令和の販売員心得 黒川想介 (91)

スランプになったり、迷った時には基本や原点に戻れとよく言われる。物事を始める時には基本動作を叩き込まれる。刑事ドラマに出る現場百回や剣道の切り返し、料理人や職人のように道具を使う仕事では道具の手入れ、そして製造業の現場では機械装置、工具の整備や整理整頓であろう。これらの基本動作が土台となって、物事の上位を目指す深い学びが可能になる。知識も同様に中学・高校で習得する知識が無ければ大学で研究はできない。

 このような基本動作や基礎的知識があるから深い学びはできて、上達の道へ進ことができるのだ。営業も例外ではない。基本動作と基礎的知識を身に付けて営業活動を経験していくから営業力は上達していく。営業経験が長くても基本動作と基礎的知識が身に付いてなければ営業がおもしろいと感じる販売員はいない。時には山を掘り当てて一時的に羽振りはよくなっても平凡な販売員で終わることになる。

 販売員の基本動作は前回述べたように出合い頭の印象にかかわることであり、販売員として好ましく見られる諸動作である。実際に新規客開拓を積極的にしていれば身に付く。しかしその機会が減っているため改めて基本動作を習って実践しなければならないのだがそれがうまくいってない。その理由として、(一)商品知識や業務手順に比べて単純に見えるため軽く扱ってしまう。(二)現在の機器部品販売員は基本動作がしっかりと身につく前に担当客へのサービス活動と事務処理に追われるから基本動作は習っただけで終わらせてしまう。それでも機器部品営業を長く続けていれば中堅販売員に育っていくからそれで良しとなる。しかしその良しとしている営業力は同じ顧客や同じようなマーケットの範囲でしか効き目がないのが問題なのだ。つまり諸先輩が切り拓いてきた顧客でありマーケットだから基本動作がややいい加減でも売り込み活動から入れる。そして顧客はそれを半ば受け入れてくれるのである。同じ顧客や同様のマーケットから一歩、外に出て新規の客やマーケットを切り拓くにはやはり基本動作を身に付けて営業活動をしなければならないのは明白だ。

基本動作を何度も実践していく過程で熟練度が上っていくのである。若手販売員なら基本動作の熟練だけで新規客への接近成功の確率はグンと増す。更に新規客や新マーケットへの接近の腕を上げるには基本動作だけでなく基礎的知識が必要になる。機器部品を販売するのであるから電気の基礎的知識がそれに当たる。営業職を希望する人の大半は理系の苦手な人である。高校で理系・文系に分れて授業を受けるようになってからは文系希望の生徒には電気の基礎的知識がまるでなくなっている。中学の理科でも電気の基礎的知識を一応教えているのであるが勉強してこなかった販売員が多い。その販売員は技術者同士で使う言葉や意味を理解できないために簡単な事でも会話は発展しない。若手の販売員がある時に時々購入してもらっているリレーについて「どんな役割で使用されているんですか」と設計技術者に聞いてみた。「なぜ聞くのか。これまで販売員にその様な事を聞かれないから珍しいね」と言ってリレーの出力や入力について教えてくれた。

電気の基礎的知識を理解していないとその程度の単純な質問も不安が先行して聞かない販売員は少なくない。ちなみにその販売員は聞いていてもよくわかってないから聞くのみであった。しかし電気の基礎的知識があれば知らない事が出たら調べようとする。それをくり返して営業職が長くなれば顧客との会話内容も変わってくる。そうなれば新規顧客相手でも臆することなくコミュニケーションを仕掛けていける。

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