V字回復見せる配線接接続機器市場 半導体・液晶製造装置、電子部品実装関連分野が順調に拡大 端子台 一部では納期遅れの製品も 新エネ、スマートグリッドに期待

配線接続機器市場は、08年の金融危機以降、設備投資抑制の影響を大きく受けていたが、昨年の5月、6月を底に市場は急回復、今年に入ってから第1四半期(4~6月)までV字回復を示している。NECAの接続機器を含めた制御専用機器の出荷統計では、08年度(08年4月~09年3月)1099億円(同12・8%減)、09年度は1025億円(6・8%減)と2期連続で減少していたが、10年度は第1四半期で同46・4%増の310億円となっている。

特に、国内向けの需要回復が大きく国内実績は206億円(同60・8%増)となっており、輸出も103億円(同24・2%増)と増加している。NECAは当初、今年度は同22・0%増の1250億円と予想していたが、第1四半期実績から見ると、この予想数値を上回る勢いである。ただし、第2四半期に入り、輸出は好調に推移しているものの、内需の勢いが幾分弱く感じられる。NECAの統計でも、第1四半期は輸出が10・7%増であったが、国内向けは3・1%しか増加していないことから、下期の動向が注目される。

また、コネクタは、コネクタを手がける大手メーカーがNECA会員外であることから、経済産業省の機械統計の方が実態に近いが、09年度(09年4月~10年3月)では、前期比4・9%減の4172億円となっている。従って、配線接続機器の市場は、端子台で約300億円、コネクタで約4200億円、ケーブルアクセサリー・配線ダクト類で約70億円と推定され、合計で約4500億~4600億円という大きな市場を形成している。

国内の市場別では、大きく回復してきた自動車関連分野が、エコカーポイント制度終了の影響などで一服感が出ている。一方、半導体・液晶製造装置分野は堅調に推移している。デジタル家電を中心とした民生分野は、リーマンショック以降、産業分野ほど打撃は受けておらず、電子部品関連が好調に推移してきたが、これもエコポイント制度の終了後の動向はよく分からない状況になっている。

太陽光発電や風力発電などの新エネルギー発電関連、さらに電力送配電の効率化を狙いとしたスマートグリッド絡みでの新しい需要は、まだ爆発的な伸びは見せていないが、業界が大きく期待する市場に変わりはない。電力や重電分野は、ほかの分野が落ち込んだ昨年も堅調な動きを見せていたが、今年に入ってからは大きな変化はない。

一方、海外での電力投資は依然として活発で、特に中国や東南アジア、中近東、ロシア、さらにインドや南アフリカといった新興国では、電力、天然ガス、鉄鋼関係を中心にプラント設備投資が進んでおり、端子台のほか、モーターや発電機などの需要も増加している。

工作機械関連分野、ロボット関連分野も今年初めから好調な動きを見せていたが、ここ数カ月は伸びが鈍化している。日本工作機械工業会がまとめた7月の受注速報では、前年が悪すぎたため前年同月比は244・8%という驚異的な数字だが、前月比は100・4%にまで下がってきた。

特に、内需は前年同月比201・7%だが前月比は99・5%と100を割り、外需も前年同月比276・1%が前月比100・9%と100ギリギリまで下がってきており、下期の動向が見えにくい状況となっている。

また、納期遅れ問題は現在も解決していない。メーカーが一昨年から昨年にかけ大幅に生産を抑えたことと、急速な需要の回復が納期遅れ問題の発端となったが、配電盤メーカーによると、基板関係の部品不足は慢性化しており、ユーザーから受注を受けてもすぐに出せないケースが多く、困惑しているという。

大手制御機器商社の話によると、制御機器関連では端子台のほかに近接センサやPLC、表示器、電源関連製品の品不足・納期遅れが著しく、「この状況は年内いっぱい続くのではないか」と指摘している。

一方、原材料価格は現在落ち着いた状況で、今年春に一部のメーカーで行われた仕入れ価格への転嫁や製品値上げは、凍結された状況になっている。

製品の特徴では、端子台市場の大きな部分を占める民生機器分野では、プリント基板タイプが多く採用されている。プリント基板対応タイプは、インテリジェント化、薄型化、省スペース化、狭ピッチ化が進んでおり、さらなる伸長が見込まれる。

配線作業の省力化につながる圧着端子とバネを一体化したタイプは、各社独自のノウハウで製品展開を図り定着している。バネ式端子台は、長期間の振動にも強いため(振動によるねじの緩みがない)、公共の輸送・交通設備にも採用されている。また、欧州式の圧着端子を使わないタイプも浸透している。作業性の良さと、安全性などが大きなポイントといえる。国内メーカーでもこのタイプを品ぞろえしており、主流になっている。

リレーバリア、ランプバリアなどのコネクタ接続タイプでは、小型・軽量化が進み、収納ボックスの小型化、コストダウンが図られているほか、防爆構造タイプの製品も伸長している。

現場でのアース工事が不要で、非本質安全端子側の配線は電源2本とコネクタだけのため、配線工数の大幅削減につながる。国内の防爆規格やNK規格、さらに欧州のATEX、米国のFM、カナダのCSAといった海外規格にも対応している。また、各メーカーでは端子台の付加価値を高めるために、各種の新製品を投入している。特に、省配線化ニーズに応え、コネクタ化や複合化(ハイブリッド)などの工夫を行っている。

省配線化は、盤と盤、盤と機器、機器と機器の間をつなぐ上で作業やメンテナンスの工数削減に繋がることからニーズが高い。応用製品として、機器間や設備内の省配線を図る省配線機器・システムや伝送ターミナルなどは、接続以外の付加価値が付けられ、新しい市場を形成している。さらに、配線作業の容易化・省力化の観点からスタッド形端子台の需要が急増している。スタッド形端子台は、配線作業が容易で作業の省力化が図られるとともに配線効率が高いのが特徴である。さらに、挟み込みなどの接続不良を未然に防止できる効果もある。

特に、ネットワークのオープン化が進む中で、こうした省配線機器の登場が大きなポイントとなっている。

最近の新製品では、安全確保と作業の効率化を同時に提案したものとして、圧着端子と端子ねじを正常な位置関係に規制する配線脱落防止機能を備えた端子台が、工事現場などでの配線脱落事故を未然に防ぐものとして注目されている。

そのほか、ハイブリッド端子台として、電子部品などを搭載し付加価値を高めたものも多い。サージアブソーバー素子、リレー、スイッチ、断路器、ヒューズ、LEDなどを搭載したものが一般的で、リレー搭載タイプなどは端子台メーカー以外にリレーメーカーの一部でも扱っている。

また、実配線削減でスペース効率の向上を図るため、リレーやサーキットプロテクタ、ヒューズ、スイッチを中継端子台に搭載し1ユニット化を図ったタイプや、中継端子台が不要な機能搭載型リレーターミナルも登場している。メンテナンス性では、電流容量の区分や回路のグループ分けなどに端子台のカラー化で対応するケースが増えている。

さらに、工数削減の観点では、PLCの旺盛な需要に対応し、既設のPLCに接続されたケーブルを繋ぎ替えることなく、新設のPLCに置き換えることが可能なPLC変換アダプタや、PLC対応の中継コネクタ式端子台も伸長している。PLC変換アダプタは、工数が約5分の1に低減できるというのが特徴となっている。

端子間ピッチ8ミリというスペース効率の向上を図った断路端子台も、各種のプラントで採用されている。前述のLED搭載タイプなども、メンテナンスを容易にするといえる。加えて、過酷な使用条件に対応するため、端子台の材質に耐油・耐薬品性の高いものを採用した製品が伸長している。

端子台市場は、国内メーカー、欧州メーカーに加え、最近は韓国や中国メーカーも参入し、グローバルな販売競争が激化している。中でも欧州メーカーは独自構造をポイントに攻勢を強めて実績を上げている。

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