配線接続機器 不安要素少なく視界良好 社会インフラや自然エネルギー関連も堅調

端子台やコネクタなどの配線接続機器は、FA機器や民生機器、車載機器などの市場が拡大していることに加え、社会インフラや自然エネルギー向けの市場も堅調に推移し、伸長を続けている。端子台は作業性の向上をポイントに開発が進められており、コネクタと一体化したタイプも増えている。特に欧州タイプのネジ式やスプリング式の端子台は、日本市場でも評価を高めつつある。配線接続機器を取り巻く環境の現状に不安要素は少なく、先行きへの期待感が高まっている。
国内の端子台やコネクタなどの配線接続機器市場は、約4500億円とみられており、コネクタが4100億円、端子台が400億円前後と推定される。単価の下落や海外生産が増えていることもあり、国内での出荷額は市場の活況に比べると伸びは決して高いとは言えない。しかし、日本市場で販売している海外メーカーの売り上げなどをみると、着実に市場への浸透が進んで、実績を上げつつある。端子台やコネクタなどを取り巻く市場環境は、ほとんどの市場が追い風になっている。

工作機械の2014年の生産は過去2番目の市場にまで拡大し、今年は過去最高に達するのではという期待が高まっている。半導体・液晶製造装置も、シリコンサイクルによる山谷はあるものの、このところプラスで推移している。

工作機械、半導体製造装置ともスマートフォンやタブレットPCの旺盛な需要が波及していることが大きい。

■自動車関連も好調
国内産業の屋台骨を支える自動車関連の好調さも大きく貢献している。自動車生産工場のライン投資はさほど拡大していないが、車載関連、および自動車周辺のインフラがプラス効果を生んでいる。HV・PHVなどのハイブリッドカーやEV(電気自動車)周辺の機器や、今後普及が期待されている水素燃料車などは波及すると大きな効果が見込める。

再生可能エネルギー周辺の需要も急速に伸びている。再生可能エネルギーを商用電気として使用するには、DCとAC(交流)を変換することが必要で、DC600VといったDC高圧化への対応が求められる。DCは、電流が大きく流れている中で強制的に遮断しなければならず、この分野でのDC対応端子台は、高圧による耐性が必要となってくる。最近では、DC1000V、DC1500Vに対応する端子台とともに、開閉機能も持たせた接続箱用の端子台が発売されているほか、コネクタについても高圧化への対応が進んでいる。

さらに産業分野、民生分野問わず「省エネ・蓄エネ・創エネ・活エネ」をテーマとした製品やシステム、これらに呼応するエネルギー・マネジメント・システムの普及などで、新しい市場も形成されつつある。

ビルや施設、高速道路などではリニューアル化に向けた取り組みが活発化している。省エネや安全・安心、インテリジェント化などが目的であるが、こういった用途では配線接続機器は大きな鍵を握っている。単に信号や電力を流すという役割だけでなく、省配線、高速化、耐環境性、長期間の信頼性などが従来以上に求められてきている。

スマートシティ・スマートグリッド構想などとも絡み、配線接続機器の新しい市場形成につながっている。

■配線工数の削減進む
最近の端子台は、配線工数の削減とDC(直流)の高耐圧化などに積極的に取り組んでいる。

配線工数の削減では、端子ネジにばねを一体化し、ばねがネジの着脱を防ぎ、仮止め作業を容易にしてきた。このばねの使い方も各メーカーが独自の構造を開発、圧着端子使った端子台では、大電流容量タイプを除くほとんどで使用されてきている。

これに対し、圧着端子を使用しない欧州式と言われるスプリング式やネジ式の端子台の採用が、このところ増えてきている。欧州式端子台は配線作業性に優れている。

日本配電制御システム工業会(JSIA)は、制御盤製作の省コスト化の一環として、かねてから端子台の配線作業の省力化を検討。日本の制御盤配線方式で従来から使われている、より線に圧着端子とネジという方法に対し、欧州式の端子台との作業性、信頼性などの比較試験を実施。

圧着端子を使用した場合、配線作業に加え、その後振動などによる緩み対策として増し締め作業を伴うことが多く、この作業性の向上が求められている。

欧州式は、作業性の良さは評価されても、その後の緩みなどの接続信頼性が確保できるかが大きなポイントのひとつとして挙げられていた。

両方の接続方式を比較実験した結果、スプリング端子が、接続工数では丸形圧着端子に対し31%(熟練者)~52%(非熟練者)、Y形圧着端子で22%(熟練者)~45%(非熟練者)の合理化効果が得られた。しかも、熟練者・非熟練者の間で作業時間や接続品質に差が生じないことも明らかになった。

また、素線がばらけることによる接続障害も、スプリング端子など欧州方式にすることで回避できるということも判明。JSIAでは今後、輸出比率の高い機械業界や工場の世界展開を進める業界、ネジの緩みを経験している車両や信号設備などの業界は、スプリング端子の採用を進めていくことにしている。

欧州式端子台は、配線をそのまま端子台に差し込んで配線するため、配線時の被覆作業が省ける。

■欧州式の採用が拡大
最近は市場のグローバル化もあり、欧州式端子台の採用が自動車、工作機械、半導体製造装置、食品機械、船舶、信号、電力など分野が広がって来ており、しかも従来、国内向けと輸出向けで端子台を使い分けする傾向が多かったが、国際標準化の流れもあり、欧州式端子台に一本化する傾向が強まっている。生産コストの削減や在庫管理上からも有効となっている。

欧州式端子台用の配線工具も充実してきている。電動式なども登場して、作業の負担軽減へ積極的に取り組んでいる。

欧州式端子台は、これまで小電流タイプが多かったが、最近は1500V/200Aクラスの高電流用途でも使用できる製品が発売されており、1000Vクラスでも採用が進んでいる。さらに、メガソーラーなどのDC用途で使用できる、定格絶縁電圧1500Vクラスで開閉可能な製品も発売されている。

端子台は、取り付け方法で、プリント基板取り付け、DINレール取り付け、直付けなど、用途によって使い分けされている。また、メンテナンスの省力化と安全性の確保から、電流容量の区分や回路のグループ分けなどに、端子台のカラー化で対応するケースが増えている。

配線作業の容易化・省力化で効果の高いスタッド形端子台の需要も増えている。加えて、挟み込みなどの接続不良を未然に防止できる。

メンテナンスを容易にする点では、LED搭載タイプは長寿命であり、取り替える期間が長くメンテナンス性に優れる。過酷な環境で使用する端子台は、材質に耐油・耐薬品性の高いものを使用し対応を図っている。

■軽量化へアルミ端子台も
また、端子台のさらなる軽量化とコスト低減を図るため、端子部にアルミニウム合金を採用したアルミ端子台もある。端子部を従来の銅合金からアルミ合金にすることで、端子部の重量を10%から30%軽量化できる。コストもアルミの原材料価格は、銅よりも安く安定している。性能面でも熱伝導性と放熱性に優れ、腐食しにくいアルミ電線の配線にも適しており、様々な産業分野で使用できる。

一方、コネクタは、自動車や鉄道車両、放送機器、電話などの通信機器、事務機器、家電、ゲーム機器など幅広い分野で使用されている。

なかでも工作機械やロボットなどの産業機器、鉄道や放送など社会や業務用分野では、大電流で、しかも厳しい使用周囲環境にも耐える仕様が要求されている。こうした堅牢ニーズに対応したコネクタは、一般的に金属製のハウジングが多いが、これをポリアミド材で成形しながら頑丈なハウジングを実現した製品も登場している。金属製に比べ軽量で、コストパフォーマンスも高いことから、今後採用が増えてくるものと思われる。

自動車の充電スタンドでは、高電圧のコネクタが使用されている。形状が大きいことから、今後は小型化に向けた開発が進められている。

■セーフティタイプも浸透
安全ニーズに応えたセーフティタイプのコネクタも浸透している。配線の接続作業時や計測作業時、不用意な接触事故などを未然に防ぐ構造となっており、工場のほか研究室、学校など様々な分野で使用されている。

そのほか、コネクタの配線ネジ締め作業が従来に比べ90%削減できる製品も登場している。コネクタのネジ部を半回転させるだけで作業が完了するため、配線作業の省力化に大きく貢献する。

機器や配線間をつなぐ配線接続機器は今後も着実に使用が増加する。DC化や屋外用途での熱や油などの耐候性、小型・省作業性などまだまだ改良が加えられようとしており、さらに使いやすさが進みそうだ。

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