令和の販売員心得 黒川想介 (102)

オートメーションという言葉がアメリカからやって来たのは一九五二年頃だと言われている。その三年後にはソニーがトランジスターの製作に成功している。そしてその翌年の一九五六年には日本産業界でオートメーション時代が始まっている。大戦後11年目の事である。以降それぞれの分野でオートメーションは発展してきた。機器部品販売店が扱う電子機構部品、制御機器はあらゆるオートメーション分野で使用されている。

オートメーションという言葉は当初会話言葉として普通に使っていたのは製造工場であった。時代が進むにつれていつしかオートメーションという言葉は使われなくなり、それに代わり自動化や自動制御という言葉が一般的になっている。現在の製造分野のオートメーションは他の分野と区別してFAと言う。FAは製造工場の自動化設備全般の意として捉えられているから機器部品の営業は製造工場から出てくる需要をFA売上とかFA商品と言ってひとくくりにして語る。近年では製造工場に情報技術が入り込んできたため従来のFA分野をOTと表現して情報技術のITとは区別して使うこともある。

しかし販売員の間ではIT・OTの区別なくFAというなじみ易い言葉でひとくくりにしている。このような情報技術が入ってきているマーケットをFAというなじみ易い言葉で捉えるのは良い事である。FAをOTと表現すると販売員の頭の中でITを別の分野に区別してしまって、製造工場から出るIT需要を見逃してしまうことになる。

かつてオートメパーツとしてリレーを売っていた販売員はPLCというパーツではない商品が世に出た時に制御パーツをシステム化したPLCも同じ分野の需要だと思ったから、面倒なPLCを懸命に学ぼうと努力した。手離れよくオートメパーツとして売っていた商品とは別分野の商品として捉えたらあまり気乗りはしなかったろう。現にそれで現在のFA機器部品から離れた販売店も少なからずあった。

この様な事情と同様にIT関連もFAとひとくくりにして同じ分野の需要だとして捉えればIT関連の勉強をして取り込もうと努力するがIIT関連は違うマーケットとして頭の中で線引きすればIT関連需要を取り逃がす。だからIT・OTの区別なくFAとひとくくりにした言葉を使うことは販売員にとって大切なのだ。しかし忘れてはいけない事がある、FAマーケットの広がりは営業から見れば商材は広がってうれしいが製造工場では組織の分化や専門化が起る。だから組織や人の役割を従来のように単純には捉えられない。

つまり販売員がこれまで案件の相談を受けてきた製造技術の人達に広がった商材を一度や二度アピールしても伝わらないのだ。製造工場向けマーケットをFAとして広く捉える事は大事だがあくまで顧客側の事情を具体的に把握すべきである。もともと製造工場の持つ需要は多岐に渡っている。FA営業はその需要をFA商品の目を通して見る。その目で長い間機械設備の自動化売上を追いかけてきた。それで売上の上る制御回路を構成している機器や部品を追いかける癖がついた。その癖でどの機械設備のどこにFA商品が使われているかは熱心に見ようとするが制御回路の外側にあるアクチュエーター関連機器や部品には関心を示さない。

つまりFA系の販売員はFA商品を積極的に販売していると思っているようだが実はその中の一部である制御回路上の商品を売っている事に気づいてない。顧客側は更に生産力や生産性向上を目指して制御回路の外側にあるIT化を進めようとしている。

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