令和の販売員心得 黒川想介 (96)

昨年販売員が頻繁に耳にする事がある。加工組立の生産現場から入ってくる何々のデータを取りたいという情報である。生産現場には大きく分けると前工程に相当する原料を扱う生産現場と後工程に相当する加工組立の生産現場がある。原料生産では液体状・固定状・気体状の物質を扱うので多くの計器を使用する。計器に表示される各々のデータを監視し、適切な管理をする。だから日常的にデータに囲まれている現場である。この現場に出入りしているのは主として計測器を売る販売員である。彼等はデータとか記録という言葉を日常的に耳にする。

加工組立の現場でも適切な生産管理をするために生産数や不良数のデータを取っている。この現場に出入りしているのは主として制御機器の販売員であるがこれまでにデータという言葉をそれほど頻繁に耳にはしてなかった。それなのに加工組立の現場からデータを取りたい旨の情報が販売員の耳に入ってくるのは管理のデータを取りたいというのではなく加工組立の現場に変化が起きているからである。変化の背景にあるのはFAで構築されている製造現場にIT技術が入ろうとしているためだ。第4次産業革命とかインダストリー4.0とか言われて久しいがその事が見える形で加工組立の現場に入って来ているのがデータ取りとなって現れているのである。

だから販売員は何々のデータが取りたいという案件をもらって、直ぐに関係するセンサや各種の機器を探して、その資料を持って売り込みに走るだけでは令和の販売員としては合格点はもらえない。従来からやっているデータ取りはデータの監視・記録して生産の管理に役立てるためである。これはフィードバック型の生産システムそして機能しているのである。つまり異常なデータが感知されれば正常な作動に戻すためのデータ取りである。しかし加工組立の現場から盛んに聞こえてくるデータを取りたいという声はフィードバック型の生産システムのものではない。

生産資源(人・設備・時間)を最適化する仕組みを作って行こうとするデータ取りである。つまりフィールドフォワード的な考えに立っている。機器部品販売員が日頃会って打合せをする顧客は設備技術者である。だからデータを取りたいと販売員に言ってくるのは設備技術者である。設備技術者が自ら進んでデータを取るためのセンサーや計測機器を機器設備に取り付けようとしているのではない。他の部門からの依頼で動くのが設備技術者であるからどこか他の部門からの依頼が入ってきているはずである。製造部や情報システム部あるいは生産本部など各企業の事情によって各方面からの依頼で現場に変化が起きようとしている。したがって販売員は平成以来やってきた営業からの切り替えが必要となる。なぜなら平成は大きな変化が起きなかったから平時の営業活動で売上を確保すればよかった。しかし現場に変化が起きようとしている事に気づいたら戦時の営業が必要になる。製造業が大きな変化をしたのは機械を使った生産から自動制御の生産に移った昭和がそうである。当時の販売員は中堅企業を訪問する時には電気担当というよりは機械技術者への訪問が多かった。中小企業では工場長のスタッフや製造部長を訪問した。新しいマーケットが誕生する時にはより上流に位置する部門や技術者を訪問する必要があるのだ。つまり不慣れな部門や技術者を訪問しなければならない。それには平成でやってきた商品を全面に出す営業ではなく、不慣れな部門や技術へ接近できるコミュニケーション力さ体の営業をすることである。

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