
モータの回転制御を担い、産業機械の高性能化を担うインバータは、FAをはじめ主な領域ではすでに当たり前となっている。一方で、脱炭素やサステナビリティの実現に向けて改めてその有効性が認識され、置き換え需要と新規需要を合わせて市場は拡大傾向にある。シュナイダーエレクトリックも市場の動きに合わせ、インバータと脱炭素実現に向けたサービスの提案を強化し、日本市場に浸透してきている。
インバータの需要が拡大傾向にある一方で、ここ数年はほとんどのFA機器で供給不安の問題が発生し、特にインバータは手に入りにくい状況が続いた。注文があるのに作れない、納められないという状況に各社が苦戦するなか、同社はグローバルなサプライチェーンを以前から整備し、設計変更などに迅速に対応することで対応。特に日本市場では、圧倒的なシェアを持っている日本メーカー各社の製品が手に入らなかったこともあり、在庫を持ち、置き換えや代替品としての提案を強化し、日本でのインバータ事業の拡大につなげた。実際、同社のインバータ「Altivar」は、日本での知名度こそ低めだが、産業機械向けではグローバルで上位のシェアを持っており、世界中で採用されていることが追い風となった。
同社のインバータ事業の特長は大きく3つあり、1つ目が「製品ポートフォリオの幅広さ」。ソフトスターターや汎用インバータから、トンネル掘削機のような巨大な産業機械向けの高圧ドライブまで、低圧は3アンペア(0.18kW)から1200アンペア(2600kW)、高圧では最大20メガワットといった巨大なものまで取り揃えている。
特にソフトスターターは、日本では馴染みが薄いが、モータ起動時の突入電源を抑え、コストパフォーマンスに優れた製品としてヨーロッパをはじめグローバルでは広く使われており、日本でも提案を進めている。またコンプレッサーやホイストなど特定のアプリケーション向けに必要なプログラムやパラメータ設定を済ませた製品もラインナップし、立ち上げ期間の短縮等も可能になっている。
2つ目が「サステナビリティへの取り組み」となり、単にインバータを単品を提供するだけでなく、脱炭素やサステナビリティに取り組む製造業各社向けのサービスを用意し、実現の後押しをしている。例えば「グリーンプレミアム」という独自の認証活動を展開し、製品の調達段階から設計、製造、廃棄に至るまで、環境負荷を低減するための厳しい基準を設け、その成果を環境開示レポートとして顧客に公開している。またモーターを最適に動かすためのソリューションとして「モーターマネジメント(MoMa)」を提供。ブレーカーから分電盤、制御盤、インバータ、モーター、そしてその先の機械設備に至るまでの電気の流れ全体を最適化し、効率化と省エネの実現に向けて設計から運用までを支援している。専用ツールによって、どれくらいの期間で省エネ効果によって初期投資を回収できるかといったシミュレーションも可能となっている。
3つ目が「IoTを活用したソリューションの提供」。工場に設置されたインバータや他社製を含むモーターといったドライブと回転系の機械の稼働状況データをクラウドに収集・分析し、予知保全につなげるサービス「EcoStruxure Asset Advisor for Drives」を提供している。設備の稼働データは収集しているが、分析までできていないという状況に対し、それを代行するサービスも提供している。
同社はもともとプラントやインフラ領域に強く、回転機械の制御やエネルギー効率の最適化は得意領域であり、世界中の自社工場や物流倉庫をスマート工場化し、先進的な工場としてLighthouseにも選ばれている。そうした自社で手がけた脱炭素やサステナビリティのノウハウをソリューション、サービスとして提供しつつ、インバータ製品としてもソフトスタータから汎用インバータ、特殊用途や高圧まで豊富なラインナップを揃え、日本でも提案を進めている。