山参謀は若き頃より村上水軍を研究していたようだ。

海戦当日天気は良かったが波は大きくうねっていた。丁字戦法は縦列をなして進んでくる敵艦に対し、簡単に言えば横一列になって通せんぼをする作戦である。これは敵艦に対し船腹を見せるので的が大きくなる。それに縦列から横一列になる時、ある定点で一隻一隻回転する。その定点に照準を合わせて砲撃されれば全滅の憂き目に遭う危険がある。

しかし当日の波は高く、ロシア艦隊の命中精度は日本艦隊より劣るという情報を計算に入れれば砲弾は当たらないという冷静な判断が、丁字戦法に踏み切らせた。結果、日本連合艦隊は世界の海戦史上に残る大勝利を収めた。

連合艦隊というのは、旧日本海軍が二個以上の常設の艦隊を指揮系統を一つに編成した非常設の艦隊である。まさにディーラーヘルプ組織体、略してDH組織体は、メーカーという常設の組織と、販売店という常設の組織が連合した連合艦隊である。その意味ではメーカーが販売店を支援するという概念のみに終始するのでなく、それを超える概念を持たねばならない。

昨今のディーラーヘルプはメーカーが販売店を支援するという意味合いが強いが、工業化社会の立役者である自動制御業界の成長期では、連合艦隊的に活動した時間が結構多かった。その一つが作戦である。現代のビジネス上で、作戦とは目標を達成するための具体的行動を綴った計画のことを指している。戦術と同義語に扱われているが、軍事上では目標を達成するために戦闘を進めてゆく上でのはかり事である。つまり、戦闘そのものなのである。作戦イコール行動であるから、絵に描いただけの作戦というものはない。

成長期とは拡大期である。自動制御市場の拡大、商品の種類の拡大、アプリケーションなどの拡大が肌で感じられた時代である。作戦が多かったのは拡大していく諸々のことが目標となり、目標数字となって眼前に次々と現れたからである。営業部隊は目標があれば達成したくなる。達成するためにはメーカーや販売店がバラバラで行動するより、一つになって行動した方がいいと誰もが思った。

いろいろなことが目に飛び込んでくる環境だった事は好運であった。

昨今は拡大する目標が次々と現れる環境ではない。したがって作戦は少なく、年に1、2回のキャンペーンが目につく程度である。そのキャンペーンも大成果は期待できない。理由の一つにメーカーと販売店が連合艦隊的行動をしていない。二つにキャンペーン内容が定形化していることである。

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