2010年ものづくり白書「主要製造業の課題と展望」⑩分析機器産業迅速な新製品投入が必須

1、現状

分析機器は、物質固有の組成、性質、構造、状態などを計測するための機械器具・装置で、科学研究、材料開発、品質管理、環境計測など、製造業からサービス業に至るまで広範な分野で用いられている。最近では医療や食品検査など、安全・安心な社会を維持するためにも活用されている。1機種当たりの年間生産台数は、特殊かつ高価な機器で数台、多くても液体クロマトグラフなどの数千台であり、分析機器産業は多品種少量生産型である。

国内生産額は、2008年度の秋以降、世界的な景気後退により自動車、半導体等主要産業の多くが減速し、特定の産業分野の動きに左右されにくい分析機器業界においてもその影響が出ている状況である。08年度生産額は対前年同期比で95・4%と7年ぶりに前年比を割った。また、09年度第3四半期までの生産額は2384億円であり、前年比76・3%であった。しかし09年秋以降、半導体産業等で、一部受注の回復が見られていることから、来年度に向けて生産額は徐々に回復していくことが期待される。

我が国を含む世界の有力分析機器メーカーとして、サーモフィッシャー・サイエンティフィック(米)、日立ハイテクノロジーズ(日)、アジレントテクノロジー(米)、島津製作所(日)、ベックマン・コールター(米)等があげられる。

現時点では、先進国である日米が有力メーカーとなっているが、昨今の中国、インドを中心とするアジア地域の成長は著しく、技術開発力ではいまだに劣るとしても将来においては、我が国の分析機器産業にとって大きな競争相手となってくると思われる。

2、我が国産業の強みと弱み

(1)強み

我が国分析機器産業は、粒子光学設計のエンジニアリング技術や光学素子の量産技術など得意とするコア技術を持ち、またこれを市場に適応させる応用技術を有している。このため、電子顕微鏡、自動車用排ガス分析装置などの各分野において、世界でも有数の競争力のある製品を持つ企業が存在している。また、装置に対してユーザーニーズに対応したきめ細かな保守サービスも充実している。

一方、バイオ関連分野においては現状では欧米企業が先行しているものの、DNA解析とは様相が異なるポストゲノムの解析で、我が国が競争力を高める可能性を有しており、今後の展開が期待される。

(2)弱み

欧米企業は、機器の性能・機能の技術的競争力だけでなく、分析を行う際の抽出・希釈などの前処理装置、その作業で必要となる試薬、検出したデータの解析処理に用いるソフトウェアのそれぞれに強みを持っており、トータルサービスの提供を可能としている。また、分析機器の校正に必要な標準物質の開発や供給も進んでいる。この傾向は特にバイオ関連用途向けの機器で顕著であり、こうした分野における競争力の強化が我が国の課題である。

3、世界市場の展望

国内市場は、設備投資や研究開発需要が減速傾向に転じ、官公庁・大学市場も低迷したことにより、ほぼ全ての分類において大きく減少したが、半導体分野の回復をはじめとして直近の受注状況は好転の兆しを見せており、10年度には回復基調に転じることが期待される。世界市場は、中国において食品の安全性や環境関連の需要が拡大し、欧米ではバイオテクノロジー、ナノテクノロジーなどの分野で先端技術開発向けを中心にラボ用分析機器の需要が拡大するとともに環境分析、食品安全性、健康管理向けへの簡易かつ極微量分析が可能な分析機器への需要拡大が見込まれる。

4、我が国産業の展望と課題

(1)今後の競争力強化に向けた対応

国内各社は、企業買収や海外生産拠点の確保といった経営体制の強化改善や、分析サービスも含めたいわゆるソリューション事業の展開、海外メーカーへの製品のOEM供給(相手先ブランドによる供給)や技術提携といった企業間連携による競争力強化に向けた取り組みを行っている。

中長期的な取り組みとしては、市場の拡大が期待される分野への迅速な新製品の投入が必須であるため、高感度・高分解能・高速高効率である分析や、抽出・濃縮といった前処理の自動化など、次世代の分析に求められる要素技術の開発を各社が行っている。

(2)東アジアを中心としたグローバル戦略

分析機器は多品種少量生産のものが多く、かつ開発生産には高度な技術力を要することから、クロマトグラフ、分光器など技術的に成熟しコスト競争力が支配的な一部の製品を除けば、開発・製造拠点は国内に留まっている。中国などの東アジア諸国の地場企業が分析機器に参入する事例も、現状ではこうした一部の限定的な分野に限られる。このためアジア市場においても日米欧からの供給が主となっているが、後発国の研究・開発力の伸びは急速であり、我が国の分析機器産業としてもなお一層の企業努力が求められるところである。

中国を始めとするアジア地域における分析機器の需要は、従来の製薬・食品・環境・大学分野に加え、自動車・半導体・石油化学等の分野でも伸びている。インドでは製薬、IT、自動車関連業界の成長が著しい。いずれの地域も近年日系企業の投資が増加しており、それに伴う分析機器の新規需要も増大が見込まれる。しかしながら、分析機器を取り扱える技術者や保守・補修を行うことができる技術者が不足しており、これらの人材をいかに育成していくかが更なる需要拡大に対応するための課題となる。

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