三菱電機、レーザー加工機新戦略「GX-F Evernext Strategy」毎年進化する加工機へ 機能アップデート型サービスを開始

三菱電機は、二次元ファイバレーザー加工機「GX-Fシリーズ」について、新戦略・ソリューションとして「GX-F Evernext Strategy」を発表した。GX-F Evernext Strategyは、毎年、レーザー加工機の機能・性能を向上させることができるソフトウェア/ハードウェア等の技術アップデートを開発して有償で提供し、ユーザーはそれを取り入れて加工機を進化させ、自社の競争力を維持・向上できるようにするソリューション。従来の装置売り切り・更新時買い替え中心のビジネスモデルに、定期的なアップデート提供を通じた異なる切り口のサービスが加わり、レーザー加工機のあり方も大きく変わることになりそうだ。

40年以上の歴史と実績 キーとなる技術はすべて内製

同社は1979年、日本で初めてCO2二次元レーザー加工機を製品化したメーカーで、そこから1986年に三次元レーザー加工機を製品化、2012年にファイバレーザー加工機を発売、2021年には炭素繊維プラスチック(CFRP)加工用のCO2レーザー加工機を発売するなど、40年以上にわたってレーザー加工機を開発・製造・販売してきた。
レーザー発振器、加工ヘッドの光学系、NC制御装置、PLCやサーボモータ、インバータといった制御機器、さらにはAIまで、レーザー加工機の性能を左右するキーテクノロジーは自社で製造・開発、サービスまで手がけているのが特長。それ故に各コンポーネンツの能力を最大限に引き出しながら、それらを1つのパッケージとして加工機にまとめ上げ、さらに進化させることに優れている。部材のサプライヤー、加工機メーカー、サービス会社であり、さらには現場ではレーザー加工機を使って部材を加工しているユーザーとしての側面も持ち、それぞれの知見を蓄積し、それを昇華させられることが他社と大きな違いを生んできた。
そして今回、次の一手として打ち出すのが「GX-F Evernext Strategy」だ。

従来のレーザー加工機の限界 これからは進化させる時代へ

これまでのレーザー加工機のビジネスは、装置は購入時点の価値がMAXで、年が経つごとに価値は下がっていくが、一方で人が装置に慣れ、使いこなすようになることで生産性・競争力を維持・向上し、ある段階まで来たら装置を更新する・買い替えるという仕組みが主流だ。そのサイクルを10年かそれ以上の期間で繰り返すというのが定番となっている。
しかしながら現在は、製品や技術の進化スピードが速くなり、市場やユーザーの要求も多様化し、高度化するなかで、装置の能力を設備更新時期まで上げることができない、生産性や品質は熟練技術者の腕に依存するといった従来の仕組みでは変化に対応するのが難しくなりつつある。
そこにミスマッチが発生し、それを解消するためにスタートするのがGX-F Evernext Strategyであり、定期的に加工機をアップデートする技術を開発・提供することで、常に加工機を最先端・最新の状態にし、生産性・競争力を維持・向上させられるようにした。

毎年アップデートを提供 2023年度は2つの新技術を提供

GX-F Evernext Strategyでは毎年、ユーザーのニーズを汲み取った新技術を開発し、それをアップデートとしてユーザーに提供する。新たに導入する機種はもちろん、すでに現場で動いているGX-Fにも対応するとしている。
2023年度には第1弾として、新製品の12kWのレーザー発振器搭載のレーザー加工機「GX-F120」にも搭載した2つの新技術、加工安定性と生産性を向上させる「AIアシスト2.0」、厚板切断を可能にする「Mz-Power」の提供を予定している。
AIアシスト2.0は、加工時の音と光をセンシングし、AIで加工の異常度を判定して、その結果をもとに加工ヘッドに対してルールベースの制御を実施するAIアシスト機能を進化させ、センサデータをもとにリアルタイムで加工速度や焦点を調整し、その時に応じた最適な加工ができるというもの。これにより制御を高度化し、加工品質を安定させることができるようになる。
Mz-Powerは、レーザー発信機と加工ヘッド、制御機能を使い、ビーム特性と加工に関わるパラメータを厚板切断に最適化する技術。これまで厚板切断はガス溶断やプラズマ溶断が得意とする領域だったが、Mz-Powerでレーザー加工機でも安定加工ができるようになる。これにより厚板切断ができるようになるほか、1枚の厚板から多く製品が取れるようになり歩留まり向上にも有効。例えば従来のネスティング配置では製品間ギャップは最小25mmだったが、Mz-Powerによって最小12.5mmまで詰めることができるようになり、スクラップ・廃棄率は31%から25%に減少。また加工空間が密閉されたレーザー加工機が厚板加工に使えるようになることで、粉塵の飛散を加工機内に留めることができ、曝露や工場雰囲気の改善にもつなげることができる。

自動化システムの拡張・流用も可能に

またGX-F Evernext Strategyでは、パレットチェンジャーなど自動化システムの拡張・流用の対応も開始する。従来は本体と自動化システムは一体で、システムの拡張や後付け、本体リプレース後の流用、システム更新はできなかったが、今後はそれらがすべて可能になる。自動化設備を段階的に導入・拡張したり、更新時に自動化システムだけ流用するなど、生産状況や設備計画に応じて柔軟に設備拡張ができるようになる。

サステナビリティ、カーボンニュートラルにも大きく貢献

GX-F Evernext Strategyは、同社にとって従来のレーザー加工機のビジネスを大きく変える可能性があり、チャレンジングな取り組みとなる。またユーザーにとっては、購入した後でも加工機を進化させられることにより、これまで以上に応用が効くようになる嬉しいソリューションとなる。加えて、効率的な運転による省エネ・CO2排出量の削減、端材の廃棄量低減ができ、さらにはアップデートによって加工機のライフサイクルも長期化して長く使い続けられるようになり、サステナビリティ・SDGsへの貢献効果も期待できる。
三菱電機産業メカトロニクス事業部 メカトロ事業推進部 川田明宏部長は「現在は先の見通しが分かりにくく、カーボンニュートラルやサステナビリティに対してもまったなしの時代。SDGsを意識した製品サービスづくりは必須となっている。GX-F Evernext Strategyは、止まらない進化を目指す新しいソリューションとして機能のアップグレード、システム拡張が可能になり、お客様の生産性向上と市場競争力の強化に貢献する。また加工機を無駄なく最大限に活用することでサステナビリティにも貢献することができる」としている。

https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/mecha/laser/

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