半導体製造の国家的プロジェクト「ミニマルファブ構想」始動 装置小型化、設備投資を極小化

半導体製造の概念を大きく変革する「ミニマルファブ構想」がスタートした。産業技術総合研究所(産総研)が音頭を取る国家的プロジェクトとして、半導体製造装置の小型化と設備投資の極小化で、競争力を高めようというもの。すでに、100以上の企業、大学、公的機関が参画を表明している。ものづくり立国を目指す日本の新たなプロジェクトとして、その成果が注目される。

ミニマルファブ構想は、半導体製造の主流であるメガファブとは異なる新しい製造方法。集積回路ICを1つ作るのに十分なハーフインチウェハを用いて1チップを作ることで、製造装置群を超小型化でき、工場のスペースも大幅に削減可能になってくる。

メガファブは、広大な敷地に大きなクリーンルームを設け、電気や水資源を大量に消費して、直径30センチメートルの大きなウェハを作る大型製造設備を用いて生産している。大量生産による量産効果で単価を下げようとしているものの、設備投資額は5000億円とも言われている。

これに対して、ミニマルファブは、20メートル四方程度の部屋に小さな半導体製造装置を設置し、最少限の資源を使って、多品種少量・変種変量・単品種生産を行うもの。

■設備投資額は1000分の1
装置とウェハ専用のケースのみに限定した必要最小限のクリーン化で済むことなどで、設備投資額はメガファブの1000分の1程度の5億円程度で収まる画期的な生産方法となっている。

ミニマルファブの製造装置はミニマル規格で幅294ミリと決められており、装置を1列に並べても1台最低300ミリピッチで設置でき、10台連結配置しても長さは3メートルで済むことになる。

このミニマルファブ構想は、産総研コンソーシアムの呼びかけで設立された「ファブシステム研究会」(原史朗代表)が進めている。半導体の製造を多品種少量でも利益が出ることを基点にしており、ものづくり立国としての日本の国家的使命を担っているともいえる。ファブシステム研究会には9月25日現在、100社の企業、9大学、3特許事務所、5公的機関が会員となっており、その後も入会が増えている。

12月3日から開催された展示会「SEMICON Japan」の会場では、大規模なミニマルファブブースを設け、約65台のミニマルファブ装置を展示。洗浄装置、露光装置、レジスト塗布、現像装置、CVD装置、密閉型搬送システムなど、半導体製造の工程ごとにこれらのミニマルファブ装置が稼働して、構想内容をアピールした。

ミニマルファブが実現することで、半導体の国内製造、国内雇用、国内販売といった国益につながるとともに、グローバル市場でも、各国の地域事情にあった普及も見込める。

■25年には年間6.5兆円の新市場
ファブシステム研究会によると、ミニマルファブの実現で2025年には年間6・5兆円の新市場が創出されるとみている。内訳は、医療・ヘルスケア2兆9700億円、新エネルギー1兆8900億円、航空宇宙9100億円、クラウドコンピューティング6600億円、ロボット・鉄道300億円、アミューズメント240億円。

これらに加え、既存の3~5インチウェハを使うデバイス市場のすべてと、6~12インチ市場の約20%を足した6・2兆円のデバイス市場が実現すると予想している。

半導体製造装置は、FA・制御機器にとっても大きな市場規模を有する分野であるが、こうした新しい製造手法が、半導体市場の拡大と競争力向上に繋がることが期待されている。

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