【We love Automation!(Vol.4)】批判され慣れ 否定恐れては成功至らず

私は以前から若手の方々の感性がどのようなものか知りたく、できるだけそれに近づけようと思っていました。それは、お客様の現場にも毎年のように新卒の方々が入社され、そして主力となって働き、いずれその会社を支える存在になるからです。未来は今の若手の方々が担う、これは間違いのない事実なのです。

 先日、採用応募者の方が「苦手とするタイプ」として「自分の考えを表に出さない人」というのを挙げられていたのを思い出しました。「普段あの人は何を考え、例えばこのような場面ではどう判断するのだろうか」というのは仕事上で関係する立場であれば気になるところです。それが人間として目標になるような人の場合であれば、休日にどのような過ごし方をしているのかも含めて興味は尽きないでしょう。

 私がこのコラムを担当させていただくことになったのは、朝礼でのコメントを投稿に残していたことがきっかけでした。朝礼で話していた内容を出張などで不在だった人が聞けないということと、話した私自身が夕方には何を喋ったのか忘れているという現実があり、必要に応じて後から振り返って読めるようにと当時の社内ポータルに投稿をはじめました。それと「私自身が何を基準にしてどう判断しているのか」というのは周囲の方々にとっては興味深い話だろうと思ったのも動機の一つでした。

 自分の考えを表に出す、これは簡単なようで難しい話で、よほど自信満々な人か、あるいは否定されることに慣れている人のいずれかでしょう。私の場合はある程度の自信はあるのですが、どちらかと言えば長年色々と苦い経験をした中で、否定されることには慣れていると思っています。

 それは23年ほど前にオプテックス・エフエーに入社した時からそうで、自分の考えや案というのはこまめにオープンにして、早いうちに色々な意見をもらって軌道修正した方が、後々楽になるということを前職で繰り返し経験したことで身に付けていました。反対に自分のアイデアを頭の中で温めておき、これで完成だというレベルにまで熟成させてから公表しますと、そこで否定された時に手戻りする量が半端なく多く、時には戻るに戻れないということもあります。特に人間の脳は自分の考えを肯定する情報やデータを好んで集め、否定する意見は無視するようにできていますので、一人で考え続けるというのはかえって成功率を低下させてしまうのです。

 しかしながら自分の考えを表に出せば、時に批判にさらされる場合もあります。実際、自分の考えが正しくて周囲の賛同を得られる確率というのは20%くらいしかありません。(人間は誰しもそうですが)否定されたり、批判されるのを避けていますと、自分の考えを表に出さないのが一番の安全策となるのです。

 自分の考えを否定されたり、批判されることに慣れる、これは人生において非常に強い力になるのではないかと思っています。というのは批判を恐れて自分の中だけでアイデアを温めていても、その成功率は20%程度と低迷したままなのです。早いうちから表に出すことで様々な意見をもらい、軌道修正させることによってその成功率を80%程度にまで高めることができるからです。

 それから批判を受け入れて軌道修正するというのは、批判した人からすると「自分の意見を取り入れてくれた」という満足感が得られます。通常は批判をした場合は激しい抵抗に遭うものなので、批判に耳を傾けてくれたというだけでも一種のサプライズになります。それは同時に信頼を得ることにもつながります。

 こんなシンプルで強力な手法なのに、多くの人がそうしないのは何故か・・・それは人間がそもそも「批判されるのを嫌う」生き物だからなのです。だからこそ批判を受け入れて軌道修正できる人が称賛を浴びるのです。「批判され慣れ」するには、本能に反することで相当な訓練が必要です。そのためには常に「その事象には反対ですが、あなた自身を批判しているのではないですよ」と添えることが助けになるでしょう。

◆湯口 翼(ゆぐち たすく)

1967年生まれ。大阪府出身。2002年に産業用センサメーカーのオプテックス・エフエーに入社。開発グループで新製品の開発に携わり、ローコストな印字検査専用の画像センサをはじめ、画像処理用LED照明コントローラやIO-Linkマスタなど画期的な新製品を多く生み出す。2008年に取締役、2024年に代表取締役社長に就任。

https://www.optex-fa.jp

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