【FAトップインタビュー】福西電機、持続的成長へ「壁を越える」パーパス経営を軸に社会課題解決に貢献 産機営業本部は「物売りからの脱却」目指す

福西電機は、2024年度に過去最高となる売上を計上し、4期連続の増収増益で好調な業績を維持している。その強固な経営基盤の下支えとなっているのが、2022年に若手社員を中心に策定したパーパス「人・技術・情報の架け橋となり、最適解で「福(しあわせ)」あふれる未来をつくる。」。トップダウンからボトムアップ、社員が積極的に挑戦できる企業文化の醸成に成功し、次々と新たなチャレンジを打ち出している。また2025年6月には新社長として岩本 秀宣 氏が就任し、さらなる成長に向けて新たな歩みを始めている。

新社長としての抱負と2025年上期の現状、今後の展開を岩本氏に、さらにはFA業界を事業領域とする産機営業本部の現状について、事業を統括する取締役 産機担当/ソリューション担当の上田 敏昭 氏、産機営業本部 本部長の松本 潤典 氏に話を聞いた。

好調な業績を牽引するパーパス経営と社会課題への挑戦

――6月から社長に就任されました

直近の4年間は社外取締役として福西電機の経営に携わってきました。実はそれ以前、私が入社して2年目から11年間、当時所属していた会社で福西電機の担当営業をしていたこともあり、非常に深い縁を感じています。営業として様々なことを教えていただいた恩のある会社です。その会社を今度は私が社長という立場で牽引していくことに身が引き締まる思いと、恩返しをしたいという強い気持ちがあります。

――前期は過去最高の売上高を達成するなど好調でした

おかげさまで4年連続での増収増益を達成することができました。コロナ禍など厳しい環境もありましたが、皆で乗り越えてきた結果だと感じています。この良い流れをしっかりと継続し、今年度もさらなる成長を目指していきます。

この好調を支えているのは、2022年に策定したパーパス「人・技術・情報の架け橋となり、最適解で「福(しあわせ)」あふれる未来をつくる。」の存在が大きいと考えています。これはトップダウンで決めたものではなく、多くの社員が意見を出し合い、ボトムアップで作り上げたものです。だからこそ全社員の拠り所となり、日々の業務の判断軸になっています。このパーパスを基軸に、お客様の幸せ、社員の幸せ、そして社会への貢献を目指すという方向性が明確になったことが、組織の勢いにつながっていると考えています。

――次々と新たな施策を打っていて、積極的な取り組みが目立ちます

「脱炭素」という大きな社会課題に対してどのように貢献できるかを考え、ZEBプランナーを取得しました。先日出展した展示会でも、ZEBに関するソリューション提案に大きな反響をいただき、具体的な案件創出にもつながっています。

また環境・エネルギー分野での共創を促進するため、多様な企業が集まるシェアオフィス「seesaw」へ入居し、業種や地域を超えた新たな人脈構築や商機獲得につながっています。

また社員の働きやすさは会社の成長にとって不可欠であり、そのためにオフィス環境の改善なども進めています。「Well-being」をキーワードに、東京オフィスの増床や、大阪本社等からOAPタワーへ一部部門の移転を実施しました。

産機営業本部「物売りからの脱却」人材育成を強化

――産機営業本部の現状について

当本部のスローガンは「物売りからの脱却」で、お客様の課題解決に真に貢献できるアプリケーション提案を一つひとつ具体的にアウトプットしていくことに全力を注いでいます。現状は在庫調整の影響が今も残り、厳しい状況が続いていますが、当本部は粗利を稼ぐ重要な部門であり、厳しい状況だからこそ、真価が問われると考えています。

そのためにも人材の育成が重要で、OJTだけでなく、当本部独自の研修プログラムを充実させています。若手から中堅まで活用できる100ページ超のマニュアル「産機の教科書」を独自に作成し、定期的に内容を更新しながら知識の底上げを図っています。また、毎年出展している「ネプコン ジャパン」のような大規模展示会では、新入社員やキャリア入社の社員を積極的に説明員として立たせ、お客様との対話を通じて製品知識や提案力を磨く、実践的な学びの場としています。

今期の3つの柱「サイバーレジリエンス」「半導体業界向けRFID提案」「EMS」で未来を拓く

――現在の重点的な取り組みについて教えてください。

①サイバーレジリエンス対策、②半導体製造装置業界向けへの提案推進、③EMSビジネス、この3点を柱に据えています。特に①と②は、現場の若手社員からのボトムアップでプロジェクト化しており、少数精鋭でスピード感を持って進めています。

  • サイバーレジリエンス対策は、製造・物流・インフラといった多様な現場のスマート化が進む一方で、OT(制御技術)領域のセキュリティリスクは増大しています。当社は、世界的に評価される先進メーカーの最新機器を幅広く取り扱い、お客様の現場をサイバー攻撃の脅威から守るための最適なソリューションを提案しています。ハードウェアの提供だけでなく、コンサルティングも含めたトータルなサポートを提供できるのが強みです。
  • 半導体製造装置業界向けの提案の推進では、半導体製造に関わる装置メーカーへRFIDの提案を強化しています。これまで半導体製造向けのRFID市場は限られたメーカーによる寡占状態でしたが、ユーザー企業からは技術革新の要望が高まっています。当社は先進メーカーとの技術連携を深めながら、そのニーズに応える高性能かつ柔軟なRFIDをご提案。すでに大手装置メーカーへの採用実績があり、価格優位性と納期対応を切り口に提案を進めていきます。

――EMSビジネスについては

当社の手掛けるEMSは、調達から製造まで一貫したサポートを提供し、単なる基板アッセンブリに留まらず、制御盤の製造なども行っています。お客様の「ものづくり」を、設計段階から製造、そして保守まで包括的にサポートするビジネスと位置づけ、多様な協力会社と関係を構築しています。最近ではPLCからPCベースの制御への移行といった技術トレンドもあり、提案の幅も大きく広がっています。

お客様にはコア業務に集中していただき、周辺の設計・開発・製造は当社にお任せいただく。そのためのパートナーとして、専門担当者を置いて社内体制を強化しています。ものづくりを外部に委託したいが、適切なパートナーが見つからない、あるいは管理が煩雑だといったお客様の悩みを解決するのも、専門商社の大切な役割です。

「壁を越える」新たな価値創造へ 商社の役割を再定義する

――2025年度も中盤を迎えています

今年度の全社テーマは「壁を越える」としています。物流の2024年問題、脱炭素への取り組み、そして深刻化する労働力不足など、我々の事業を取り巻く環境には、乗り越えるべき多くの「壁」が存在します。これらを一つひとつ着実に乗り越え、今年度の目標である売上920億円を達成したいと考えています。しかし、単にトップラインを追いかけるのではなく、収益性を伴った質の高い成長を目指すことが重要です。

例えば、2027年には蛍光灯の生産中止があり、当社にとってはビジネスチャンスであると同時に、施工人材の不足という「壁」にもなります。こうした状況に対し、商社としてどのようなソリューションを提案できるか。単に製品を販売するだけでなく、施工体制の構築も含めたトータルな提案力が求められます。これも「越えるべき壁」の一つです。

――製造業界における商社の役割も変化しているように感じます。

おっしゃる通り、単に物を右から左へ流すだけの「物売り」では、もはや価値を提供できません。お客様の課題を深く理解し、DXやITの知見も活用しながら最適なソリューションを組み立て、提案していく「コト売り」への変革が不可欠です。

時には、これまで主戦場としてきたFAの領域から一歩踏み出し、コンビニのセルフレジシステムのような「ノンFA」の領域にも、FAで培った技術やノウハウを応用していく。そうした発想の転換が新たな市場を開拓します。生産性を上げ、生まれた利益を未来へ戦略的に投資し、お客様と共に成長していく。それがこれからの商社の姿だと考えています。

――今後に向けて

当社には、素晴らしい社員と、長年培ってきたお客様との信頼関係という財産があります。社員一人ひとりが仕事にやりがいを持って、様々なことにチャレンジできる環境をさらに整え、福西電機に関わる全ての人が幸せになれるような、良い会社にしていきたい。変化の激しい時代において、社会とお客様をつなぐ非常に良いポジションにいます。この強みを最大限に活かし、業界の発展、そして幸せあふれる未来の共創に貢献していきます。

https://www.fukunishi.com

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