コロナ禍乗り越え 2024年は第4次産業革命へ リスタート 自動化・デジタル化の火種に着火せよ

2020年からの3年間のFA・製造業界は、コロナ禍、部材不足、サプライチェーン混乱と納期遅延、エネルギーと素材価格の高騰など多くの問題が発生し、各社はその対応に追われた。加えて世界経済も低迷し、中国市場の不調は今も暗い影を落としている。しかしその一方で、経営者と現場の両方で自動化・デジタル化への理解が進み、導入を望む声が強まり、確実に風向きが変わった。
明けて2024年、市場の混乱が完全におさまったとは言えないが、少しずつ正常化に向かいつつある。ここが第4次産業革命、自動化・デジタル化実現に向けたリスタート、再加速のための出発点となる。

主役は全国に広がる中小企業へ

時代は変わり、FA業界は新しいステージに入った。
2010年代に第4次産業革命やインダストリー4.0、デジタル化が叫ばれたが、これまではそれらに敏感でトレンドを先取りする層や大企業が主役となってにぎやかだった。
しかしコロナ禍でそれまでの常識が通用しない、その場の状況に臨機応変に対応しなければならない状態になり、多くの企業や人が旧来の縛りを緩め、新たなチャレンジを実行して乗り切った。
この経験は、FA機器や装置を作る人、売る人、買う人、使う人などFA業界に関わるすべての人々に影響を与え、社内の謎ルール、前任者の申し送りといった古くから存在していた枷や箍を緩ませ、同時に自信を与えた。これによってゆっくり進んでいた自動化やデジタル化、DXなど第4次産業革命の動きが急加速・急拡大し、その主役も、アーリーアダプターと言われる一部の先行者から、中小企業をはじめとした大多数へと移り変わった。
2024年は、業種も規模も多種多様で、自動化やデジタルに対する理解度や習熟度も異なり、課題感や取り巻く環境もそれぞれという人や企業がデジタル化・自動化を本格化に取り組む年になる。
FA企業は、彼らのなかに燻る欲求を引き出し、提案して火をつける。さらに言うと、これまでの常識や当たり前に捉われず、新たに顧客を開拓する意識でのアプローチが重要となるだろう。

ITとOTが混じり合って変わる製造現場

第4次産業革命やインダストリー4.0が提唱されて10年近くが経ち、いまはその真っ只中にある。コロナ禍で大きな変化があったと言っても、第4次産業革命の大きな潮流のなかでの一時的な事象の話。大きな時代の流れの途中であることは忘れてはいけない。
その意味で2024年は、改めて第4次産業革命、インダストリー4.0に再挑戦し、取り組んでいく年に位置付けられる。そのためにもエンドユーザーとその製造現場は何が変わって、変わっていないのか、どんな課題があるのかを整理することが大切だ。

第4次産業革命、インダストリー4.0によって製造業におけるデータ活用とそれによる生産の知能化が大きく前進した。デジタル化、iotなど、ネットワークで機器同士をつなぐことが当たり前の概念として認識され、自動化はデータ活用と掛け合わせることで単純労働を代替または補助するものから、より高度な生産を可能にするものへと進化した。
ネットワークが工場の最重要インフラのひとつとして位置付けられるようになった。現場の機械同士をつないで情報のやり取りによって生産を高度化する横のネットワーク化にはじまり、MESなど工場の生産システム、さらには上位の基幹系のITシステムとも接続する縦のネットワーク構築、さらには企業全体のネットワーク化へと多層化して密度も濃くなっている。
ロボットが高度な知的生産を実現する主要コンポーネンツとして認識・評価を受けて急速に普及し始めている。それまでは自動車やエレクトロニクス業界など一部に限られていたロボット活用の可能性が他の産業にも広がってきた。人と作業スペースを共有し、一緒に働ける協働ロボットが市場に投入されたのもこの10年であり、ロボット導入の加速を後押ししている。
また、データ収集が進むにつれAIの有用性が再認識され、第3次AIブームが起きた。製造現場でのAI活用はほど遠いと思われていたが、外観検査工程などをきっかけに現場に入るようになり、高度な生産システムには不可欠な技術になっている。
細かな技術の変化を挙げればキリがないが、大きくとらえれば、独自の技術と文化圏だった製造現場、OT領域に、データや情報を取り扱うITの技術が受け入れられ、少しずつ入って来たのがこの10年。次の10年は、OTがITに飲み込まれるのではなく、OTがITを拒絶して分かれるのでもなく、ITとOTが混じり合って融合していく時代。ITの技術と文化をいかに上手く製造現場へ取り込んでいくかが成長のカギを握る。

変化で生まれた新たな課題

第4次産業革命への変化は、同時に新たな課題を生み出している。
生産の知能化、自動化が進む一方で、現在の生産を支えている人たちの間からは、機械やロボット、AIに仕事が奪われるといった懸念も一部で噴出した。日本では長年、現場の作業者が生産を支えてきて、今も支えている。彼らの中には熟練者も多く、その技術を継承して自動化しながら、一方でそれに合わせた新たな業務形態と働き方を創出していく必要がある。
またサステナビリティ、脱炭素トレンドの急加速もこの10年の大きな変化であり、取り組まなければならない課題となっている。これまでの省エネの主役は工場や物流倉庫、オフィス棟などの建屋設備、ファシリティだったが、ここ数年は生産設備やプロセスに移ってきている。「高度で効率的な生産」にフォーカスしていた10年前から「高度で効率的な生産を少ないエネルギー消費で実現する」とハードルは高くなっている。
また工場がサイバー攻撃の対象となり、セキュリティも課題となってきている。クローズド空間だった工場がネットワーク化によってインターネットとつながるようになり、高度な知的生産が可能になる一方、異物の侵入口も増加している。

御用聞きになるな。真のコンサル営業へ

コロナ禍の3年間を経て、日本の製造業は「変化も是」として受け入れ、変わらないことが自社の競争力を削り、やらなければならないという空気が醸成されつつある。FA企業が2024年にやるべきことは、そうした燻っていた火種に空気を吹き込み、着火させる年になる。一方で、エンドユーザーは課題やリスクに対する不安感や警戒感を少なからず持っており、それを事前にきちんと列挙することも大切だ。そのためにも、FA企業各社が進めるソリューション営業も、お客様の課題を聞いて目の前の課題を解決することに加え、個々のお客様のスマートファクトリー、生産の高度化を構想・デザインし、もっと先の未来と道筋を示して第4次産業革命、インダストリー4.0実現の伴走者となることが需要。単なる御用聞き、便利屋にならないように注意しなければならない。

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