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日本の製造業再起動(97)【提言】アジア急速発展企業の衝撃 『日本は製造先進国?』このパラダイムが崩れるとき

今年の日本の製造業を総合的に見ると、円安効果やコロナ終息に伴う影響もあり、国内の生産高は増加傾向にある。しかし、鋼材価格や電気代の高騰、人材不足により日本の中小製造業は、盛り上がりに欠けている。また、中小製造業のDX化による成長エンジンが 本格点火しているとは言い難い。 筆者は、昨年から今年にかけてタイ・インドネシアなどアジア諸国を歴訪し、衝撃的な成長企業の存在を知り驚愕した。日本では想像し難い「アジアの急成長企業」見聞の一旦をご紹介したい。

具体的な見聞ご報告の前に、グローバル製造環境の変化と、日本の中小製造業の課題を再点検してみたい。日本の中小製造業は、戦後創業の企業が多い。創業時点では技術的に欧米より遅れをとっていたが、日本独特の「すり合わせ型ものづくリ」により、欧米に追いつき追い越し、 日本のものづくりは世界を席巻し、Japan as №1と呼ばれた1970年代・80年代の黄金時代を迎えている。70年代に台頭した国産の数値制御機械(NC機)が大きな貢献を果たしており、『最新機械を 導入すれば儲かった』そんな時代でもある。ところが、85年プラザ合意以降の円高影響で、日本の完成品メーカーの国際競争力は低下し、日本は失われた30年に突入し、日本に変わって中国や韓国の黄金時代が始まった。2020年からの世界的パンデミックにより、国際的ものづくり環境は再び大変化した。コロナ禍の最中に勃発したウクライナでの戦争も、国際社会に劇的な影響を与えている。欧州ではエネルギーコストが暴騰し、製造業に致命的な打撃を与える一方で、ドル高が急速に進み、グローバルのパワーバランスに大きな変化が生じている。 順調であった中国も、コロナ施策や米中摩擦の影響により、中国経済は疲弊している。 日本の製造業は、円安による国内製造メリットが生まれているが、なぜか明るい話題は少ない。 アジアの製造業も、金利高やコストプッシュインフレの影響で、バラ色環境とは言い難いが、特筆すべきは、『日本では想像し難い急発展企業』が台頭している。

筆者が最近訪問した企業から、3社の驚異的成長企業を紹介する。 はじめにタイのジンパオ社。従業員1000人を擁する精密板金製造業の会社である。コロナ禍の間に、米国アマゾン社のサーバーラック製造やデルタ社の搬送機器製造を一括受注し、この仕事をこなすために大規模工場に拡張して塗装ラインを増設。加工設備は、中国製の汎用ロボットを百台以上導入し、プレス機に装着した自動化システムを独自設計し、すでに運用している。 工場全体のデジタル化・DX化はほぼ完了しており、作業員一人一人の作業実績が見える化され、給与の評価システムにも連携している。 コロナ禍の間に実行した施策の成果により、売り上げ・利益とも創業以来のレコードを更新し ている。 ジンパオ社の社長であるジョン氏は『コロナ禍は、弱い企業をますます弱くし、強い企業をますます強くした』と語っている。今後の方針は『徹底的な自動化とDX化。どこにも 負けないスピードで徹底投資を続けていく』と語っている。

次にインドネシアでトラックなどのブラケットを製造する大熊製作所。埼玉県に本社を構える日系現地工場である。この会社の経営方針は、現地化。『現地で受注し、現地で作る』をモットーにしているが、経営陣の判断で、大きな加工のできる工場に移転し、他社のできない大型部品を中心に受注を広げ、毎年20%~30%の成長を実現し、売り上げ規模も年商20億円に迫っている。社長のコメントは『日本のやり方を押し付けない事』。現地化されたDX化にも積極的に挑戦し、急成長を果たしている。 最後にインドのヘミエール社。クリーンルームなどを設計製造する企業である。私が以前訪問したのは、19年で今年久しぶりに訪問したが、企業は急拡大。3年前に400人程度の会社がたった3年で、従業員数が2倍に拡大している。 新規顧客もどんどん増えており、成長スピードが止まらない。3次元設計をベースに高度なDX化を推進している。社長のラオ氏は、『インド経済は勢いがついてきた。当社のこれからの3年は、以前の数倍のスピードで成長するだろう』と力強いコメントをしている。 コロナ禍の3年間でグローバル環境は激変している。 アジアの驚異的な発展企業を目の当たりにし、衝撃を覚えると同時に、日本の中小製造業も真のDX戦略を実践し、ものづくり国家の威信を取り戻す必要性を痛感する。日本が先進国でアジアは新興国。このパラダイムの逆転を考えたくないが、そのリスクが確実に存在することを、私達は認識しなければならない。

◆高木俊郎(たかぎ・としお)

株式会社アルファTKG社長。1953年長野市生まれ。2014年3月までアマダ専務取締役。

電気通信大学時代からアジアを中心に海外を訪問して見聞を広め、77年にアマダ入社後も海外販売本部長や欧米の海外子会社の社長を務めながら、グローバルな観点から日本および世界の製造業を見てきた。

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