制御機器や制御部品は一度の購入で取引が終わると言うものではなく、リピート性のある商品である。したがって商品売買を一定期間続けていれば顧客になってルートができる。FA営業は出来上がっているルートに乗っかって売り上げの拡大を目指す。
これまで景気が低迷すると、幾度となく新規見込み客の開拓を営業の重点項目に上げてきた。しかし景気の回復によって、その活動はすぐに下火になった。普段の営業活動は、案件テーマを嗅ぎつけたり、競合商品が使われているのを見つけたり、新商品を売り込んで物になると思ったら商談テーマ化して決着管理する営業である。
昨今では景気が低迷し、売り上げに元気がなくなっても新規客開拓を重点政策に取り上げない。その代わりに既存の優良なルート客を選定して、営業力を集中させて、いろいろな角度から深掘りをすれば売り上げは上げられると言う施策を取る。優良客には取りこぼしの商談テーマがたくさんある。その上、期待する業界の優良企業は、増産や生産性を求めて制御商品を使うからテーマが多いという仮説を基にしている。
この仮説は間違ってはないが、販売店営業にとっては成長につながるとは言い難い。競合商品のシェア 争いの手詰まり感から出ているように見える。
かつてFAメーカーは新たなアプリケーションを求めて需要を増やす作戦を実行した。したがって販売店営業にはそれが戦略となり、売り上げの成長につながった。制御商品が使われる新しいアプリケーションは、優良企業で起こるとは限らないのである。
そのような新たな需要を見つける施作は、販売店営業にとって重要な戦略である。既存の優良ルート顧客に営業力を集中して、売り上げ拡大を狙う促成栽培的営業ではなく、土壌改良からの上策が必要になる。
土壌改良といっても大げさに考えなくても良い。販売店営業はメーカーとは違って新技術開発や新商品開発に投資する必要は無い。FA販売店営業はルート営業である。したがって土壌改良というのは、固まっているルートの他にリピート需要のある別ルートを作れば良いのだ。そのように考えれば営業戦略はどんなルートを増やすかを決めることから始まる。
その必要性をわかっている販売店営業は多いが、そこに全力をかけていない。その理由はいくつかある。
1つ目は、顧客側では費用のかさむ新規口座を作りたくない、絞りたい状況にある。
2つ目は、それでも顧客側では何かに優れている販売店営業を求めているが、アプローチしてくる販売店は皆同じであるから乗り気にならない。それに、そこを突破する営業力がないからあきらめが早い。
3つ目はFA業界は良い業界であるために、顧客の受注ルートが固定化し、販売員は同じような経験しか積んでいない。令和に入って製造業の現場は、それまでとは違う雰囲気になっている。それを感じないのか、感じていても営業活動のやり方を変えられないのか、どう変えればいいのかというようなことには関心がないのである。
4つ目は新しい受注ルートを増やすのに全力を傾けなくても、ルート上の顧客を懸命にフォローすれば、今までやってきたように新しい展開が待っていると思っている。
以上のように、顧客側にも新規販売店営業を受け入れする事情はあるが、ほぼ販売店営業の油断とチャレンジ不足なのだ。同一顧客にも異質の受注ルートは作れる。売り上げを成長軌道に乗せるには受注ルートを増やすしかない。この戦略を実行するには、号令をかけるのではなく、販売員育成プログラムの見直しが必要だ。現在の育成プログラムは、受注ルート顧客ありきで作られている。新規受注ルートの開拓のためのアプローチを根本的に見直して、育成プログラムを作るべきである。