市場急回復のキャビネット・ボックス、ラック FA制御分野の伸びが顕著 「安全」「安心」「便利」を提供 情報通信分野も引き続き堅調に推移 ますます進む標準品の採用

電気・電子機器の収納を目的とし、屋内や屋外において、外部の環境から内部機器を保護するとともに、内部機器への直接接触に対する保護を行う標準キャビネットの市場は、不景気が続く中でも、工場、事務所などの設備に必要不可欠な製品として堅調な動きを見せている。また、プラスチック製のボックスは、軽くて絶縁性に優れ、錆にも強いので沿岸地域を始めとする特殊環境などでも活用でき、電波を通すので無線アンテナの収納にも適しており需要が伸びている。

システムラックも、情報通信機器、FA・制御機器の収納に求められるニーズに応えるため、豊富な商品バリエーション・オプションをそろえて、ユーザーから好評を得ている。データセンターの電気設備は安定した電気を途切れることなくサーバに供給しなくてはならず、ラック内に収納される機器は、ブレードサーバーの普及に伴い、高密度化され非常に電力の負荷が増えており、こうした機器に対応できるラックの需要も高い。また、人為的なミスなどによる情報漏えいを解消するため、重要書類、データの管理・保管のルール化が求められており、企業の物品管理とセキュリティを強化するタイプも需要が高まっている。機能面では、熱対策や防塵・防爆、EMC対策、耐震性の向上が進んでいる。こうしたキャビネット・ボックス、ラックの多機能化、高機能化に対応するため、各社では安全性・高品質を追求して、より安全で使いやすい商品に改良し、十分な試験検証を行いながら製品を生み出している。

標準キャビネット・ボックス、ラックの市場規模は2000億円前後と推定されている。使用される分野は、電力、石油化学、自動車、電機・電子、情報通信、データセンター、施設、ビル、セメント、環境装置、工作機械、産業機械、食品・医薬品・飲料、半導体、液晶、計測、放送設備、医療、交通など多岐にわたっている。

キャビネットの種類は、材質・設置場所・設置方式・形状などによって分かれる。材質は外郭に使用する材料としてスチール、ステンレス、アルミ、樹脂などがある。それぞれ機械的、電気的、熱的、化学的影響や湿度の影響に耐え得るものでなければならない。さまざまな場所に設置されているが、大きく屋内、屋外の二つに分けられる。製品を安全に使用するため、設置場所の環境は重要なポイントとなる。

キャビネットの設置方法としては、壁面など垂直面に設置する壁掛露出形、筐体を埋め込む構造の壁掛埋込形、また床面に固定して設置する自立形、電柱などの柱に設置するポール取付形がある。用途による分類では、さまざまな場所で電機・電子機器を収納する汎用キャビネットと光接続・LAN用の情報通信キャビネットなど用途に応じた専用仕様キャビネットがある。

また、IEC(国際電気標準会議)で規定されているキャビネットの保護構造の等級(IPコード)による分類方法もある。IPコードとは、キャビネットの機能のうち、危険な個所への接近、外来固形物の侵入及び水の浸入に対する保護の程度等を規格で定め、等級に分け記号で示したもの。

配電機器、制御機器を収納するキャビネットは、使用環境、収納機器により最適なサイズや構造が異なる。そんなニーズに対応できるよう各社は、さまざまなタイプを用意している。特に軽量化、省施工、熱対策、防塵・防水性、耐震性、粉体塗装などが技術的ポイントとなっている。

軽量化、省施工としては、薄板を使用することによって軽くすることなどにより、高所などでの施工性も高まる。軽量であれば、外壁への取り付けなども楽に行える。

熱対策としては、扉やボデーに換気口を設け、放熱効果を高めている。屋外用は、遮光板を設け直射日光による温度上昇を抑えたりしている。また、パンチング材の採用により、通気性を持たせ、天井面のスリット加工と突き出し扉の上面スリット加工により、天井コーナー部の熱がスムーズに排出され、背面から抜け出せずに回り込んだ熱が突き出し扉の傾斜面からスムーズに排出される仕組みをとっている。

防水・防塵性能を備えた中継ボックスの需要も増加している。特に工場内は各種油のミストや、部品加工により発生する粉塵、さらに機械の洗浄などで水や洗浄剤が使用されるケースが多く、これらの環境から電気的な中継個所を保護するために、保護構造IP67適合といった防水・防塵性に優れた製品が出ている。

耐震性は、製品に実際におもりを搭載した状態で地震波や各種規格波形を加震させたとき、転倒、ドアの開放、構造上重大な支障が起こらないことを確認しているが、この時に、搭載可能な質量の大きさで耐震性能を表している。耐衝撃性に優れ、弾性強度が高く、変形し難い性質を持つポリカーボネイト製の高気密ボックスも登場している。ラックにも耐震、免震などの機能が求められているが、最近は揺れを吸収する制震機能を備えたものがある。超高層ビル・住宅や橋梁などに実績がある揺れを吸収する技術を活用した制震ラックは制震ダンパーが変形することにより、地震エネルギーを吸収し、ラック内の揺れ、及び変形を低減する。連続する大地震にも効果を発揮できる。

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