高原状態の需要を推移する配線接続機器 情報通信、工場、車載、インフラ設備などの幅広い市場

工場の自動化投資や通信インフラの整備、都市再開発など、旺盛な設備投資を背景に、端子台、コネクタなどの配線接続機器の需要が拡大している。この一方で、製品の素材になる金属や樹脂関係の不足が深刻化しており、計画通りの生産ができていない。海外のコロナ感染に伴うロックダウンやウクライナとロシアの戦争の影響などが加わり、価格高騰と原材料不足の傾向に拍車をかけている。これに円安傾向が日毎にすんでいることで、海外からの調達コストは急速に上昇している。

配線接続機器は人手不足やコロナ感染を防ぐ意味もあり、省力・省人、自動化を進める工夫が進んでいる。IoTや5Gなど、情報通信投資を見据えた配線接続ニーズは多様化を見せており、これに対応した製品開発も著しい。

端子台、コネクタに代表される配線接続機器は、機器・装置の配線をつないで電気や信号をなど伝える重要な役割を果たしており、用途も微少電流から高容量電流まで幅広い。

5GやIoTなどの情報通信のインフラ投資や、自動車のEV関連投資、さらには人手不足を背景にした自動化・省人化投資の拡大などで、需要は大きく拡大している。

コロナの感染者数は依然減少の傾向は見えていないものの、企業活動はこの体制に順応して平常に戻りつつある。企業業績も受注残、売り上げとも伸長しているところが多い。ただ、利益は原材料価格の高騰や物流費の増加などから圧縮される方向にある。原材料や部品の調達コストは急速に上昇しており、品不足もあって価格に関係なく調達する傾向が強まっている。

以前は半導体の不足で電子機器や装置が作れないという声が多かったが、現在はこれに加え、金属、樹脂なども計画通りの調達ができない状態になっており、受注残を増やす要因になっている。配線接続機器は基本、半導体の使用していないが、樹脂や金属の調達難はダイレクトに生産計画に影響する。円安も加わり、原材料コストは急上昇しており、大幅な利益圧迫につながっている。

こうした背景から価格改定を行う配線接続機器メーカーも出始めているが、まだ様子見のところも多い。

配線接続器機器では、省配線化や省工数につながる製品への関心が高まっている。

省工数ニーズで高まるスプリング式

配線接続機器のうち、端子台は小型・省スペース化に加え、配線工数の削減とDC(直流)の高耐圧化などを目指した開発が著しい。端子台の配線作業の省力化ニーズは人手不足も加わりますます高まっている。

端子台の配線接続方法は、日本で主流になっているねじ式、欧米で主流になっている圧着端子を使用しないスプリング式(ねじレス式)という大きく2つの方式がある。まだねじ式の採用が多いものの、人手不足から配線接続作業の省力化対策として、スプリング式の採用が増えている。

日本ではねじを使った丸型圧着端子台(丸端)が長年使用され、定着している。特に高圧・大電流用途や振動の多い用途ではねじ式の使用が多い。接続信頼性が高いというのが大きな理由だ。スプリング式はケーブルを挿し込むだけで配線作業が完了し、ネジ締め作業や締める加減も不要など、省力化効果は大きい。まだ配線作業が不慣れな初心者であっても簡単に作業ができることから、熟練作業者でなくても配線技術習得に時間がかからず、懸念されていた振動での配線の緩みや経年での信頼性に対する心配も使用実績を重ねることで払拭され、採用加速への追い風になっている。

スプリング式もメーカーによって接続方法には多少違いがある。配線工具を使用する方法が多かったが、最近は工具不要の方法も増えている。また、配線ケーブルの先にフェルールを装着した方法から、フェルールなしで被覆したケーブルをそのまま端子台に差し込むことができる方法も登場してきている。配線がきちんと接続できているかのインジケータ表示も可能なことから、作業ミスなど接続不良の防止にもつながる。このようにスプリング式の接続方法は日進月歩で改良が進んで、使いやすさが増している。

素材価格の上昇と納期対応が課題

同時に用途も、従来スプリング式は制御用や小電力用を中心に普及が進んでいたが、ここ数年、電磁開閉器や配線ブレーカーに加え、操作用スイッチやスイッチグ電源など、従来はネジ式接続が使用されていた機器でもスプリング式端子台の採用が増えつつある。さらに、大電流用でのスプリング式端子台のラインアップも急速に拡充している。1500Ⅴ/300Aの高圧・高電流の動力・電源用途に対応したり、電線径200㎟という太線でもドライバーを使ってワンタッチで裸の電線接続が可能な端子台も販売されている。 

大電流用途では、丸型圧着端子台(丸端)で配線後の増し締めをするという習慣が定着しているが、スプリング式の接続信頼性への評価の高まりに加え、人手不足も重なり、徐々にこの習慣がなくなりつつある。増し締めが不要になることで、トータルコスト面もスプリング式の優位性が高くなってきており、市場に大きな変化が出始めている。日本では公共建設物や送配電分野ではネジ式が多く使用されているが、法的な規制が徐々に見直され、国土交通省発行公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)の令和4年(22年)度版に、「ねじなし端子」が制御盤に使用する器具の端子として追加された。これによりスプリング端子を国交省公認で公共案件にも使用できることになった。 

最近は欧州を中心に、プリント基板に外部端子を使用しないで直接給電するための大電流対応コネクタの要求が高まっている。大容量の電源、インバータ、サーボアンプなどでプリント基板に直接給電することで、大幅な小型化と電力損失の低減が図れ、省エネ化につながるというものだ。コネクタの採用で電線のハーネス化による組立性やボード交換などのメンテナンス性向上が図れるという効果も見込める。

最近発売されて注目されている端子台として、配線を端子側面から挿入するプッシュイン端子台で、設置高さ方向のスペースに余裕のない場合でも配線が容易に行える。丸端などのネジ式配線接続式と方向が同じのため、ネジ式端子台からの切り替えも進めやすく、側面配線のため、ケーブルダクトまでの配線曲げも不要になるなどの利点がある。

もう一つ注目されている端子台が、配線方式にプッシュイン式を採用して配線工数と端子スペースの削減を図るとともに、取り外し可能な足を取り付けることで、縦横兼用で使用できるコネクタ端子台だ。足を外した場合は縦向きに、足を付けたままの場合は横向けにと、1台で縦向き・横向きの両方に対応可能になる。在庫を削減でき、盤の小型化にも貢献する。

配線接続機器の中で新発想の配線方法として注目されているのがケーブルエントリーシステムだ。コントロールユニットや制御盤の筐体面から取り出す多数のケーブル、ホース、コンジット類を集約し、専用工具不要で簡単に組み立てができるもの。コネクタや圧着端子が付いた状態のケーブルを、分割式フレームと分割形ケーブルグロメットを使用することで、素早く簡単にアッセンブリすることができる。保護等級も最大IP68に対応できる。EMC対策にもつながることで、評価を高めている。

用途も工作機械、鉄道、建機、などに加え、人体に影響を及ぼす食品機械や医薬製造機械などにも広がりつつある。

配線接続機器の需要は産業機器から民生機器、車載、社会インフラまで需要の裾野が非常に広いことから、安定した市場を形成している。自動車のEV化、DC電力の活用なども新たな市場として期待できる。

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