FA(産業用)コンピュータは、HMI端末機器として設備・装置の制御から、産業機器への組み込み用途までさまざまな分野で使用されている。連続して稼働できるという特徴は、工場などに加え、非製造分野の下水道設備や変電設備、風力や太陽光発電などの公共設備の監視制御、電車、船舶、高速道路などの交通システム、放送・通信設備、コールセンターやデータセンターなどの情報端末、医療機器などにも広がりを見せている。

■大きな広がりみせる市場規模
FAコンピュータの市場規模は、メーカーや調査会社などによると、日本市場が約300億円、グローバル市場で約2300億円と推定される。FAコンピュータの半分は工場などの製造現場で使用され、残りが非製造分野の交通や公共分野と見られている。

FAコンピュータの需要先は全般的に上昇基調を維持している。半導体関連製造装置、工作機械、電子部品実装装置、ロボット関連などのものづくり分野に加え、社会インフラ関連も好調に推移している。

一般的にFAコンピュータは、工場の製造現場や重要な設備の制御装置など、長期間稼働を停止することができないシステムでの使用を前提に設計されている。このため、マザーボードや電源などの重要なパーツには、より高い信頼性と耐久性に優れた部品などが使用されている。

工場の製造現場や産業機器に組み込み用として使用される場合、振動、高温多湿、粉じんの発生など、過酷な使用環境下に置かれることが多く、高温に耐えられるように吸排熱を重視した設計や、粉じん対策などが施されている。

また制御機能も、生産ラインでの一体化処理や並行処理ができることで、処理時間の短縮やスループットの向上が図られている。半導体製造関連装置やFPD(フラットパネルディスプレイ)製造関連装置分野においては、より複雑なプロセスを短時間で高速処理することが求められており、一つの装置に複数の制御コントローラとFA用コンピュータが使用されているケースが多い。このような場合、最先端のCPUや、メモリー2GBクラス以上のハイスペックな製品が要求される。

インターフェイスについても増設コストを少しでも減らすため、豊富なシリアルやUSB、拡張スロットを持つことが要求されている。

拡張スロットは、画像処理ボードやモーションコントロールボード、各種フィールドバスボード、GP/IB通信ボード、AD変換ボードなど、用途別に応じたボードを使用する。シリアルやUSBには、各種ホストコントローラやUPS、計測装置などの周辺装置を接続することが多い。

CPUは、インテルなどの最新プロセッサを搭載することで、演算能力やグラフィック機能の性能が大幅にアップするとともに、消費電力の削減にも貢献している。インテルのBay
Trailプロセッサを搭載した最新の機種では、演算能力が従来機種の約2倍となり、より高速な演算処理が可能になっている。グラフィック機能も従来の約3倍となり、これまで難しかった高精細の動画再生も容易に実現できるようになり、使用分野の拡大が期待されている。

一方、消費電力は従来の約半分になるなど省エネ化が進み、高いバリューパフォーマンスを顧客に提案できるようになっている。

■重要度増すセキュリティ対策
FAコンピュータにはさまざまな仕様が要求されるが、中でも最重視されるのが信頼性で、メモリーエラーの検出・訂正などが可能なECCメモリー機能、ハードウェア内部を監視するRAS機能、ハードディスクを切り離すホットスワップ対応ミラーリングディスク機能などがほとんどの製品に搭載されている。

最近はコピー防止機能も重視されている。特に受託開発の分野では、技術が企業外に流出することを防ぐために、ハードとソフト両面でコピー防止を行うケースが増えている。

同時に制御セキュリティ面での対応も進んでいる。いわゆる「ホワイトリスト制御」で、マルウェア情報を検知する。

「ブラックリスト制御」に対し、動作して良いと判断した「良いもの(ホワイト)リスト」のみを決め、これ以外には動かないように制限を設けるもの。ネットワークとつながる用途が多いFAコンピュータでは、ますます制御セキュリティの対策が重要になっている。

■長期保守で汎用PCと差別化
24時間連続的に稼働する厳しい現場では、「いかにダウンタイムを削減できるか」という点も大きな開発テーマになっている。こうした状況を背景に、最近ではWindowsだけでは難しいリアルタイムな制御を実現するため、リアルタイムOSを併用することが増えている。

PLCでは実現できない処理の領域、例えばプロセス処理用の学術計算や、高級言語によるプログラミングなどを実現するため、制御部分はリアルタイムOSで処理、制御以外の部分はWindows OSで処理を行うなど、1台のPCで制御から処理までを行っている。

数年前まで、Windows OSとリアルタイムOSを同時に走らせるということは難しかったが、近年はコンピュータの高性能化により、簡単に実現できる。特に最新のプロセッサとリアルタイムOSを有機的に連携することで、リアルタイムによる処理性能も大きく向上、42秒で2万ステップの高速処理が可能になっている。

さらに、複数台のPCや周辺装置、それらを連携する通信部分を、コンパクトに集約することが進み、1台で操作から制御までを可能にし、高効率・高速のマシン制御が行えるようになった。こうしたシステムは、HMIから同期制御、画像処理まで対応でき、装置の小型化や処理能力の向上、保守部品・運用コストの低減など、さまざまなメリットがある。

北米や欧州でも、複数のPCや周辺装置を1台のPCに集約するワンボックス化の動きが進んでおり、コンピュータから各種フィールドバスボードを経由し、I/Oを直接制御するというケースが主流になっている。

日本を含むアジア市場では、計装にPLCを利用することが多い。特にI/Oまわりの制御や接点の設定などはPLCで処理することが多い。こうした動きを受け、国内でも超高速フィールドネットワークなどに接続することで、高効率でより高速なマシン制御を行う動きが進んでいる。

■消耗品減らし手間と費用削減
HMI端末や生産ラインの情報収集端末として使用される産業用コンピュータは、コンパクトな筐体(きょうたい)、ファンレス対応、低コスト化など、組み込みに適した仕様が進んでいる。上位サーバからの製造指示を確認し、それに基づく作業内容をPLCや温度調節計などの各種コントローラに指示し、その結果を収集する用途などに使用されている。この場合、端末で複雑なデータ処理をすることは少ない。逆に、信頼性向上への要求度は強く、寿命部品を減らすためのファンレス対応や、Windows XP EmbeddedによるHDDトラブル回避、バッテリユニットによる瞬停対策などが進んでいる。

ファンレス化は、駆動部品がなくなることから消耗部品の交換にかかわる費用と時間が削減できることになり、メンテナンスフリーでFAコンピュータを使うことができる。

日本のFAコンピュータ各社は、このところ海外販売に注力し始めている。日本メーカーの海外への生産シフト傾向もあり、海外の日系企業を中心に採用が増えつつある。当然のことながら、海外規格の取得を進めており、UL、CSA、CEをはじめ、韓国のKC、中国のCCC、台湾のBSMIなどに対応している機種が増加している。海外規格モデルでは仕向け先に合わせて、OS言語を選択できるようにしており、英語、中国語、タイ語、ポルトガル語などが多いようだ。

FAコンピュータを使用するユーザーの大きな採用ポイントは、長期間の安定した製品供給と保守メンテナンスである。FAコンピュータ各社は、5~7年間の長期製品供給、7~12年間の保守メンテナンス対応といった点もアピールし、汎用(はんよう)パソコンと差別化している。

こうした動きの中でFAコンピュータのモジュール化をコンセプトにした製品も発売されている。FAコンピュータのパネルとコンポーネントを分離し、必要に応じてプロセッサ、メモリーなどのコンポーネントを選ぶ。これによって、装置メーカーは、最初に組み込んだパネルをそのまま使用しながら、CPUやネットワークをアップグレードすることが可能になる。長期間同じ装置を使用しながら、アップグレードできるというコンセプトは、今後のFAコンピュータにとっては新しい流れになることが予想される。

最近は、HMI端末としてプログラマブル表示器を使用してきたユーザーが、パネルコンピュータへ移行するケースが増えている。計装でのラダープログラム世代が少なくなり、再利用性の高いC言語などの高級言語(HLL)への世代交代が進んできたことが大きい。

産業用コンピュータメーカー各社は、他社との差別化を図るための独自技術として、汎用アーキテクチャを選択するケースが増えている。GUI構築などについては、HMIソフトウェアなどを導入し、画面の見栄えや、PDFなどのドキュメント閲覧機能、リモートモニタ機能などを構築することで、アプリケーションとしての付加価値を高めている。

FAコンピュータは、インダストリー4.0やIoT時代の新しいものづくりの中核を支えるものとして、今後さらに期待が高まりそうだ。

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