プロトコル共通化がもたらす中小企業のチャンス-山田太郎の製造業生き残りのためのスペックマネジメント術(6)

2016年4月6日

今回の連載では少し見方を変えて、自社(特にここで想定しているのは大手の下請けをしている企業)に、Industry4.0がどのような影響を与えているかを考えてみたい。私の所にも、「Industry4.0を研究するように言われているが、具体的に親会社や顧客からの指示がないと何も動くことができない」という相談をよく持ちかけられる。本当にそうなのだろうか。

実は、Industry4.0は中堅・中小企業にとって、可能性を秘めたものであるというのが私の考えだ。今までは、顧客や系列内での独自のプロトコル(図面などの情報交換のルール)を使って、ビジネスを行っていた状況が一変するだろう。つまり、プロトコルが共通化されることで、今まで“プロトコル自体”が参入障壁になっていた状況が崩れるのだ。この情報共有化を自社のビジネスが今まで競合しなかった他社に取られてしまう「リスク」と捉えるか、今まで、全く取引をできなかった他社に食いこむことができる「チャンス」と捉えられるかどうかだ。

プロトコルの共通化とは具体的にどのようなことを指すのだろうか。一例を挙げてみたい。本紙を読まれている方は生産技術の方も多いと思うが、新しいラインを立ち上げるシーンを想定してもらいたい。ある工程に光電センサを導入するとしよう。今現在、どうやってセンサを探しているだろうか。インターネットを検索しても思い通りの仕様のものを見つけるのに苦労するのではないだろうか。購入後、思ったスペックが出せず買い替えるということもあるだろう。

例えば検出距離の表面反射率や色相によるズレや調節角度の自由度もカタログには具体的には書かれていないだろう。そうなると、過去の実績や担当者の勘で知っている会社の商品から選ぶことになるだろう。ところが、プロトコルが共通化するとこの点が大きく変わってくる。分かりやすく言うと、インターネットで自分の選びたい仕様を入力すれば、各社の商品が共通の基準で検索され、その条件に合うものの商品一覧が表示されるようになるイメージだ。

先に述べた「“プロトコル自体”が参入障壁になっている」とはまさにこのことなのだ。ドイツのIndustry4.0と、アメリカのインダストリアル・インターネット・コンソーシアムという次世代製造業戦略の二大潮流が手を組み、それぞれの参照規格を連携させるプロジェクトを立ち上げた。これに対して日本や日本企業は危機感を覚えなければいけない。この潮流に乗り遅れれば、日本の製造業は米独からはじかれ受注が厳しくなってしまう。

では、こういった流れの中で、中堅・中小企業は何をしなければならないか。日本も扉を開きこれらの潮流に乗ることである。今までプロトコルが違ったことが理由でビジネスチャンスが広がらなかったものが、大きく広がることになる。そして、それよりも大事なことが、製造業の本質は仕様を売ることであることを理解し、製造外注を脱して設計外注になるということである。

例えば、トラックを求める消費者は一体何を買っているのだろう。トラックという箱を買って庭に飾っておくわけではない。どのくらいの重さのモノを運べるかとか、乗り心地や運転のしやすさや燃費といったスペック(機能・仕様)を買っているのだ。言い換えると、消費者はトラックという製品のスペックに対してお金を払っていることになる。

それは、トラックメーカーはトラックのスペックを作り込むことに十分なお金を払っているかが問われることになるということだ。そのトラックメーカーにモノを売り込んでいてはいつまでたっても値段をたたかれるだけだ。

究極的には下町ロケット(TBS)であったのが「佃製作所が開発したエンジンバルブがなければロケットを打ち上げられない」という状況だ。中小企業が開発した技術がロケット全体の機能を握ったということで、中小企業が大企業の上位になった瞬間だ。このような構図をこれからの中堅・中小企業は目指していかなければならないと私は考える。

山田太郎(やまだ・たろう)

参議院議員
慶大経済卒、早大院博士課程単位取得。外資系コンサルティング会社を経て製造業専門のコンサルティング会社を創業、3年半で東証マザーズに上場。東工大特任教授、早大客員准教授、東大非常勤講師、清華大講師など歴任。これまでの経験を生かしステーツマン(政治家)として活躍中。