【FAトップインタビュー】不二電機工業に聞く 省力化・省人化、デジタル化の提案を強化 製品開発と生産効率化で利益拡大へ 代表取締役社長 八木 達史 氏

1953年創業の電気制御機器メーカー・不二電機工業は、第75期となる2033年1月期に売上高50億円を目標とする「新STEP50」で、2024年2月から3カ年の中期経営計画に取り組んでいる。電力や交通、鉄道といった同社の主力市場の社会インフラ領域で労働力不足が深刻化するなか、「省力化・省人化」と「デジタル化」をキーワードに現場を助ける製品開発を進め、IEC 61850といった新たなトレンドにも対応した新製品も発売する予定。中期経営計画も2年目を迎え、現在の進捗について、代表取締役社長 八木 達史 氏に話を聞いた。

利益拡大への取り組みを強化

――現在推進している中期経営計画の進捗について

2025年2月から中期経営計画(2024~2026年度)の2年目に入りました。この3カ年計画は、2033年1月期に売上高50億円を達成するという「新STEP50」のフェーズ1という位置付けとなり、「利益拡大への取り組み強化」「働きがいのある職場環境の整備」「サステナブルへの取り組み推進」という3つを重点項目としています。

2年目の今期は、特に「利益拡大への取り組み強化」に注力しています。メーカーとして事業の収益性を高めていくために今やるべきことは付加価値を持つ製品をお客様に提供していくことであり、「省力化・省人化」と「デジタル化」の2つのキーワードを掲げ、これに沿った製品開発と事業展開を中心に取り組んでいます。

現場の負担を減らす「省力化・省人化」製品を拡充

――「省力化・省人化」への取り組みについて

代表的な製品として、無停電で電力量計の交換作業を可能にする「UPD(ユーピーディー)形」という製品があります。これはメーター交換時に停電させる必要がなく、現場での作業準備も大幅に効率化できる製品として、お客様から非常に高い評価をいただいています。昨年度は特に堅調で、売上を大きく伸ばすことができ、今後もラインナップを拡充していく計画です。

特に電力需要が旺盛なデータセンター市場は重要なターゲットとして見ており、拡販を進めています。今年3月に日本データセンター協会主催のイベント「データセンタージャパン2025」に初めて出展したところ、無停電での作業効率化という特長に関心を持っていただくことができ、大きな手応えを感じています。

他にも、施工性の向上に寄与する製品開発を進めています。従来のネジ締め作業が不要な差し込み式の「アース速結端子台TPG形」や、軽量で扱いやすいアルミケーブルに対応した「アルミ端子台シリーズTXS-GA形」など、現場作業の負担を少しでも軽減できるような製品のラインナップ拡充にも力を入れています。これらの「省力化・省人化」に貢献する製品群は、計画通り順調に進捗しています。

デジタル化に向けてIEC 61850対応製品を開発

――もう一つのキーワードである「デジタル化」についてはいかがでしょうか

デジタル化の取り組みにおける最大の柱が、電力システムの監視制御や保護のための国際標準規格である「IEC 61850」に対応した製品開発です。これは当社にとって10年来の大きな課題でしたが、いよいよ形になりつつあります。

現在、変電所や発電所、配電網などの電力システムでは、デジタル技術を活用して保守メンテナンスの効率化や機器の標準化を目指す「デジタル変電所」への移行が進んでいます。そのカギを握るのが、国際規格である「IEC 61850」です。

これまで機器間の接続は1本1本のメタル線で行われていましたが、IEC 61850を用いることで汎用のイーサネットケーブルの通信線に置き換わり、施工が大幅に簡略化されます。また、異なるメーカーの機器も同じ規格上で接続できるため、将来的なメンテナンス性も格段に向上します。今後、電力設備間の通信仕様はIEC 61850構成の方式で組んでいく流れが加速していくと言われています。

この流れに対応するため、当社は富士電機、第一エレクトロニクス、オライオンとコンソーシアムを組み、協働でIEC 61850対応製品の開発を進めてきました。今年3月の電気学会全国大会で、IEC 61850に対応した新しいシステムとして通信インターフェースユニットとリモートIO機器/THT-CUN形伝送端子台を発表しました。変電設備で多くの実績があるリモートIO機器/THT-CUN形伝送端子台を連結することで、CUnet通信により監視や制御をはじめとした多くの接点情報の入出力を、通信インターフェースユニットを介して変電所内のIEC 61850で構築されたシステムに繋ぐことができます。これによりお客様が既にお使いの資産を活かしながら、最新のデジタル変電所システムへスムーズに移行することが可能になります。来年3月の発売を目指して現在、量産に向けた最終準備を進めている段階です。

日本では今後、配電盤のIEC 61850技術が広がっていく見込みで、電力会社以外にも鉄道分野やプラント工場など公共性の高い施設の事業者は変電所システムのデジタル化に着手しようとしています。長年の課題であったデジタル化への対応製品が世に出ることで、当社の事業に新しく大きな柱が立つものと大いに期待しています。

生産効率化のため工場を集約

――コスト体質の改革にも取り組まれているそうですね。

利益を拡大するためには、売上を伸ばすことと同時に、コストを最適化することも重要です。昨今は材料費や人件費など、あらゆるコストが上昇しており、価格改定が追いついていないのが実情です。そこで、改めて自社のモノづくりのプロセスを見直す取り組みを進めています。

その一つが、生産拠点の再編による効率化です。これまで草津製作所で行っていた表示器・表示灯の組立工程を、みなみ草津工場へ移管する作業を進めています。

かつては製品品目ごとに工場を分けていましたが、現在の3工場体制となってから十数年が経って生産工程の視点で見直すと、工場間でモノが行き来するような非効率な部分も散見されるようになりました。今回の移管は、モノの移動などの無駄を徹底的に排除し、生産リードタイムの短縮とコスト削減を図るのが目的です。従来の仕組みの中で改善を重ねる段階から一歩進んで、生産体制そのものを抜本的に見直す、大きな改革と捉えています。

省力化・省人化・デジタル化関連製品で事業を牽引

――今後に向けて

足元の事業環境は楽観視できない部分もあります。昨年は、半導体不足の反動による在庫調整の影響が大きく、特に当社の主力である電力市場で受注が伸び悩みました。また、鉄道車両市場も今期が生産の谷間にあたると予測されており、厳しい状況です。

しかし明るい兆しもあります。受注は今年の春先から回復傾向にあり、第1四半期の受注高は前年同期比で113%と大きく伸長しました。顧客の受注調整の一部受注残が解消され、新たな需要が動き出した感があります。

短期的には「省力化・省人化」関連製品が売上を牽引してくれると期待し、中長期的には「デジタル化」関連製品が、次なる成長の原動力となってくれると考えています。

この中期経営計画の期間は、未来への種を蒔き、着実に育てていく非常に重要な時期です。「省力化・省人化」と「デジタル化」をキーワードに開発を進め、お客様の現場の助けとなる製品を提供していきます。

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