FA・制御・電子部品流通 設備投資3年ぶり増加 ロボット活用で人手不足解消

FA・制御・電子部品流通を取り巻く環境は、総じて今年前半は前年同期を上回る状況で推移していたが、後半スローダウン気味の基調となっている。商社各社の売り上げは、前年を下回っているところもあるが、前年同期を数%~10数%上回っているところも多く、堅調に推移しているようだ。

国内市場はPV(太陽光発電)関連が牽引(けんいん)し、幅広い機器の需要拡大につながってきた。しかし、電力の買い取り価格の値下げや電力会社の買い取り制限など、PVを取り巻く環境が大きく変化してきたことなどから、急速に需要が減少している。

一方、省エネ関連の需要は安定して継続しており、工場のエネルギー使用の見える化や平準化、LED照明への切り替えなどが取り組まれている。LED照明は、工場やビル、店舗、公共施設などの照明で順調に切り替えが進み、現在は鉄道車両や店舗の冷蔵ショーケース、機械内部照明のLED化が進んでいる。

また、人手不足なども加わり、作業の省力化に向けてロボットの採用も増えつつある。溶接や塗装などの分野で導入が先行していたロボットの作業が、組み立て、搬送などの用途でも利用が増えて、ロボット需要を牽引している。品質向上や高密度実装、安定した駆動といったロボットの特性を生かした目的での導入も志向されている。

一方、インフラ施設の老朽化の更新投資は遅れ気味だ。人手不足や資材価格の高騰などもあって、計画通りに建設が進んでいないためで、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う波及効果は期待ほど表れていないようだ。

海外市場は、需要を引っ張ってきた中国市場の変調が各方面に影響を及ぼし始めている。携帯電話は、部品メーカーの一部は好調であるが、モデルチェンジが小幅な機種は既存の機械設備で生産が可能なことから、大型の設備投資には至っていない。工作機械ではこの関連で大きく受注を伸ばしていたメーカーも多いことから、影響は国内の工作機械受注が2カ月連続して前年同期を割り込むという結果になってきている。

中国では人件費の上昇も続いていることから、自動化・省力化に向けた投資が継続しており、制御・電子部品などの需要の底支えにつながっている。

こうした中、成熟した国内市場から、まだ開拓の余地の多い海外市場に目を向ける商社もある。海外市場の開拓が遅れている国内の中小メーカーのFA制御機器や電子部品を主として扱いながら、アジアや欧州などにPR活動や拠点展開を計画している。「メイドインジャパン」の品質への信頼は依然海外でも高いが、主として営業力のある大手メーカー製が中心で、中小メーカーの埋もれた制御・電子部品を紹介する余地は十分あると見られている。

制御・電子部品メーカー各社は、今月から下期以降、販売キャンペーンを展開し、需要の掘り起こしを図る計画を進めている。各商社はこの取り組みと一体となって、後半の追い込みを進めようとしている。

■非製造業へアプローチ強化 セキュリティ関連に期待
関東地区のFA・制御・電子部品の流通は、PV(太陽光発電)関連需要のスローダウンを除くと、総じて堅調な動きで推移している。

2020年の東京オリンピック・パラリンピック関連ではまだ目立った投資が見られないが、東京都内をはじめ、周辺の各県でも老朽化した建物や、工場の跡地を利用した再開発が進められ、ビルや公共施設の建設ラッシュが継続している。省エネ化や通信インフラなども絡み、建設関連以外の制御機器、電子部品などの需要にも追い風になっている。

工場の国内回帰の動きも見られるが、まだ一部であり、基本は既存工場の生産性向上や省エネ化などの需要を掘り起こしている。工場の生産ラインをコンパクト化したり、ロボットなどの自動機を導入したりして、最小の投資で効果を上げようとしている。

同時に、基本は製造業の投資を見込みながらも、工場以外への営業活動を強めているところも目立つ。LED照明への切り替えや、ビルや工場、マンション、公共施設の省エネ診断での訪問活動などである。女性社員中心の営業を配置して、女性の視点からの営業提案活動を行っているところもある。女性社員の営業現場への活用は、工場への訪問活動でも増える傾向にあり、成果を上げている商社も多い。

また、防犯機器や震災対策品の拡販で内需の減少分を補おうと取り組んでいるところもある。特に監視カメラなどで自治体を巻き込んでメンテナンスまでも対応することで、新たな市場を作ろうとしている。さらに、生産設備の予防や予知保全提案を行うことで、生産性の向上をアピールする活動も行われている。

最近は消費材を中心に、ネット販売が増えつつあるが、この傾向が生産財にも波及してきている。従来は試作品や緊急品などでの利用が多かったが、最近は販売の一手法として定着し始めており、既存の商社にどのような影響を及ぼすか注目されている。一部の商社では、ネット販売を顧客サービスの一環として開始している。営業拠点から離れた地域をネット販売でカバーすることで、売り上げを確保しようとしている。

関東には、「秋葉原」という世界一ともいえる電気街がある。家電の比率は下がり気味であるが、制御・電子・計測関連製品の販売では依然大きな拠点となっている。この秋葉原地区で昨年から、商社とヤマト運輸が共同物流を開始している。秋葉原地区では商社間の取引も多いことから、希望商社がそれぞれの配送商品を1カ所に持ち寄ることで、ピッキング作業や伝票枚数などを減らし、配送コスト削減や環境負荷の減少などを目指している。

開始して約1年が経過したが、次のステップとして、共同配送地域の拡大と共同在庫の試行を計画している。共同配送地域の拡大は、現在の千代田区外神田地区に加え、千代田区岩本町、文京区湯島地区などにエリアを広げ、対象の商社数を増やす。ヤマト運輸は輸送のノウハウと大規模なコンピュータシステムを有しており、また発送先や届け先とは常に「フェイス・ツー・フェイス」のつながりがあり、配達だけでなく、販売や回収といった多岐にわたる潜在的な活用の可能性が期待できる。

商社には、営業、流通、回収、金融など多機能の役割が期待されているが、こうした取り組みは、新たな商社像を生み出すきっかけにつながってきそうだ。

■名古屋、リニアで活気づく エンジニアリング力強化も
中部地区の経済動向は、JR名古屋駅前を中心とする再開発事業などで活況を呈している。2027年に開業予定のリニア中央新幹線により、首都圏まで約40分で行き来できるようになり、それをビジネスチャンスと見込んで、名古屋駅前では高層ビルの建設や計画が着々と進んでいる。

「大名古屋ビルヂング」「JRゲートタワー」「JPタワー名古屋」「シンフォニー豊田ビル」「グローバルゲート」が17年ごろまでに順次完成する予定で、その他、名古屋市栄地区、愛知県知立市、豊田市、岐阜県大垣市などでも、高層ビル、高層マンション建設などの再開発事業が目白押しだ。

中部地区の主要産業である自動車関連は、国内販売は低迷が続いているものの海外販売は好調であり、ハイブリッド車などの競争力強化や品質・生産性向上に向けた設備投資は堅調に推移している。

三菱航空機が開発する国産初のジェット旅客機「MRJ」は、間もなく試験飛行が開始される予定で、関連部品メーカーなどが生産体制を整えるために、設備の拡充などを進めつつある。

こうした背景の中、中部地区のFA流通商社は、海外事業の強化、エンジニアリングビジネスの確立、新規事業の開拓、営業体制の強化などの施策で、発展のための模索を続けている。

海外展開は、中国、東南アジアや、最近ではインドが注目され、商社では営業所や駐在員を積極的に配置している。国内での設備投資は今後あまり期待できないため、国内メーカーの海外現地法人はもちろん、海外の地場メーカーの情報も収集し、営業攻勢をかけている。

エンジニアリングビジネスとしては、多くの技術スタッフをそろえて、開発・設計・製造のエンジニアリング機能を整え、顧客に提案営業を実施しているところが多い。メーカーと共同で、ロボットシステム、ドローンシステムなどの開発に力を入れている商社もある。

新規分野としては、環境・エネルギー関連分野などが注目されているが、全く新しい分野、新規顧客を見つけるのはなかなか容易ではなく、既存の商材ラインアップを拡充したり、既存の顧客に別の商材を勧めたりして、ビジネスチャンスを拡大しようとしている。

営業活動は、顧客を頻繁に訪れて、製作してもらいたいシステムの要望や苦労していることなどを聞き出すのはもちろん、積極的に展示会などに出展して、取り扱う多様な商材をメーカーの担当者と共にPRし、幅広い顧客を呼び集めて商談に結び付けようとしている商社も多い。

その他、新品から中古品までの各種FA機器、メカトロ部品などを販売するWEBショップを展開したり、紙媒体の新製品ニュースの他にHP上でメーカーの新製品情報を掲載したりするなどネット媒体の活用も進んでいる。

こうした様々な施策を中期計画などで社内に浸透させる体制を整え、不透明な時代の中、何年も先を見据えた経営が商社には求められている。

日本政策投資銀行関西支店によると、関西地域における2015年度の設備投資計画(製造業)は、3年ぶりの39.7%増となり、全産業通じても15.0%増に転じる。製造業は、研究開発施設の新設が相次ぎ、幅広く設備の新設・増強が見られる一般機械63.5%増、研究開発拠点新設や拠点整備が牽引する電機機械144.4%増、後発医薬品関連の能力増強投資がある化学23.1%増を中心に大幅増となると見られている。前年比30%以上の伸びを示すのはデータがある1980年以来初めてで、大幅な回復が見込まれている。また、10月19日発表の近畿経済産業局による近畿経済の動向においても、雇用環境の改善が報告されており、回復傾向にあると見られる。

ただし、倒産件数は5カ月ぶりに増加、輸出に関しては改善しているものの、一部に弱さが見られると判断されており、慎重に推移を見守る必要がある。

関西を中心に海外に展開するFA商社では、14年に大口受注があったスマートフォン関連投資に規模では及ばないものの、4K仕様の液晶製造設備の引き合いが堅調だという。また、中国経済の失速による影響が見えにくいものの、現状は表立った影響は表れておらず、当面は海外への技術面、販売面の強化を継続するという。

設備の購買側に目を移すと、パナソニックは15年度だけで約3000億円の設備投資を行うと発表している。そのうち55%は国内向けといわれており、関西地域で期待されている。村田製作所も1500億円、ダイキン工業も1500億円と設備投資に積極的な関西系企業が多く、FA業界の好調を支えている。

FA流通商社の動きとしては、顧客ニーズに対応するソリューション提案が主軸となりそうだ。事務用品や消耗品だけではなく、産業機器においてもネット販売を主力とした企業の影響力が増している。各社取り扱い製品数や、流通体制を競い合い、汎用製品に関しては即日出荷が当たり前になりつつある。また、ネット販売企業と対抗するのではなく、供給側となり、協業する動きもみられる。

一方で、製造現場での人材不足に対応し、設備投資の内容は複雑化してきている。特にロボットや検査機器などシステムアップが必要な製品や、生産管理システムやトレーサビリティシステムなど、ソフトウェアが関連するような設備は、日を追うごとに高度になっている。FA流通商社の営業担当者には、製造現場(顧客)が抱えている課題を把握し、機器メーカーが提供できる機能を十分に理解し、さらにそれらを組み合わせて提供する提案力が求められている。また、機器自体も高度化してきているため、各社営業をバックアップする技術部門や、エンジニアリング部門も強化し、製品販売だけではなく、エンジニアリングも含めたシステム全体の受注に注力している。

従来存在していた商社の地域による住み分けも崩れつつあり、関西を地盤とする商社の関東、九州への進出も顕著だ。機械商社、電機商社といった住み分けも年々薄れてきており、電機に強い商社が機構部品を扱う、機械商社が電機部品を扱うなど各社取り扱い製品数は増えてきている。製品数の増加に伴い、システム投資も活発だ。

配電盤業界では、ビルなどの省エネ投資は落ち着いてきたものの、トップランナー規制の導入による設備更新、制御盤、配電盤のメンテナンス需要が底堅い。店舗の大型化から派生する分電盤ニーズも堅調だ。工場の新設の話も聞かれる。

日本配電制御システム工業会(JSIA)の全国総会が今年6月、初めて大阪で開催されたことから、同工業会の関西支部では、会員同士の積極的な交流などが図られ、業界が一致団結して成長していく良いきっかけになったという声も聞かれる。

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