混沌時代の販売情報力 黒川想介 日頃の地道な情報収集が有効

IT技術の発達によって情報化時代から情報過多時代になり、欲しい情報は以前と比べれば容易に入手できるようになった。販売で情報と言えば、顧客から入手する情報と、販売から発信する情報の2種類ある。

映画やテレビドラマの中で活躍する販売員は、苦労の末に顧客に合った提案や素晴らしいプレゼンテーションで逆転の勝利を飾って視聴者を魅了する。つまり顧客が望んでいる物やシステム、あるいはサービスといった情報を実にタイミングよく提供する。そこが見せ場で格好がいい。一方、顧客が本当に望んでいることを知るために、色仕掛けやスパイが暗躍する諜報活動が展開される。また、偶然に欲していた情報を入手する場面も多い。ドラマの世界で情報の入手は世間的に言えば、すっきり格好がいいとは言えないようだ。

現実の営業に戻ってみると、販売員が行う情報提供は主に商品情報である。しかしドラマとは異なって、顧客が「それ欲しかったんだ」と言ってくれる場面はほとんどない。欲しかったんだと言わないまでも「どこかに使えるかな」などと言ってくれる場面も少ない。日常の情報収集が少ないせいで当たりが悪いのだ。ルート営業を主にして、リピート受注のできる部品やコンポを扱う営業では、商品情報を提供して売り込んだ商品以外に顧客から案件情報を入手するケースが多い。それが商談テーマ情報となっている。

上司から「何かいいネタつかんだか」と問われると、いいネタは商談テーマだと双方が思っているので「どこも不調で、いいネタはありません」という報告になる。不景気の時は、案件情報は少ないのが当然であるのに情報イコール案件という話題になってしまう。
部品やコンポを扱う販売員は、自分の顧客のことを熟知しているわけではない。顧客情報入手に関していえば、いい案件が顧客の口からでてくる前に様々な情報の中から商談になる情報を発掘することが重要だ。発掘するためには、顧客のことをよく知らなければならない。顧客が使用しているコンポや部品は、顧客の製品や顧客の現場で、一体どんなところに使われ、どんな役割で使われているのかというアプリケーションを探ることがコンポや部品営業では重要な情報である。

販売員の付き合っている顧客は様々であり、コンポや部品の使われ方も様々である。一般的にはコンポや部品メーカーが教えてくれるアプリケーションはあまりにも一般的であり抽象的である。したがって、顧客である技術者にアピールするには迫力に欠ける。だから販売員個人が技術的打ち合わせの時に、顧客の製品のことや部品やコンポの使われ方を詳しく知ることが大切である。その打ち合わせも昔に比べると非常に少ない。なぜなら技術者が、勝手にコンポや部品を採用して使っているから販売員との打ち合わせがなく、ただ売れていくケースがほとんどである。だから様々な顧客の様々な使われ方や役割など、具体的には知らないことの方が多い。

だからといって、特定の装置や特定の機器を分解して部品やコンポの使われ方を教えてもらったとしても、販売員は学んだ知識に捕らわれてしまう。学んだ知識は顧客にとって販売員が持ち込む商品情報と同じ扱いになり興味のあるなしを返してくるに過ぎない。

やはり販売員は日常の些細な情報を地道に収集することが重要で、その際に培った力こそが机上で学んだ知識情報を凌駕する情報収集者にしてくれるのである。
(次回は6月23日掲載)

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