混沌時代の反ビア情報力黒川想介 事例集を活用し、顧客情報を聞き出す

2010年10月13日

制御部品やコンポーネントの販売員に、担当顧客が何を作っているかと問えば、殆どの販売員は答えてくれる。しかし、詳しく聞こうとしても顧客のホームページに載っている内容程度のことしか聞けない。更に顧客の製品はどのようにして作られているかと問えば、殆ど自信のない答えが返ってくる。

工場内に入れない昨今、当然のように思っているが、制御部品やコンポーネント営業にとって、顧客情報の多さが有利な販売につながっていくのは今も昔も変わりない。

1980年代前半くらいまでは、工場内に販売員が入れた。工場の現場に、生産技術者や装置設計技術者がいる事務室があった。販売員は、製造工程に並ぶ装置や機械類の横を通り抜けて技術者のいる事務所に会いに行った。

目の当たりにする製造装置や目に飛び込んでくる人の動きを販売員は見て、物づくりという販売とは別の世界に興味を覚えた。興味を覚えれば、質問もしたくなる。返ってくる答えを聞いて、どうやって製品は作られるのかということを自然に学んだ。いろいろな物づくりの現場に出入りして、装置類、機械類や人の動きを見ていたから全体的・連続的な物づくりの風景として目に入り、疑問点や不思議な点があると、気軽に質問していた。

こうした学び方は、机上で学ぶことと違い製造工程に関する知識を習得するだけでなく、販売員にとってはもっとも大事な能力のひとつである想像力を鍛えていたのである。現在では、販売員が製造現場にふらりと入ることはなかなかできない。その代わりに、現在は80年代とは違って情報化の時代である。

工場内のことや製造製品のことは、インターネットで分かるし、各種の図書や雑誌で調べれば詳しく分かる。しかし、販売員の多くは机上での学習や調査はあまり得意ではない。だから、机上での学習や情報収集を得意とする企画や業務といったスタッフにまかせることになる。企画や業務等のスタッフは机上で得た情報を検証するためにも、販売員から得た情報を引用する。そして、販売員に役立つツールをつくってくれる。電気部品や、制御コンポーネントのアプリケーション事例集などがそのひとつである。大雑把で一般に知られているものから、製品や装置や機器類を分類するように作りあげたマニアックなものまで雑多である。

せっかく作ってくれたアプリケーション事例集を技術者に提供して、該当部品やコンポーネントが使われているかどうかの反応を見るだけでは、商品カタログを提供して売り込んでいるのと同じ扱いになってしまう。工場にふらりと入れない現在の営業活動では、アプリケーション事例集はいろいろな情報を得るためのツールとして使わなければ宝の持ち腐れとなる。

ところで顧客からいろいろな情報を収集するには、顧客と会話する必要がある。顧客と主体的会話を進めていくには、質問をしなければならない。

質問も、その目的によって幾つかの種類に分けられる。

まず一つ目は、具体的な情報を求める質問である。販売員は売り上げのあがる情報は何かないかと狙っている。現状は、どんな案件を顧客はかかえているかを知ろうとする。販売員の扱う商品を使うテーマはないか、どんな部品が使われるか。すでに使われている部品やコンポーネントは、どこのメーカーが多いのか、などのように直接的な質問が多くなる。

しかし、もっと効果的な情報を求めるには、例えば与えられた事例集を活用して、売り上げには直接的関係がなくとも顧客のもっている事実を聞き出すことなのである。
(次回は10月27日掲載)