制御盤製作の省コスト化へ提言 日本配電制御システム工業会が技術セミナー 配電制御システム 接続方式の違いによる制御配線の工数測定検証実験の概要と結果

工業会では、昨年度から制御盤製作(ハード)省コスト化の研究をスタートさせている。今回はネジレス(スプリング)接続端子台が制御盤組立作業において実際に効果が上がるかどうかを確認するために、電線接続作業の工数測定検証実験を行った結果の報告である。引き続きコネクター接続方式も含めた研究を重ね、来年中に盤ハードの合理化に関する一次報告書をまとめ、最終報告へステップを進める計画である。
□検証実験の
概要□

・ネジアップ式端子台はY形端子、ネジレス端子台はフェルール端子と被覆ストリップのみの素線を用い、チューブはフラットタイプを使用。電線サイズはKIV0・5〓とKIV1・25〓の2種類で行う。
【実験】

(1)電線サイズ2種類と接続方式3種類の組み合わせ6パターンについて予め決められた作業手順で端子台1カ所につき電線1本を接続する作業を計20本行う。電線カットから端子台接続までの作業時間を計測する。

(2)ネジ式端子台はネジアップ式を使用したが、セルフアップ式も数多く存在するため、ネジアップ式とセルフアップ式の作業時間を比較できるように測定を行う。Y形端子と丸形端子の接続方式で端子台1カ所につき電線1本を接続する作業を計20本分実施。作業開始から完了までの時間を記録する。
【場所と日時、
進め方】

▽2011年7月12日午前10時~午後5時。広沢電機工業。

▽実務経験6年の熟練者と2年の非熟練者の2名が配線作業し、JSIA委員が作業時間を計測し記録する。
【作業手順】

(1)ネジアップ式端子台(Y形圧着端子)=マークチューブ取り付けと被覆剥ぎ↓Y形圧着端子を圧着↓電線を端子台に挿入↓電動ドライバーでネジ締め。

(2)ネジレス端子台(フェルール端子)=マークチューブ取り付けと被覆剥ぎ↓フェルール端子を圧着↓ドライバーと電線を端子台穴に挿入↓ドライバーを引き抜く。

(3)ネジレス端子台(素線)=マークチューブ取り付けと被覆剥ぎ↓ドライバーと電線を端子台穴に挿入↓ドライバーを引き抜く。

(4)セルフアップ式端子台(丸形・Y形圧着端子)=マークチューブ取り付けと被覆剥ぎ↓(丸形・Y形)圧着端子を圧着↓電動ドライバーでネジを緩める↓電線を端子台に挿入↓電動ドライバーでネジ締め。
【実験結果】

◆その1◆

方式は(1)ネジアップ式+Y形端子(2)ネジレス式+フェルール端子(3)ネジレス式+素線。電線KIV0・5〓、KIV1・25〓。

▽結果=・電線サイズの太い方が作業性は良いが大差はない。
・(2)方式は(1)方式との大きな差はない。
・(3)方式は従来の(1)方式より作業時間が短い。
・(3)方式の作業結果は作業者の熟練度や技能などの個人差によらない。
・(3)方式の非熟練者の場合は作業時間のバラツキが大きい。

◆その2◆

方式は(1)セルフアップ式+丸形端子(2)セルフアップ式+Y形端子(3)ネジアップ式+Y形端子(4)ネジレス式+フェルール端子(5)ネジレス式+素線。電線はKIV1・25〓。

▽結果=・(1)方式を(3)方式と比較すると、熟練者では対(3)方式比で+15%、非熟練者で対(3)方式比で+22%工数が増える。
・同じY形端子の(2)方式と(3)方式で比較すると、熟練者で対(3)方式比で+1・3%、非熟練者で対(3)方式比で+4・6%工数が増える。
・(1)方式から(5)方式へ転換すると、31~52%の工数低減が期待できる。
・(2)方式から(5)方式へ転換すると、22~45%の工数低減が期待できる。
・(3)方式から(5)方式へ転換すると、21~42%の工数低減が期待できる。
【ネジレス端子台+
素線接続の課題】

(委員による作業者へのインタビュー)=途中で素線がバラけることがあり配線に手間取った。原因は(1)被覆剥離した電線端をダクトのスリットへ通すとき、芯線がダクト壁や回りの電線にぶつかる(2)電線端を端子台電線挿入口へ接続するとき、その方向へ電線を曲げる動作(3)フラットチューブが幅広のため近くの接続済み電線に接触する。解決は(1)と(2)はダクトのスリット形状の仕様を変更する。(3)は今後の課題である。
【まとめ】

▽接続方式の違いによる制御配線の工数測定検証の成果=(1)ネジレス端子台の配線合理化効果は、素線を差し込む方式でないと生まれない。

(2)伝統的な一般方式のセルフアップ式端子台が、ネジレス端子台の素線接続方式に移行できれば、丸形圧着端子の接続方式に対して31~52%、Y形圧着端子の接続方式に対して22~45%の工数低減が期待できる。

(3)現在オーソドックスと思われるネジアップ式端子台にY形端子の電線を接続する方式に対しても、ネジレス端子台の接続方式に移行できれば、非熟練者で42%、熟練者でも21%の工数低減が期待できる。

(4)ネジレス端子台のメリットは、作業工数の低減とともに、作業者のスキルに依存しないという利点や、ネジ締めのトルク管理不要、盤設置後の増し締め作業が不要になるなどエンドユーザーのメンテナンスコストの低減効果も大きい。

▽ネジレス(スプリング)端子台接続方式の課題=(1)現時点での端子台1極当たりの製品単価は、ネジ式端子台と比べ割高である。

(2)接続電線の素線バラけ対策として、フェルール端子を使用すると省工数効果が薄れてしまう。

(3)ネジレス端子台の電線端末に円形状のマークチューブを使用すると、脱落やズレ落ちることがある。

(4)端子台1つの穴に対して原則電線1本なので渡り配線回路に工夫が必要なこと。

(5)ネジレス(スプリング)端子台を含む接続端子に関する最新の規格(JIS、IEC)情報が国内ユーザーに十分に周知されていない(JSIA注〓2010年に正式発効された端子台規格JISC8201―7―1がIEC規格に整合)。

(6)工作機械や包装機械など機械分野や鉄道交通分野では、ネジレス(スプリング)端子台が使われているが、国内の建物向け電気設備にはほとんど普及していないこと。

(7)制御盤に関する規格化を進めても、外線ケーブル工事を行う電気工事業界への浸透策がいる。(JSIA注〓盤内外分界点における適用規格、基準の明確な分離が課題)。

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