防爆関連機器、重要性高まる 海外工場の立地増で需要が拡大 「防爆ネットワークソリューション」の構築進む

2014年9月17日

石油化学や鉄鋼プラント、食品・薬品・医薬品の製造現場などの爆発危険領域において、工場の安全を図る防爆関連機器の重要性が高まっている。プラントや施設の新設・更新需要、老朽化に伴うリニューアル需要などもあり市場は拡大しているものの、国内に比べ海外で需要が伸びている。新たな防爆機器として、通信インフラの共有化を図れる防爆ネットワークソリューションや、防爆デジタルカメラなどのニーズも広がっている。水素ガスによる爆発事故が増加していることから、水素ガス雰囲気でも使用できる本質安全・耐圧防爆構造のタッチスイッチが発売されるなど、アプリケーションの面でも拡大を見せている。

防爆関連機器は、爆発危険領域の拡大や、設備の老朽化などもあり、市場が拡大している。防爆構造機器は、石油化学プラントやLNG基地、石油・天然ガスなどの備蓄貯蔵場所、塗装工場、製鉄所、火力発電所、トンネル掘削工事現場など、爆発の要因となる電気機械器具を使用する場所において、法律で使用することが義務付けられている。

先日起こった新日鉄住金の名古屋製鉄所の爆発事故では、設備の老朽化に加え、設備の現状を熟知しているベテラン技術者の不足で、日頃の予知保全や補修メンテナンスなどを怠っていた面が指摘されている。最近はこうした、管理・保守を行う熟練者の減少や、外部委託の増加などで、設備の老朽化など状況が完全に把握されていないケースが増えており、爆発事故の原因につながることが多い。

■FA制御機器は90億円市場
防爆関連機器は、大きくFA・制御機器、モーター、照明器具、計測機器に分けられ、このうちFA制御機器の市場規模は90億円前後とみられる。

FA制御での防爆機器は、日本電気制御機器工業会(NECA)がかかわる製品が多く、コントロールボックス、バリアリレー、プログラマブル表示器、リミットスイッチ、各種センサ、回転灯、バーコードリーダ、グリップスイッチ、ソケット、パソコン、ケーブルグランドなどがある。また、防爆エリアにおける通信インフラを確保する「防爆ネットワークソリューション」の構築も進んでいる。防爆IP機器には、無線LANアクセスポイント、コントロールボックス、プログラマブル表示器、タッチパネル/モニタ、Webカメラ、コンセント、ブザーなどが挙げられ、今後も拡充が進むものと予想される。

爆発危険現場の点検や、事故後の検証などに防爆デジタルカメラの需要が高まっている。こうした場所で音声を交えた撮影を行うことで、予知保全と原因究明の効果を見込める。このほど日本防爆検定に合格したデジタルカメラも発売され、消防署などから引き合いが出始めている。

■注目される「DART」技術
新しい電気防爆技術として欧州から提案されている「DART」は、断線した際に発生する電流値の変化を、数マイクロ秒レベルで検知し、電源を5マイクロ秒で遮断、スパークが誘引されて爆発が起きないように防御する技術として、注目されている。これまで大容量の電源が必要な機器を、危険場所で使用するには制約が多かったが、DART技術を応用した製品はこうした制約が解消されるほか、接続できる機器数の増加やケーブルを長くできるなどの利点が生まれる。

防爆には様々な規格がある。厚生労働省は防爆構造規格に関して、2010年に「防爆性能基準」と「型式取り扱い」を通達。1988年以来、IEC規格基準として「技術的基準」があったが、同省の10年の通達に伴い廃止され、「国際防爆指針」に適合するものが防爆構造規格に適合するとして扱われるようになった。

■国際防爆指針の検定増やす
この通達により、防爆機器メーカーでは市場のグローバル化に対応するため、国際防爆指針の検定を増やす傾向にある。この動きに呼応し、12年6月には欧州防爆指令(ATEX指令)に適合した耐圧・安全増防爆構造のコントロールボックスなどが発売されている。

防爆構造基準に関しては、「電気機械器具防爆構造規格」と「国際規格(IEC規格)」の2つの体系が実質的に存在している。10年の通達では防爆構造規格は1つとされているが、規定の規格に適合しない電気機械器具についても、IEC規格準拠のものは適合すると見なしている。

最近では、海外での防爆機器の増加と、国内から輸出される防爆機器が増加していることから、防爆国際規格IEC―Ex、欧州防爆指令ATEX、北米規格UL/cULの各認証を取得した防爆LED照明も発売され、防爆機器の分野でも、海外の防爆規格を取得する動きが加速している。

■危険場所の区分義務付け
一方、国内では防爆関連機器を必要とする危険箇所について、08年に労働安全衛生法で「爆発のある濃度に達するおそれに」という文言が追加された。これに伴い、大規模な工場から半導体製造工場、燃料電池関連などの事業所、ガソリンスタンド、LNG・LPG充填所、塗装作業所、有機溶剤の取扱所まで、危険物や可燃性物質、高圧ガスなどを取り扱う様々な事業所が法改正の対象となり、防爆関連機器の需要拡大につながっている。さらに、危険場所の区分が法的にも義務付けられ、既存のプラントも法改正の影響を受けることになった。

このような危険個所では、爆発事故などを防ぐため電子・電気機器を隔離しなければならない。危険箇所では石油などは常温でも気化し、その蒸気や温度によってはスイッチなどの開閉に伴う微小の電気火花や、静電気による火花で引火や爆発する恐れがある。高圧ガスの製造事業所での爆発事故も増加しており、こうした観点からも防爆製品に対するニーズが高まっている。
3品業界でも採用活発化

半導体製造関連分野や有機溶剤を取り扱う自動車塗装関連分野などでは、本質安全防爆機器の採用が広がっており、食品・医薬・化粧品の3品業界でも安全確保の観点から防爆関連機器採用の動きが活発化している。

防爆に関しては、危険場所を分類する決まりがある。分類の目的は、危険性の度合い及び防爆電気設備の経済性などを考慮し、適正な選定を行うためである。分類内容は、可燃性ガス、蒸気の放出・漏洩の頻度、爆発性雰囲気の存在時間により、次の3つに分類される。0種場所=爆発性雰囲気が連続して存在するか、長時間存在する場所。1種場所=爆発性雰囲気が正常状態で存在する場所。2種場所=爆発性雰囲気が正常状態で存在することはないが、そのほかの状態で存在しても短時間しか存在しない場所。

■防爆構造の種類
防爆構造の種類については、「耐圧防爆」「内圧防爆」「油入防爆」「安全増防爆」「本質安全防爆」「粉充填防爆」「樹脂充填防爆」「特殊防爆」などがある。

「耐圧防爆構造」は、防爆性能を備えた容器の中に着火源となる電気機器を入れることで、容器内部で爆発が生じても容器の外部に爆発が及ばないようにした構造。内部爆発に十分耐える強度を持ち、容器の接合面の隙間から通じて火炎が外部へ着火しないことが要求される。容器が性能を満たすものであれば、内蔵する電気機器には制約はない。照明器具などの場合は、容器の一部にガラスなどを使用する。

「内圧防爆構造」は、容器の内部に空気、窒素などの不燃性ガスを加圧して満たし、容器外部の可燃性ガス・蒸気を着火源から隔離する方法。保護ガスの内部圧力に耐えること、保護ガスの漏洩が少ないこと、内圧低下時の保護装置を備えていることが要求される。内蔵する電気機器に制約はないが、保護ガスの供給設備、保護装置が必要で、小型の電気機器には経済的に適していない。

「油入防爆構造」は、着火源となりうる部分を絶縁油に浸すことで、着火源を可燃性ガス・蒸気から隔離する方法。絶縁油が外部からの塵埃、湿気などにより汚損されないように全閉構造であることが要求される。油を使用していることから、メンテナンスが難しく変圧器などの用途以外はあまり使用されない。

「安全増防爆構造」は、正常時の運転・動作時は、着火源として作用しない電気機器のみに適用する防爆構造。通常は着火源として作用しない電気機器でも、種々の環境で使用し続けると絶縁不良などで、電気火花などの着火源となりうるので、そうした着火源を生じにくいように安全度を増したものをいう。適用対象となる電気機器には制限がある。

「本質安全防爆構造」は、計測・制御・通信・警報などの低圧電気機器にのみ適用され、これらの電気回路で発生する電気火花には着火源として作用しないか、あるいはある限度内で作用しないように抑制される。

「粉体充填防爆構造」は、正常動作時に着火源を有しない電気機器に対し、着火源となりうる部分を石英粉やガラスの粒子などの充填物で完全に覆うことで着火を防止するもの。日本では法規上認められておらず、特殊防爆構造として扱われる。

「樹脂充填防爆構造」は、着火源となりうる部分を絶縁性のコンパウンドで包み込み、ガス・蒸気と隔離したもの。この防爆構造も日本では法規上認められておらず、特殊防爆構造として扱われる。

「特殊防爆構造」は、特定の防爆構造によらず、可燃性ガス・蒸気に対して防爆性能を有することが試験などで確認された構造。

「バリアリレー」は本質安全防爆構造の一種のリレー中継装置。爆発危険箇所にあるリミットスイッチや押しボタンスイッチなどのON/OFF信号を、非危険場所へ中継させる。爆発性ガス雰囲気の中で、汎用のリミットスイッチや押しボタンスイッチが使えるとともに、危険場所に配線する本質安全回路の断線・短絡・地絡や、非本質安全防爆回路のトラブルの波及など、あらゆるトラブルが生じても安全性を確保する。光電スイッチやブザー、ランプが使えるバリアもある。
国内防爆検定取得と機械安全規格認証を受け、防爆安全と機械安全両方を満たした「防爆機械安全」というセーフティリレーバリアも発売されている。

■NECAが啓発活動推進
防爆関連機器の啓発・普及活動として、NECAが防爆電気機器の点検や保守の促進、啓発を目的とした「防爆安全ガイドブック」の制作、防爆電気機器の安全資格である「セーフティベーシックアセッサ」(SBA―Ex)の認証制度の運用などを行っている。

SBA―Exは、設備・安全管理、製造、点検・保守など、事業所の設備安全にかかわる全ての職種に適する資格で、防爆電気設備の設備管理、安全管理に最適である。正しい防爆知識により、的確なパトロールや点検・保守が可能で、資格を取得すれば保守担当以外の職種にも防爆安全知識の浸透が図れる。

最近、爆発要因が多様化傾向を見せており、ガス爆発のほか、空気中に漂った小麦粉や砂糖などの粉塵で起こる粉塵爆発や、二つの物質を混ぜ合わせた際の衝撃で起こる混合爆発、高温の金属と水が接触し水が水素と酸素に分解、その水素に点火し爆発を起こす水蒸気爆発なども警戒されている。水素燃料電池の普及により水素ガスの爆発事故も指摘されており、爆発事故を取り巻く環境は一層複雑化傾向を見せている。

このところ国内での工場立地が減少し、海外での立地が増加している。これは爆発の危険が伴う工場も同様で、既存設備を利用しながら生産を継続させる方向が強く、より危険性が高まることになる。防爆対策をしっかりと行うことで、爆発の危険性を低減するための対策強化が求められている。