製造業・世界と戦う担い手づくり エキスパート待望(6)

若手技術者は本当にチャレンジ精神がないのか(前編

受け皿を用意し口出しせず 上層部の緊張感が奮起促す

クライアントであるお客様からよくいわれるのが、最近の若手技術者は「チャレンジ精神がなく覇気がない」「指示待ち姿勢が多い」といったことです。

技術者育成研究所のこれまでの育成経験ベースでは、チャレンジ精神がない、指示待ち姿勢が多い、という若手技術者は必ずしも多いとは考えていません。企業の人事担当者や経営者の方、もしくは中堅以上の技術者の方々がそう感じてしまうのは、いくつかの根本原因が考えられます。

しか以下に主な可能性を列挙します。

1.何かをやりたいと手を上げたことに対し、やらせてみようという風土がない

2.チャレンジ精神を持つ若手技術者の見本となる技術者が中堅以上でいない

3.書類選考による、学歴や学位を重視しすぎている

4.組織体制やスローガンが頻繁に変わっている
5.若手が上層部に物言える体制がない

次に、それらがなぜ若手技術者のチャレンジ精神を押さえつけ、指示待ち姿勢に向かわせるのか説明します。

1.何かをやりたいと手を上げたことに対し、やらせてみようという風土がない

若手の提案したことがたとえ企業にとって意味のないこと、無駄なことであったとしても、取りあえず話を聞いてみる。そして、場合によっては期間とお金を区切ってやりたいようにやらせてみる、という土壌があれば若手でもやってみようと思うのが一般的です。理想的には、以下の2でも述べる見本となる中堅以上の技術者がいればなお望ましいです。チャレンジ精神を望むのであれば、まずそれを受け入れる受け皿を用意することが重要です。そして、この受け皿にもう一つ重要なのが、会社の経営者はもちろん、上司もあまり口出しをしないことです。やって出てきたアウトプットにはこういうことを要求する、というのは良いと思いますが途中途中にいろいろな評価会を設けたりしてはいけません。

また、当然ながらチャレンジ精神という自主性を重んじる場面ですので、強制参加はご法度です。どうしても、この手の業務は管理職以上の人間の実績として、経営陣のご機嫌うかがいに利用されてしまう傾向があるため注意が必要です。管理職の実績のためではなく、若手技術者が自主性を育むことが主目的であることを忘れないようにしなくてはいけません。

自主参加という形態では若手が参加しない、ということであれば参加しやすいようにするためにはどうしたらいいのか、と思案するなり、中堅以上の技術者が自主的に見本を見せるなりといった「チャレンジ精神」を見せることです。このような継続した努力が、若手にチャレンジ精神を植え付けさせるのに重要なことです。

2.チャレンジ精神を持つ若手技術者の見本となる技術者が中堅以上でいるか

若手技術者というのは、自分のことは棚に置き、上司、先輩のことを厳しい目で見ています。陰で、○○さんはどうこう、××さんはそうこう、といったうわさ話をしているのは日常茶飯事。人によっては、中堅以上の技術者に対してダメ出しをしているような若手は多いのが普通です。

これは、若手技術者たちが見える範囲が極めて狭く、上司や先輩の行ってきた経歴や実績を知らないだけでなく、今やっている仕事の背景もみようとしないまま、目の前の言動だけですべてを判断しようとする、若手特有の狭い視野によっておこることです。若手技術者の一般特性ですので目くじらを立てて叱責してはいけません。

恐らく中堅以上の技術者も若手の時は同じようなことを考えていたはずです。

ここで、この中堅以上の技術者を厳しい目で見ている、という事実を利用するというように発想を転換することは盲点なのかもしれません。見られる側の中堅以上の技術者が若手技術者にチャレンジする姿や積極的に提案する姿を見せる。これこそが最良の教育となります。

このような上層部の緊張感というのは若手技術者にも伝播し、若手も「こうなりたい」と奮起するはずです。ぜひ、若手技術者が人ばかりを気にするという特性を利用してください。

■吉田 州一郎(よしだ しゅういちろう)FRPコンサルタント。大手機械メーカーの航空機エンジン部門にて、10年以上にわたりFRPに関連する業務に従事。社内試作から始まったCFRP航空機エンジン部品の設計、認定開発、海外量産工場立ち上げを完了。本部品は先進性が高いという評価を得て、世界的FRP展示会JECにてInnovation award受賞。新規FRP材料研究においては、特許や海外科学誌への論文投稿掲載を推進し、Polymer Journal、Polymer Compositesをはじめとした科学誌に掲載。
ーProfessional member of Society of Plastics Engineers(SPE;米国プラスチック技術者協会)
ー 高分子学会正会員
ー 先端材料技術協会正会員
ー 繊維学会正会員
ー 特定非営利法人インディペンデント・コントラクター協会(IC協会)正会員
ー 福井大学非常勤講師

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