混沌時代の販売情報力 黒川想介 販売員の個人的戦略思考が重要

2010年1月20日

営業関係者の間で、しばしば戦略や戦術という言葉が使われる。明確な概念をもって使っているかどうかは別にして、それぞれの立場で営業にまつわる考え方・方針や手段などを包括して使っているようだ。もともと戦略や戦術という言葉は、戦争用語である。営業活動も他社との戦いであり、またサービスや商品の普及活動は、戦場における陣地の奪取さながらであるからよく使われるのである。

本来、戦争用語として使われている戦略の概念は、戦争の目的を達成するために最少のリスクで最大の戦果をあげるための準備や活動であり、戦略実行によってあがってきた戦果を、更に活用していく策略という考え方である。戦術の概念は、戦略にもとづいた戦闘力によって、最大のリスクにチャレンジして戦果をあげるという概念である。

孫子が言った「兵は詭道(きどう)なり」につきるであろうか。詭道とは相手を惑わすことで、騙すことである。戦術とは、相手との駆け引きということになる。

そこでまず、現代の営業戦略というものを考えてみる。戦争で相手するものは、営業の売り上げと拡大活動である。そもそも戦略の必要性は、1回・2回で戦いが決しないためにあるのだから、該当する戦役が終わるまでの多くの戦いを念頭においている。営業の戦略においても当然、一過性の売り上げ拡大活動ではなく、営業活動の期間という概念が存在する。

つまり、一定期間を念頭において、売り上げ目標を達成させるために組織・教育・装備・PRなどを怠りなく準備し、企画することが営業戦略である。一般的に戦略と称して使っているのは、期間の概念が薄い販売の手段のようなものであり、通常は戦術の概念の範疇に入る。それに戦略とか戦術というのは上位にいる者に必要なことであり、一般の販売員は必要ないのではないかと思っている節がある。
確かに現実の戦争では、上位で決められたことを確実に実行できる戦闘能力があればよい。余計なことを一兵卒が考えて、勝手な行動をすれば、一つの軍としての動きができなくなり、弱い軍となってしまう。しかし、営業においては個々の販売員も余計なことを考えて活動する必要がある。つまり、戦闘能力に相当する商品を売り込む力だけでは駄目ということだ。販売員も個人的戦略思考や、個人的戦術思考が必要なのである。

まず個人的戦略思考に関して言えば、個人的戦略思考がないと、一過性の売り上げ拡大活動となってしまい長期にわたって売り上げを拡大し続けることが難しくなる。例えば「当期の売り上げが多少足りないので何とか確保せよ」とか「A商品を○○台受注せよ」などの命令を受けた場合に、販売員は取りあえず過去に成功した経験に基づいて商品資料、サンプルを持ち、自分たちの顧客に向かって売り込み活動にひた走る。

まじめに一生懸命行動している姿は、実に頼もしく見える。しかし、このような動きでは、個人的戦略思考に欠けると言わざるを得ない。高度成長期のように、行け行けドンドンの時代では成功してきたのであろう。しかし、成熟期に入った商品が多くなり、それらの商品はどこに使用すればよいのか、顧客の方がよくわかっている時代なのだ。

したがって販売員の行動力強化は「顧客の必要掻き集め促進」をしているに過ぎないのである。言い換えれば、戦闘に入った兵が白兵戦でひたすら前面にいる敵を倒すことのみしかできない状態と同じなのである。この業界の販売員も、白兵戦をやる前に個人的戦略思考を持って活動する時代に入っている。
(次回は2月10日掲載)