- コラム・論説
- 2012年8月8日
令和の販売員心得 黒川想介 (145)IT用語や役割理解すると 成長を見込める道が見える
FA商品が通称「制御部品」とか「オートメパーツ」言われていた時代には、現在のように製造工場の機械設備需要で大きなマーケットを作るという見通しがあったわけではない。
FAとは「ファクトリーオートメーション」の略であるが、当時はFのついているオートメーションの時代であった。制御部品販売員は工場の自動化、設備需要を追いかけていただけではなかった。工場の外でもオートメーションの可能性があればすぐにも出動し、需要を追った。半導体の進化が始まるとさまざまな技術や製品が生まれた。FA業界もオートメパーツや制御部品という商品だけでなく、半導体を使った「制御機器」と言われる商品が創出された。80年頃には、日本の工場は世界的になっていたから、制御機器は工場の機械設備需要が主力マーケットであった。それ以降、製造工場は生産力や生産性向上を目指して先鋭化した機械設備の導入を図った。それにつれて制御機器も高度化や使い勝手の良さを追求し、工場の自動設備の一翼を担い、FA商品の中核を為すようになった。そのような経過をたどって、FA営業は機械設備の制御分野をマーケットにしてきたのだ。
その後、機械設備のデータの送受信や、設備間の情報の送受信の機能を持ったPLCが登場し、マシンコントロールだけでないFA分野が広がった。そこはIT技術との接触点であり、FA販売店営業にとっては新しいマーケットに入って行く機会だった。しかし、一からやらなければならないし面倒だったから、自分たちのマーケットではないと思ってしまった。大きな変化が起きる時にはよくある現象である。
例えば、工場のオートメーション化が活発になる前、工場に出入りしていたのは、モーターや空圧や周辺部品を扱う販売店営業であった。モーターや空圧を動かす制御技術が機械設備周辺に新しいマーケットを作りつつある時は、こうした動力系の商品を扱う販売店はFAマーケットに入るチャンスだった。しかし彼らはモーターや空圧、周辺需要で精一杯を感じ、制御商品は面倒だと感じ、FAや制御マーケットへ入らなかったという歴史がある。
現在のFA販売店営業は、ITの考え方やIT技術がますます製造工場に入り込むと感じている。実力のある販売店営業は別にして、一般の販売店営業には悩ましい問題である。
それでも生産設備が一気にIT技術でコントロールされるようなことはない。まずはIT化に合わせて現状の機械設備を改善やリニューアルをする必要がある。したがってIT化で生産性を上げるまでにはステップがあるのだ。
まずは現状の機械設備を改善する際、生産性を上げるためのIT技術や考え方の導入がある。制御機器には各種のデータを送受信するPLCがあるから、FA営業はIT分野に慣れて付いていける素地がある。しかしPLCは、マシンコントローラーとして開発され販売してきたから、FA営業ではPLCをマシンの制御に通信機能が付いた商品という理解で売ってきている。だからそれ以上のIT技術分野への道には入らない販売店営業が多い。
その選択は、昭和期に自動制御分野に入らなかった販売店営業と似ている。積極的にIT技術分野に入っていかないにしても、販売店営業は簡単なIT用語や役割を理解した方がいい。そうすればFA販売店営業でも、持続的に売上の成長を見込める道が何本か見えてくる。①新しく生まれる業務機器を見つけて開拓ができる、②現在、人手に頼っている作業マーケットへ目を向ける。そこには自動機械設備にはないがFA営業には見えていないLCA(ローコストオートメーション)のマーケットがある。そのLCAは作業量と作業管理に分かれ、それぞれのマーケットを構成するのが見える。
