エネルギーの効率的利用と生産性向上を両立三菱のFAエネルギーソリューションe&eco‐F@ctoryにみる

1,まえがき

東日本大震災を発端とした一昨年の電力供給危機では、産業界も含め全国民による緊急避難的な我慢の省エネを強いられた。現在も、火力の増強を中心として一定量の発電量は確保しているが、予断を許さない状況が続いており、電力使用量の抑制が社会的課題となっている。

また、発電コストのかかる火力の増加や太陽光発電等の再生可能エネルギーの全量買取制度により企業向け電力料金が15%程度値上げされる傾向であり、グローバルでの競争激化に直面している日本の産業界にとって消費電力量削減は必須事項となっている。

三菱電機は、上記の課題に対応するため、インバーターや省エネモータ等の省エネ機器や電力見える化のための電力計測器を提供。更に、生産現場と情報システムとの連携によるエネルギーの効率的な利用と生産性向上の両立を実現する三菱FAエネルギーソリューションe&eco‐F@ctoryを提唱している。e&eco‐F@ctoryは、生産現場のきめ細かい情報とエネルギー情報を紐付けて管理し、生産時のエネルギーのムダを発見・改善することで工場のTCO(Total Cost of Ownership)を削減する。

工場の電力削減の一般的手段としては、省エネ機器の導入や、空調・照明などのユーティリティー系の運用改善が中心であった。しかし、更なるエネルギー削減のためには、工場のエネルギー消費の約半分を占める生産設備での省エネが必要である。従来からも、生産現場では設備稼働率改善等による生産性向上や製品品質の維持向上活動が実施されてきたが、エネルギー使用量の観点を加味することで、エネルギー削減が実現することを図1に示す。例えば、生産設備のチョコ停改善は、チョコ停中の無駄な電力削減に貢献する。また、不良品をなくすことで、不良品生産時に要した無駄な電力発生を削減したことになる。

e&eco‐F@ctoryは、生産設備の稼働情報や品質情報に加え、設備毎の電力使用量を簡単に「見える化」することで、無駄を発見し、改善することで生産性・品質・省エネを実現する。

e&eco‐F@ctoryの概念を図2に示す。生産設備の動作シーケンスを制御し生産設備の頭脳となるシーケンサや各種デバイス・センサ等のFA製品はFAネットワークCC‐Linkなどによって接続され、生産実績・品質情報や設備ごとの電力使用量などの様々な現場情報が人手を介さず自動で収集される。

また、シーケンサとデータベースとを直接連携させるMESインタフェースは、生産設備と情報システムをパソコンなどの通信ゲートウェイなしで直接情報連携する。これによって、簡単かつ低コストで生産現場と情報システムとの情報連携を実現する。

(1)原単位管理による無駄電力の発見

生産情報とエネルギー情報を結びつけて省エネ改善につなげるには、リアルタイムに設備・装置の生産原単位の監視を行うことが重要である。生産原単位とは、製品1個を生産するために消費したエネルギーである。

図3は、1時間毎の原単位と設備稼働履歴を示す画面例である。原単位を指標とすることで、電力使用量の監視だけでは分からないエネルギー消費効率の悪化を発見することができる。更に、設備稼働履歴と紐付けることで、悪化原因が容易に判明、その発生原因を改善することで、エネルギーの消費効率の向上を図り、省エネに結びつけることが可能となった。

(2)チョコ停改善による生産性向上

チョコ停改善による設備稼働率向上と省エネを実現した事例を図4に示す。

従来、チョコ停は現場で対応していたため、課題の「見える化」は難しかったが、シーケンサから自動的に情報システムに蓄積することで、その要因と回数が簡単に把握できるようになった。発生停止原因を改善することで、設備稼働率が向上。更に、設備停止中に浪費していた無駄な電力を削減できた事例である。

(3)ラインのサイクルタイム改善事例

生産ラインは、複数の設備で構成されているため、すべての設備が同じサイクルタイムで稼働する場合に、最も効率的な生産が可能である。しかし、設備の一つでもサイクルタイムが長いと、その設備がネックとなり、ライン全体のサイクルタイムを悪化させる。

生産工程ごとに生産原単位とサイクルタイムを「見える化」した例を図5に示す。生産品種変更等に伴って工程(5)の原単位(折線グラフ)が悪化した例であり、エネルギー消費の観点から注目されるポイントである。生産情報として、サイクルタイム(棒グラフ)を重ね合わせると、工程(5)のサイクルタイムが大きくなり、生産ライン全体のバランスを乱していることが分かる。この場合、工程(5)の設備改善によってサイクルタイムを短縮したことで、生産ライン全体の生産性12%向上に加え、全体のエネルギー消費量を8%削減した。

4,おわりに

e&eco‐F@ctoryが目指す生産性向上と省エネルギーの同時実現のためには、生産・エネルギー使用の改善点の発見が不可欠であり、様々な生産現場情報とエネルギー情報を紐付けて管理する必要がある。

紹介事例では、生産現場での改善事例を紹介したが、生産現場と情報システムを簡単に連携することができるe&eco‐F@ctoryは、生産情報を管理するMES(Manufacturing Execution System)やエネルギー情報を管理するEMS(Energy Mnagement System)、更には、企業の基幹システムであるERP(Enteprise Resource Planning)との連携も実現可能であり、現場から経営層それぞれに適した活用が可能となった。
(筆者=三菱電機株式会社)

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