高度化、2方向から

前回述べた「システムズエンジニアリング」には大きく2つの方向から高度化が進むと考えられる。
①横のライン(CADからエッジ端末まで)の高度化
これらの最先端の開発・設計技術が、IoTによりさらに洗練されていく可能性がある。IoTでは、顧客側に設置したタービンなど産業機器にセンサを搭載し、それを収集・分析することで保守などに生かそうという動きがあることはご存じだろう。このセンサデータは、機器単品ごとに記録されるが、そのデータは、将来的には、デジタルツインとしてメーカー側が保持するバーチャル製品とひも付けられるようになるだろう。
そうなれば、メーカーでは、コンピュータ上で、まさに実機と全く同じ挙動を再現できることになる。その実機の利用データは、改良品や次期製品の開発において、ある変更を加えた場合、どのような挙動になるのかなど、さまざまなシミュレーションに活用でき、データの蓄積が進めば、精度は格段に上がっていくことだろう。
これを実現するには、ソフトウエア面では新たにIoT基盤(GEのPledixなど)が必要になる。また、機器ごとの稼働データを管理するものとして、主に保守データなどを管理するSLM(サービスライフサイクル管理)を大幅に強化していく必要があるだろう。インダストリアル・インターネットでは、製造業のサービス業化といったビジネスモデルの変化に注目されがちであるが、製造業の根幹である製品開発にも資するのである。
②縦のライン(CADから生産機器などまで)の高度化
フロアデザイン、加工機械、ロボットなどをコンピュータ内のバーチャル工場で計画していくことができる。将来は、ここに生産に関係する詳細な実データをひも付けることで、シミュレーション精度を大きく向上できるようになるだろう。このとき実データを収集する役割を担うのはMOM/MESである。MOM/MESは以前よりあるソフトウエアで、IoTとは直接は関係がなく、本来的には制御系システムとERPとの橋渡しをする機能を持つ。MOM/MESは、インダストリー4.0で描かれているような自律的な生産方式を実現するうえでも、その計画と実績を掌握するソフトウエアとして重要な役割を担うだろう。そしてそれだけでなく、このデータはデジタルファクトリーにも生かされるようになるのである。
IoTによる次世代ものづくりの影響は広範囲に及ぶものの、開発設計・製造設計、どちらにおいてもポイントの一つとなるのは、デジタルツインにあることは理解いただけたであろう。出荷した既存製品と同じものをバーチャル製品として持ち、実際の利用データを用いながら、新しい機能付加などを展開していく。そしてバーチャル工場をデジタルツインとしてコンピュータ上に持つことで、新製品の生産シミュレーションを迅速に行い、課題があれば製品設計にフィードバックする。これを繰り返すことで、製品設計・製造設計の両面から最適化を目指すことができる。いわゆるコンカレントエンジニアリングが、非常に高度なレベルで実現できることになるのである。

2004年矢野経済研究所入社。情報通信関連の市場調査、コンサルテーション、マーケティング戦略立案支援などを担当。現在は、製造業システムなどを含むエンタープライズIT全般およびビッグデータ、IoT、AIなどの先進テクノロジーの動向調査・研究を行っている。経済産業省登録 中小企業診断士

『2015 IoT時代の製造業ITソリューション -インダストリ4.0など次世代ものづくりとITベンダの戦略-』(矢野経済研究所 180,000円)より一部転載

■矢野経済研究所 主任研究員 忌部佳史
2004年矢野経済研究所入社。情報通信関連の市場調査、コンサルテーション、マーケティング戦略立案支援などを担当。現在は、製造業システムなどを含むエンタープライズIT全般およびビッグデータ、IoT、AIなどの先進テクノロジーの動向調査・研究を行っている。経済産業省登録 中小企業診断士

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