ドイツのメルケル首相が7年ぶりに来日した。ドイツと日本は産業構造が似ていることなどから比較されることが多い。今のドイツの話題は欧州で独り勝ちの強い経済力であるが、もうひとつは第4次産業革命とも言われている「インダストリー4・0」の構想を提唱した当事国である。規格などを産官学あげて制定し先行する欧州企業の戦略はいつもながら感心するが、今回の「インダストリー4・0」は規格ではなくコンセプトである▼ドイツに後れを取らないように、同様の構想は米国や日本企業も提唱している。国際規格でないだけに、絶対的なものがあるわけではない。考え方に賛同するかどうかの問題である。それでもドイツのこの動きが気になるのは、日本と同様にものづくりで有する高い技術力と、バックにEUという大きな連合体がついているためだ。規格でなくとも共同戦線は脅威である▼「インダストリー4・0」の動きに対して日本企業も後れを取っているわけではない。制御セキュリティ面を強化した「インダストリー4・1J」という独自のコンセプトも提唱している。また、EUや米国に対して、アジアという大きな市場がある。まず、ここで浸透させることが重要だ。ドイツの共同戦線に対し、日本は企業間の競争で体力を消耗し、結果的に負けることが多い。大企業から中小企業までがまとまったオールジャパン体制での取り組みが重要になってくる。ものづくり大国・日本の底力を示したい。