2010年版ものづくり白書 『主要製造業の課題と展望』 (8)建設機械産業 進む省エネ・環境への取り組み

1、現状

建設機械とは、土木・建設業等において土砂の掘削、運搬などを行う機械であり、トラクタ、油圧ショベル、建設用クレーン、道路機械、高所作業車など用途に応じて様々な建設機械に分類される。我が国の建設機械の出荷額は、2008年度は2兆1971億円である。そのうち、油圧ショベル(ミニショベル含む)が9385億円(全体の42・7%)、トラクタが3253億円(全体の14・8%)となっている。08年度の国内出荷額は、民間設備投資の増加、中古車の海外輸出による更新需要の増加等により6897億円となった。09年度は、住宅着工の低迷、世界的な金融危機の影響を受け、3000億円台になると見込まれる。

輸出は全世界的に好調な海外需要にけん引されて05年度の輸出額は初めて1兆円を超えた。この傾向は06年度及び2007年度も継続しており、07年度の輸出額は1兆6536億円となった。09年度は国内出荷額と同様に世界的な金融危機の影響を受け、前年同期比50%の7000億円台を割ると見込まれる。

我が国を含む世界の有力建機メーカーとしてキャタピラー(米)、小松製作所(コマツ、日)、日立建機(日)、Volvoグループ(スウェーデン)、CNHグローバル(オランダ)、ディア(米)などが挙げられる。米国では広い場所での工事が多いことからトラクタに関する技術が発達した。また、我が国には、アイチコーポレーション(高所作業車)、酒井重工業(締固機械)、タダノ(ラフテレーンクレーン、トラッククレーン)など特定分野に強い企業が存在する。建設機械業界は、以前は欧米メーカーからの技術提供を受ける形の提携があったが、最近では、国内メーカーが海外メーカーに技術供与する形の提携に変わってきており、また、クレーン部門などでは国内メーカー同士の連携も徐々に見られるようになってきている。

2、我が国産業の強みと弱み

(1)強み

我が国建設機械メーカーは、中小型建設機械の競争力が高い。特に油圧ショベルに関しては、我が国建設機械メーカーが、世界の5~6割のシェアを占め、我が国で設計された機種で見ると8~9割を占めると推定される。我が国建機メーカーは、技術的に難しく複雑な油圧システムを組み込んだ高性能かつ高品質の製品を供給している。加えて、設計や素材などの変更・多様化などのユーザーニーズにもきめ細かく対応する能力が高いほか、保守・補修などのアフターサービスも充実している。品質面、サービス面では韓国、中国のメーカーよりも優位性を持っているほか、価格面で欧米メーカーと比較しても競争力を有している。

(2)弱み

国内の公共事業の縮減などにより建設投資が近年は減少傾向にある。さらに、市場縮小により建設機械の主要ユーザーである建設業者間の競争が激化しているため、建設機械メーカー間の価格競争は依然として厳しい状況にある。

3、世界市場の展望

建設機械の主要市場のうち国内市場については、工事量の代表的な指標となる建設投資見通しに厳しい状況が続いており、08年度で12年連続の前年度比減少となっている。08度の建設投資については、前年度比1・4%減の47・23兆円、09年度の建設投資については、前年度並みの47・22兆円となる見通しである。

一方で建設機械の出荷動向については、国内向けの出荷は08年9月以降の世界金融危機の影響を受け、10月以降出荷額が前年度比で2桁の減少となり、09年度は前年同期比57%の3444億円と予想される。また、10年度上期は、アジア、中国など新興国を中心に油圧ショベルや建設用クレーンなどの需要が見込まれ、上期計では2813億円と予想される。

これまで建設機械の出荷を支えていた海外においても、世界的金融危機の影響を受け大幅に需要が減少した。以上から、国内外の需要の減少が著しく進んでいることから、今後の建設機械需要は不透明な状況が続くことが予想される。

4、我が国産業の展望と課題

(1)今後の競争力強化に向けた対応

技術面では、これまでの省エネ対策、耐久性向上などに加え、排出ガス規制、騒音対策、安全対策などが求められてきており、これらの課題を着実に解決していくことが、世界市場においての競争力確保の原動力となる。省エネ対策や排出ガス対策として、ハイブリッド建設機械の開発を各メーカーで進めている。また、11年10月から建設機械(オフロード車)に対する次期排出ガス規制が開始され、後処理装置の導入など、排ガス対策に向けた技術開発が進められている。

(2)東アジア、ロシア等を中心としたグローバル戦略

我が国建設機械産業にとって中国を中心とするアジア市場は、引き続き重要かつ有望な市場であり、油圧ショベル分野を中心として性能面から日本製品の評価が高い。しかし、一部の他国建設機械メーカーが、中国向けに低価格製品の輸出を増大させており、日本メーカーとしては、最適な生産体制の構築、アフターサービスの充実など東アジアを中心としたアジア市場での市場開拓に更に取り組んでいく必要がある。特に、近年経済成長が著しいインドについては、建設機械市場は今後伸びていくと考えられ、インド市場への参入について取り組んでいくことが重要である。ロシアも広大な国土を持っており、今後需要が大きく伸びていくと考えられる国の1つで、各メーカーが今後参入していく余地は大きい。世界的な金融危機の影響を受け、各国・地域の需要動向は減少しており、グローバル戦略を見直す必要があると思われる。

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