混沌時代の販売情報力 相手に質問する勇気も必要

世界には多くの民族が住んでいる。民族研究者によれば、5000とも1万ともいわれる民族が生活している。他民族と多くの相違点を感じる民族意識は、争いの原因にもなる。多くの国、特に大国は複数の民族によって構成されているが、日本は単一民族の国だから他国と比べるとお互いに分かり合える国だと言われてきた。単一民族と言われる日本も、大陸の各方面から渡ってきた民族の混血である。

一般的にわれわれの知っている古代の日本列島には、1万年以上前からシベリアや南方の東南アジアから渡ってきた縄文人といわれる人々が住みついた。文化的に大きな変化をもたらしたのは、二千数百年から大陸の文化をもって次々と渡ってきた集団の存在だった。

集団が移動する当時の大きな原因には2つある。人口が増えて他所へ移動しないと食えなくなるという食料的事情か、集団内の政治的理由によるものである。これらの理由によって原住地を押し出された人達や好奇心と野望に燃えて、もっと良い土地へ思いを馳せて移動してきた人々が辿りついたのが日本列島だったのだろう。日本列島の先は、太平洋であり移動したくても何もない大海原である。

古代アジア大陸から移動してきた人々の最後の避難所となったが、意外と楽園だった。国土面積は小さいが、温暖豊潤な土地だったので面積の割には多くの人々を受け入れた。古代では、食料が採れるかどうかで人口の多寡は決まる。今でも面積の割には、日本は人口大国であるが古代でも人口大国であった。日本列島は、食料が豊かだったからだ。古代の大陸では集団の移動は、他の集団を征服するという形をとるか、征服されるのが嫌なら逃げて他の土地に行くという形をとる。
しかし、日本列島に移動してきた高い技術文化をもった集団が縄文以来土着した原住民を征服することもなく、また縄文以来の土着集団が逃げていったわけでもなかった。土着集団も後からやってきた渡来集団も、次に押し出されて移動する所は海しかないことを知っていたし、温暖豊潤な気候土地柄だから開墾という力仕事をすれば、集団が住みつく所は見つかることも知った。

その上、列島に来るまでに海が障壁になっていた。大集団で一気に渡来することはできなかったから小集団で逐次の移動になった。以上のように総合的な理由によって、高い技術文化をもって移動してきた集団も縄文以来の人口大国であった土着集団を征服するという形はとらなかった。どちらが負けても、その先は海しかなかったから我慢して話し合いを重ね共生した。やがて長い時間をかけて、原住民と逐次渡来集団は混血を繰り返し同化してきた。そして日本民族という単一の民族意識ができあがった。古来より争い事を好まず、争って事を決着するより話し合いで決着してきた大きな理由は、以上のような民族意識形成の過程の中にあった。

何事も話し合いを優先してきたために、他国のように絶対規範の意識は薄い。だから、してはいけないという方法より、したら恥になるという文化が根底にある。また、長い間我慢をして話し合いで事を決着してきた「話し合い至上主義」からは以心伝心という言葉が生まれた。

余計な事を聞けば波風を立てる。余計な事を聞いて恥をかいてはいけないという日本人の意識は、聞いてみようという気持ちをためらわせる。しかし、言葉は戦いである。だから販売員は日頃、わかったつもりになっている事実であっても、こんな事を聞いたら格好悪い、嫌われると思わず、「勇気をもって質問すべし」という質問の心得が重要になる。
(次回は9月14日掲載)

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