照光式スイッチ上昇基調 生産のグローバル化急速 省スペース・視認性に優れる 工作機械、アミューズメント機器向け牽引 使い易さ向上、光源も多様化 有機ELの動向に注目 LED化進展、薄型化に拍車

照光式スイッチ市場が上昇基調になっている。各種加工機械やパチスロなどのアミューズメント機器向けなどが回復して市場を牽引している。光源のLED化によって、視認性、実装性なども向上して使いやすさが増している。有機ELや液晶など光源の多様化、はんだを使わない配線作業などの新しい動きも見られ、市場に活気をもたらしている。
照光式スイッチは、操作と表示を一体で使用できることからスペース性に優れ、視認面でも大きなメリットがある。

操作用スイッチの3分の1

日本電気制御機器工業会(NECA)の出荷統計によると、2011年度の照光式を含む操作用スイッチの出荷額は349億円で前年度比98%と横ばいとなっている。11年度は大震災によるサプライチェーンのトラブル、中国、欧州市場の停滞、円高の進展など取り巻く環境は全体に厳しかったが、各種加工機械やパチスロ向けなど内需が旺盛に推移したことで、減少幅を抑えた。特に操作用スイッチの約3分の1近くを占める照光式スイッチは、存在感を高め比率が上昇している。工作機械、パチスロなど照光式スイッチが多く使用されている市場が伸びたことが使用比率の上昇につながった。

NECAでは、12年度の操作用スイッチの出荷見通しを370億円(前年度比7・2%増)と全体品目の中で最も高い伸びに設定している。11年度好調であった市場に加え、国内では震災復興関連、新エネルギー関連、海外では新興国市場での拡大を見込んでいるものと思われる。

照光式スイッチの主要市場は、開閉制御装置・開閉機器、工作機械、食品機械、運搬機械、半導体製造装置、アミューズメント機器、ロボット、計測機器、事務機器などが主要なものとして挙げられる。このうち、工作機械向けは大きな市場だ。工作機械はリーマンショックによって出荷が大きく落ち込んでいたが、ここ3年間は再び増加基調に転じている。12年上期は3年ぶりのマイナスとなっているが、全体基調は依然堅く、下期以降の上昇が見込まれている。

照光式スイッチの主要市場である半導体・液晶製造装置は、ここ数年拡大基調であったが、11年後半からの足踏み状態が続いている。アミューズメント市場もここ1~2年低迷が続いていたが、パチスロ機を中心に需要が増加に転じており、久しぶりに活況を呈している。規制の緩和や新機種の登場、大震災のプラス効果など種々の要因が絡んで、しばらく期待分野として市場をけん引するものと見られる。

エネルギー関連に期待

大震災以降のエネルギー問題や節電対策から急速に市場としての期待が高まっているのが、スマートグリッドや再生可能エネルギー関連である。太陽光発電や風力などの新エネルギー関連は、電力変換用のパワーコンディショナーや受配電機器などで照光式スイッチが多く使用される。EV(電気自動車)などの普及で充電スタンドが家庭や事業所などに普及すると非常に大きな数量になる。原発事故に伴い再生可能エネルギーへの関心が急速に高まっており、官民での取り組みが強まっているメガソーラーなどの展開によっては照光式スイッチの需要構造にも好影響が期待されている。

さらに、省エネ・節電に絡んでビルのリニューアル化や、社会インフラの整備で照光式スイッチ市場への追い風も見込まれている。

鉄道車両や鉄道制御システムといった鉄道インフラ関連向けも、照光式スイッチをはじめとした操作用スイッチの需要を支えている。鉄道車両のドアや運転席周り、車内情報表示系統、券売機、自動改札、プラットフォームなど多岐にわたる。最近の鉄道車両は、単に人を乗せるだけでなく、快適な乗り心地の追求、車内での情報収集や仕事場としても活用できるような仕掛けを進めている。例えば運転席では、運転に関する情報が集中して表示されるが、照光式スイッチやタッチパネル表示器が大きな役割を果たしている。ドアや座席にも照光式スイッチがついており、ドア開閉や座席管理などで視認性を高めている。鉄道車両のスイッチは、信頼性に加えデザイン性、操作性などがポイントとなっている。車両にマッチしながらも、誰が操作しても確実に機能を果たすスイッチが選択の基準として重視されている。

魅力ある放送・映像機器分野

放送・映像・通信関連機器向けも照光式スイッチにとって魅力ある大きな市場といえる。特に、放送・映像機器は、頻繁な操作が行われることから操作性が非常に重視される。機器に応じた最適な操作性を実現するためにスイッチメーカー各社は、技術アピールできる分野の一つとして注力している。照光式スイッチに求められる操作感触、視認性、耐久性など、あらゆるニーズが集約されていることで、スイッチメーカーにとって技術研さんにもつながり、この分野向けを意識した開発を積極的に行っている。
各種の色を高輝度に照光

照光式スイッチの光源には、白熱球、LED、ネオン球のほか、最近はLCDや有機ELなども使われてきているが、現在の主流はLEDとなっている。LEDは各種の色が高輝度に照光できることで急速に採用が増えた。これに本来の特徴である長寿命、低消費電力、低発熱、省メンテナンスなどが加わり、白熱球などから急速に置き換えが進んできた。このところの省エネ・節電対応の高まりもあり、すべての光源がLEDに置き換えられる勢いを見せている。

光源のLED化は、スイッチの薄型化にも大きな影響を与えている。白熱球光源に比べ小型であることで実装スペースを大幅に削減でき、照光式スイッチの薄型化を飛躍的に進めた。現在スイッチ各社は、こうした薄型の照光式スイッチをラインアップに加えている。

ベゼルの高さが2ミリ前後の薄型・フラット構造は、パネル全体がシャープで引き締まったデザインになり、凹凸の少ない操作パネル面は食品機械や半導体製造装置で求められるゴミや埃の付着を防ぐことになる。操作スイッチの表面突起が低いことで、誤操作などを防ぐ利点もある。デザインだけでなく、スイッチ装着の安全対策や配線作業の省力化と誤作業防止の工夫もなされており、一層使いやすさをアピールしている。

表面だけでなくパネル奥行きも短胴化が進展しており、制御盤の小型化・薄型化にもつながっている。
表示色もカラフルに

光源のLED化は照光式スイッチの表示色のカラフル化につながっているが、単色のLEDでも表示プレートへの加工で赤と緑を切り替えた表示が可能になるスイッチも発売されている。

LED光源が主流の中で、新しい光源として市場で注目されているのが有機ELである。有機ELを光源に、表示部に画像やメッセージなどを表示させ、しかも1つの表示面で何種類にも切り替えて表示できることにより、限られたスペースで多様な情報を提供するスイッチとして使える。有機ELの持つきめ細かな表示は、テレビのような表示画面を実現でき、通信機能を搭載することで、画面の変更なども容易に行えるなど新たな発想は、今後のスイッチ市場の動向として注目される。有機ELは照明機器への展開なども志向しており、生産量が拡大すれば、コスト面でも優位性を発揮することにつながりそうだ。

また、ユニークなスイッチとしてバッテリーレスでワイヤレスのスイッチも発売されている。押しボタンを押した時の力を電気エネルギーに変換し、無線信号を制御盤内の受信機に送る遠隔制御の仕組みで、省エネで配線作業が不要など時代のトレンドにマッチしたスイッチとして市場への浸透が進みつつある。
配線時のはんだ作業なくす

一方、操作用スイッチの配線でも新しい方法が出てきた。配線時のはんだ作業をなくして、環境負荷低減と配線作業の短縮を実現できるもの。スイッチのユニット部分の端子ホルダー穴に電線を挿入し、平行プライヤーで端子を圧接するだけで結線ができるもの。配線時に、はんだやそのための電気が不要で、配線時に被覆廃棄物も発生しないなど、環境に優しい結線が可能になる。電線被覆を剥かないため、配線作業時間を半減化できる。しかも、はんだ不使用のため、はんだポールおよび、ひげショートなどの発生の心配もなく、はんだ状態の認定作業員も不要になるなどの特徴を有している。

照光式スイッチを含めた操作用スイッチは、プログラマブル表示器やタッチパネルとの市場での棲み分けへの関心が、スイッチメーカー、ユーザーで高まっている。それぞれに特徴があり、選択権はエンドユーザーやセットメーカーに委ねられるものの、使用場所によっては照光式スイッチが優位性を発揮するところも多い。わかりやすい操作性(誤操作などの防止)、水や埃、薬品などの耐環境性、堅牢性などでは照光式スイッチの特徴を生かしやすいといえる。

照光式スイッチなど操作用スイッチ市場は生産のグローバル化が著しい。進展する円高で外需向けは競争力が低下しつつあり、加えて海外メーカーは逆にこれを追い風に攻勢を強めている。このためスイッチメーカー各社では、品ぞろえの見直し、アライアンスの強化、生産拠点の再編などで競争力を維持する取り組みを強めている。

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