需要急増の省エネ監視関連機器 電力消費の「見える化」で省エネ化支援 省エネ法改正が追い風収益性向上とCO2排出量削減を両立

日本政府は温室効果ガス削減を、2020年までに90年比25%削減という大きな目標を打ち出し、国内の産業界もこの目標達成を前提にした温室効果ガス削減に向けた活動を活発化させている。さらに昨年、省エネ法が改正され、工場、オフィスやコンビニエンスストアなどの消費エネルギー管理が、事業所単位から企業単位に変更になった。

こうした動きを背景に、省エネへの関心は一層高まり、照明のLED化推進や、インバータや高効率モーターの採用などが意欲的に進められている。また、電力消費の状態を監視する各種の監視関連機器も注目を集めている。これまで固定費として処理してきた各種設備の電気代を生産にかかる変動費に置き換え、削減に向けて運用改善や設備改善に取り組むことで、収益性の向上とCO2排出量削減の両立を図る企業が増えつつある。この取り組みには、各種設備における電力の使用状態を明らかにし、無駄やムラを「見える化」することが必要不可欠になる。

監視機器メーカー各社は、「快適とエコの両立」をコンセプトに、電力などエネルギーの使用量を『見える化』した数々の省エネ支援機器をそろえ事業を積極展開している。

省エネ支援機器には、電力監視機器や遠隔監視機器、データ収集・蓄積機器、温度管理機器などがある。

電力監視・測定機器は、部署ごとや機械・設備ごとの1回路単位での電力測定が可能で、任意に設定されたタイミングでデータ蓄積を行いCSVファイルが生成される。データは信号変換器により、LAN監視できるほか、生成されたCSVファイルはEthernetを通じ、パソコンで出力したり、Eメールで送信もできる。また、RS485通信の配線が困難な場所では、無線ユニットを使い、ワイヤレス通信が行える。

特に小型の簡易電力計は、省エネ対策支援機器として需要が伸長している。1台で電力測定・データ蓄積が可能な機器組み込み・盤内設置用の小型簡易電力計は、発売されて10年弱だが、熱源を保有する設備・機械の電力計測を中心に工場などの省エネ支援機器として採用が拡大している。

また、機械や装置ごとに電力の個別管理ができるので工場のほか、一般オフィスや学校・店舗などの分電盤や配電盤用にも需要が拡大している。こうしたアプリケーションの拡大に対応するため、機器組み込みタイプや高機能タイプ、薄型タイプ、SDカード対応タイプ、無線内蔵タイプなどが次々に開発・発売されており、省エネ法の改正が追い風となり大きな市場に成長しつつある。

機器組み込みタイプは高さが約50ミリと小型で盤内設置に最適なほか、消費電力も従来に比べ75%前後と大幅省エネ化されている。また、SDカード対応タイプはSD/SDHCカードが使え、無線内蔵タイプは簡単な設定で無線ネットワークの構築ができ、複雑な子機登録も不要なため無線の見える化が図れる。

さらに、エネルギー使用における効率性・エネルギーパフォーマンスの向上を目指す国際規格ISO50001の発効なども電力監視機器需要増の後押し要因となっている。

電力監視機器は、このようにハード面での進歩が著しいが、各種ツールやソフトウェアの充実も見過ごせない。電力表示ツールや電力計測動作確認用ツール、データ収集ソフト、無線ネットワーク確認用ソフトなど、見える化をサポートするツールやソフトウェアがそろっており、Webサイトから無償でダウンロードできるサービスが実施されている。

一方、使用電力量の削減には電力自体の計測・データ蓄積はもちろんだが、空調を効率的に行うための室温管理なども重要な要素である。さらに、省エネ対策以外でも食品の冷蔵・冷凍や、プラント炉内などの温度データの蓄積は品質管理に必要とされるほか、老人介護施設、温泉施設の湯温監視は安全に役立てられている。

部屋単位の空調など、各測定ポイントが離れた位置にある場合、特定小電力無線を使い、子機から温度データが収集できる無線センサや、機械や装置上の複数ポイントの温度測定には熱電対ユニットなどもある。1ユニットで8ポイントまで高速に測定でき、コネクタによるバス直結で配線が不要である。収集・蓄積したデータは、Ethernetでパソコンに送れる。機械や装置の温度調節をしながら実際の温度を測定し、品質管理を行う場合には温度調節器が最適である。RS485で複数接続が可能で、測定ポイントが遠隔地でもモデム接続で蓄積データがパソコンへ送信できる。

こうした中で、従来の電力量モニタでは、生産設備の稼働中の消費電力と非稼働中に消費される電力(停止電力)しか計測できず、稼働中に潜む無駄な電力の見える化が困難だったが、このほど発売された高精度電力量センサを搭載した電力量モニタは、業界で初めて微小電流計測への自動切替機能を搭載。従来の電力量モニタでは計測できなかった、生産設備の稼働時に潜む無駄な電力をリアルタイムで簡単に見える化し、継続的なCO2削減と原価低減の両立を可能にしている。

生産に本当に必要な稼働電力と、生産に直接関係しない待機電力とに自動的に仕分けることを実現したもので、稼働電力の使用状態が正しく把握でき、無駄を省くための運用改善、設備改善が行える。メーカーが行った実証試験では、電力使用量の10%削減に成功している。

このモニタに搭載された微小電流計測自動切替機能は、電流の変化に応じ、計測可能領域を定格電流計測と微小電流計測モードに自動的に切り替えるもの。計測中の電流値が定格の5%以下になると微小電力計測モードへ自動的に移行、高精度計測を開始する。内部メモリに保存されたデータは通信により管理用PCなどに送信される。

電流のほか、電圧、瞬時電力、力率、積算電力量、瞬時無効電力、周波数の計測が可能。さらに外部入力信号による電力量の原単位管理ができ、充実したロギング機能で簡易データ解析が可能となっている

最近ではインバータを使用した設備での電力計測の高精度化も行われている。モーターのインバータ制御は省エネ対策の一つだが、計測対象の電流波形を歪めるため、従来の電力量モニタでは省エネ効果を正しく計測することが困難だったが、最近の改良技術により、製造現場での環境負荷低減活動の正しい検証・評価が可能となっている。

電力と水道、ガスなどのパルスを同時に計測し、多様なエネルギーのトータル管理が可能なシステムも注目を集めている。電力のほか、パルス入力により、ガス・燃料・水道・生産量などが計測可能で、多様なエネルギーの使用状況が一元管理できる。このシステムも既存のLANを使用してのネットワーク構築が可能で、自動でデータ収集を行う。

同システムは積算電力、電圧、電流、力率などの電力を計測する電力モジュール、燃料、エアー、生産量などを計測するパルスモジュール、使いすぎ警報や原単位警報を接点出力する警報出力などで構成されており、多様なニーズに対応している。

こうした電力監視機器・システムを提供する制御機器メーカーでは、各種CO2の見える化システムを中核に、エネルギーの計測・制御機器を新たなラインナップとすることで、ユーザーのROC(炭素利益率)を最大化させるための手法や機器を順次市場に投入する計画である。

さらに、メーカー側ではただ単に電力監視関連機器の普及を図るだけでなく、ユーザーに対して温室効果ガス削減のための分析や対策法、報告書の作成サポートといったコンサルタント的事業を行っているところもある。省エネソリューションセンターなどを開設し、ユーザーとの窓口としてワンストップソリューションビジネスを展開、見える化による省エネ支援機器の普及拡大を図っている。

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